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イタリアンレーシングタイヤ「ピレリ」が自転車用トップレンジモデルの「P ZERO VELO(ゼロヴェロ)」を発表

140年以上の歴史を持つイタリアのタイヤブランド「ピレリ」が、新たに自転車タイヤ「PZERO VELO(Pゼロヴェロ)」を発売する。そのプレゼンテーションおよび試乗会が6月15日(木)、16日(金)にピレリが本社を置くミラノにて行われた。
text:江里口恭平 photo:Pirelli official、江里口恭平

「ピレリ・PZERO」の名を持つ自転車用タイヤ

今回の発表は、クルマ・バイクなどのモータースポーツ好きの人にとっては驚くべきニュースかもしれない。ランボルギーニ、フェラーリ、ベントレーなど数ある市販車プレミアムクラスのクルマブランドたちが、正規タイヤとして採用するのはこのピレリのタイヤだ。また、近年では再びF1の世界をエンターテイメント性の高いものとして盛り上げようと、様々な個性を持ったタイヤを発表し続けている。

そんなピレリが自転車タイヤとして、フラッグシップモデルの証である「PZERO(Pゼロ)」の名を冠したタイヤを発表した。

実はピレリの自転車タイヤは、いわば「復活」である。それは、1872年の創業品目が自転車用タイヤであること。そして2017年で100回目を迎えたジロ・デ・イタリア、その第1回大会優勝者の走りを支えたのは、このピレリのタイヤであったからだ。

モデルは計3種類がラインナップされる。すべての性能を高い次元でまとめ上げたオールラウンダー「Pゼロヴェロ」。それに加えてTTなど1秒でも速く走るために転がり抵抗の減少と軽量化を重視した「Pゼロヴェロ TT」。そしてどんな路面コンディションにも対応するグリップ力と高い耐久性を持つ「Pゼロヴェロ 4S」だ。
モーターレース用タイヤと同様にそれぞれ白・赤・青のラインが引かれている点は、かねてからのファンにグッとくるポイントだ。
 
トレッドにはモーターサイクル用「Pゼロ」に類似した形状を持つ
パッケージはこちらの予定。畳んだタイヤをまとめているゴムはリストバンドになる
Pゼロヴェロでは、これまでのクルマ・バイクで培われた技術がふんだんに採用されている。

1つ目がタイヤコンパウンド「スマートネットシリカ」。高いグリップ力と転がり抵抗の減少という相反する目的を実現するために、ナノレベルで素材の配置を操作して作り上げたコンパウンドだ。

2つ目は、まるでチューブラータイヤのような真円に近い形状から、コーナリングの角度によるタイヤの変形が常に一定になるような構造を採用した。

3つ目に「Pゼロヴェロ」と「同4S」にて採用される特殊なトレッドデザインだ。中央部はスリック状で転がりを重視し、緩やかなコーナー、シリアスなコーナーそれぞれの車体の角度によってトレッド形状を分け、グリップする力をより大きくさせて行く。このトレッド形状は、モーターバイク用「Pゼロ」に類似したのものを受け継いでいる。

上記それぞれの技術は、ピレリ自社のテストラボでいくつもの試作品を生産し、評価を繰り返すことで生まれた。この「Pゼロヴェロ」をテストしているすぐ隣のラインで、次期F1に採用されるテスト用タイヤが並んでいるという光景を目にすることからも、今回のピレリの本気度を見て取れる。

タイヤサイズとしては、「Pゼロヴェロ」と「同4S」が23C・25C・28Cの3種、 「同TT」は23Cのみとなっている。
タイヤタイプはすべてクリンチャー。これは現在プロアマ問わず、レース現場で使用されている中で最もメジャーな規格であるとの判断からだ。なお、開発段階ではテストチューブにシュワルベのものを使用したとのことだ。

開発者は、「今回の『Pゼロヴェロ』の発表は、私たちにとって大きな挑戦です。しかし私たちは全ての"競技"という世界を愛し、そこに挑戦し続けています。今こそ再び自転車用タイヤに我々の技術を惜しみなく注ぎ込むことで、自転車競技を起点としてモータースポーツすべてが今一度より高い段階に進むことを目指します。」と熱意を語った。

日本での取り扱い代理店は未定だが、現在早期の実現に向け調整中とのこと。発売は全世界で8月にスタートする予定だ。
 
TTなどコンマ1秒の速さを追求した「Pゼロヴェロ TT」。赤のラインとなる
ウエットな路面でのグリップ力、航続距離や耐パンク性能を重視した青ラインの「Pゼロヴェロ 4S」
3タイプの性能を示すグラフ。時計回りに、転がり抵抗(の軽さ)、濡れた路面でのグリップ力、航続距離、耐パンク性能、軽量性、快適性を示す

spec.

タイヤ断面図
「Pゼロヴェロ」
長年トップレベルのレースでつちかった専門知識によって開発された「Pゼロヴェロ」はクリンチャータイヤのパフォーマンスに新しいスタンダードを与える。
ピレリの開発したコンパウンド・スマートネットシリカは、乾燥と濡れた路面状態の両方で優れたグリップ力を発揮するほか、比類のない耐パンク性と航続距離を実現する。

カラー:ホワイト
ケーシング:127TPI
耐パンクベルト:アラミドファイバー
コンパウンド:スマートネットシリカ
ケブラービート

サイズ:700×23C
重量:195g

サイズ:700×25C
重量:210g

サイズ:700×28C
重量:230g

 
タイヤ断面図
「PゼロヴェロTT」
スリック形状による低い転がり抵抗と23Cのタイヤサイズから与えられるエアロダイナミクス性能により、息を飲むようなスピードを実現するために設計されたTT用タイヤ。スマートネットシリカより、荒れた路面でもグリップとともに高いコントロール性能を持つ。

カラー:レッド
ケーシング:127TPI
コンパウンド:スマートネットシリカ
ケブラービート

サイズ:700×23C
重量:165g
タイヤ断面図
「Pゼロヴェロ4S」
ウェット路面でのグリップ力と耐パンク性能が強化されたこのクリンチャーは、優れた乗り心地を実現する。 ユニークなトレッドデザインは、Pゼロヴェロよりもスムーズに、路面の水を受け流すために開発されている。

カラー:ブルー
ケーシング:127TPI
耐パンクベルト:アラミドファイバー+スマートネットシリカ
コンパウンド:スマートネットシリカ
ケブラービート

サイズ:700×23C
重量:205g

サイズ:700×25C
重量:220g

サイズ:700×28C
重量:250g

※価格はどれも未定(2017年6月24日現在)

 

編集部江里口によるインプレッション!

ミラノ郊外の田舎道をグループライド
40kmのコース中に軽い上りが2つあるコース。軽いと言えどもつづら折りが上り下りとともに頻繁に現れる
今回Pゼロヴェロ(以下Pゼロ)を試乗したのは2か所。一方はミラノ郊外のテストコース「ヴィッゴーラ・サーキット」。もう一方は、サーキット周辺の一般のサイクリングコースおよび一般道を組み合わせた40kmほどのアップダウンのあるコース。
 
まずは実際のサーキット外の一般道で他のライダー達ととも走り出す。チューブは市販されているブチルチューブ、空気圧は6.5bar(身長175cm体重67kg)。テストバイクはキャノンデール・スーパーシックスエボハイモッドに、キャノンデールオリジナルのカーボンホイール・ホログラムHGを履く。
 
イタリアの一般道は想像以上に細かいギャップが多い。海外の路面に慣れていない筆者は、密集した集団内で足を回していると、突然路面に目に飛び込んでくる陥没などに始めはひやひや。
しかししばらくすると路面の粗さは気にならなくなる。路面は荒れたままなのに、だ。そう思わせる理由の一つは、明らかにPゼロの性能に起因していると感じられる。転がりが非常にスムーズなのだ。
 
Pゼロの乗る前は、少し柔らかいものかと想像していた。ゴム表面に触れた感じは少しもちっとした感じであり、そんなタイヤは少しべたつくような走行感であるものが多いからだ。

しかし走ってみると、多少の路面の粗さをタイヤの柔らかさによっていなしてくれておりそれでいて、べチャっとした感じはない。
 
自分が不得手と自負する下り区間では、直線路で高速域となった際に路面に吸い込まれるように転がる。コーナーにおいては自分の思い描くラインに入ってタイヤが変形しグリップし安定感やコントロール性能の高さを実感した。
 
これまで数々のピレリタイヤをテストしてきた「ヴィッゴーラ・サーキット」
ウエット路面のコーナーを攻める
続いてサーキットコースへと移る。

このヴィッゴーラ・サーキットは、ピレリがこれまで世に送り出してきた数々のタイヤをここでテストしてきた場所。ここでPゼロは数々のテストを行った。コース内には目の粗さの異なる石畳区間の直線コースが用意される。アスファルトコースでウエット路面を再現するときは、コース各所のスプリンクラーが作動し、晴天でもウエット時のグリップ力をテストできる。

こちらでウエット路面とグラベルをそれぞれ走ってみる。

ウエット路面のコーナーで車体を倒しこむと、もちろんドライ路面と比べると滑る感覚はあるが、私の扱う範囲では大きくグリップが損なわれるポイントは見つけられなかった。想定10%超えの急こう配の部分でゼロ発進をテスト。ウエットの急こう配でスリップする感覚も無く、踏み込んだ分をグリップし推力に変換してくれている。
 
ワイルドな道での振動は、タイヤの反発力から車体が不要にはねてしまう感じはない。トレッキングシューズで荒れ地を走っているようなしっかりとしたグリップとともにスピードを減退せず進んでいく印象だ。
  
試乗を終えて総合的に感じたこと。それは、Pゼロは競争第一のレーシングタイヤであるということ以前に、乗って操る「楽しさ」を感じさせるタイヤである、ということだ。

自分の必要な時に必要な分だけ(過剰ではなく)その性能を感じさせてくれる。どんな状況のコーナーでもグリップを感じつつ、加速時にはきっちりその瞬間の路面に反応し、高速巡行では軽快なロードノイズとともに速度を維持し続けている−そういった路面との関係を把握しながら、自分のバイクを思い通りに操る気持ち良さ。そんな「官能的」な部分には、さすがピレリと言うしかあるまい。

言うまでもないが、レースで1秒を争うという瞬間にも、その性能は存分に発揮してくれることは間違いないだろう。
 

問い合わせ先

ピレリ・Pゼロヴェロ(日本語未対応)
https://velo.pirelli.com/en/ww/roadracing