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超軽量レーシングロードの代名詞がディスクブレーキ化 「スコット・アディクト 20 ディスク」アサノ試乗します!その17

スコットが誇る超軽量レーシングロードといえばアディクト。そのディスクブレーキ仕様が2017年モデルで登場したアディクトディスクシリーズだ。超軽量レーシングロードにも押し寄せたディスクブレーキ化の波によって、アディクトはどう変わったのか? 歴代アディクトを乗り継いだライター浅野がインプレする。
 
text:浅野真則 photo:岩崎竜太

満を持してディスクブレーキ仕様が登場

「アディクト20ディスク」シマノ・アルテグラ完成車価格/45万9000円(税抜)
アディクトシリーズは、スコットの軽量レーシングロードという枠を超え、超軽量レーシングロードの代名詞と言えるモデルだ。初代CR1の次世代の超軽量レーシングロードとして初代アディクトがデビューしたのが2009年。フレーム重量わずか790gという圧倒的な軽さを武器にプロツアーでも勝利を量産した。

現在のモデルは2代目にあたり、ダウンチューブなどにカムテール形状を採用して空気抵抗を削減するエアロロード・フォイルと同様のF01エアロテクノロジー、ヘッドまわりの剛性を高めるテーパードヘッドチューブ、BBまわりの剛性アップでパワー伝達性能の向上を図るBB86など、軽量ロードでありながら高剛性化と空力性能の追求も行い、全方位的に性能強化が図られている。

ラインナップは、HMX SLカーボンを採用しフレーム重量710gの超軽量モデル・アディクトSLを筆頭に、HMXカーボンを採用しフレーム重量775gのアディクトRC、HMFカーボンを採用しフレーム重量890gのアディクト10などのノーマルモデルを展開。モデルによってフレーム素材が変わっている。

さらに2017年モデルではさらにディスクブレーキ仕様が追加された。ノーマルモデルをベースにしており、フレーム素材はHMFカーボンフレームとなる。完成車のみの販売で、メインコンポーネントにシマノ・アルテグラと油圧式ディスクブレーキを搭載した今回の試乗車アディクト20ディスクを筆頭に、コンポーネント違いの3車種を展開する。
 
フロントフォークのコラム径は上が1-1/8"、下が1-1/4"とやや細めのテーパードコラム。ハンドリングとブレーキング時の安定感とともに空力性能向上も意識している。ケーブル類はすべて内蔵される
エアロロード・フォイルで培われたF01エアロテクノロジーを採用。ダウンチューブが翼断面の後端を切り取ったカムテール形状になっており、空力性能と剛性、軽さを高い次元で両立する
ディスクブレーキの強大なストッピングパワーを受け止めるため、フレームやフォークを新設計。12mmスルーアクスル搭載による剛性アップよって、補強は最小限にとどめ重量増を抑えている
BB規格はBB86。シェル幅が広く、ダウンチューブやチェーンステーとの接合部も太くワイドになっており、ペダリングの踏力を余すことなく推進力に変換してくれる
トップチューブは幅広で縦方向に薄い。ディスクブレーキ化に伴ってシートステーのブリッジもなくなったことと伸そう条項かで、路面からの突き上げを効果的にいなす

アディクトのようでいて、僕の知るアディクトではなかった

個人的な話で恐縮だが、僕はこれまでのロードバイク遍歴で初代アディクトと2代目アディクトを乗り継いでいる。2代目アディクトに至っては現役のレースバイクだ。

なぜ2回もアディクトを選んだのか? それは圧倒的な軽さ、レースで思い通りのラインをトレースでき、ペダリング入力にリニアに反応する適度なフレーム剛性、適度なスローピングがもたらすやや古風な見た目など、走行性能にもシルエットにも惚れ込んでいるからだ。これまでにレースで何度か優勝や入賞も味わわせてくれた。アディクトは英語で「中毒」という意味だが、僕がアディクト中毒になっているのかもしれない。

そんなわけで、アディクトのディスクブレーキモデル登場の一報を聞いたときは、期待もあったが、正直に言うと不安もあった。アディクトは超軽量ロードバイクの代名詞。一方でディスクブレーキはフレームやホイールを含めたトータル重量で見ると、まだまだ重量面ではデメリットが多い。両者が果たして相容れるのか——と思ったのだ。

結論から言うと、アディクトディスクはアディクトではあったが、僕の思うアディクトとは少し違った。クリートをペダルにはめて走り出すと、アディクトらしいフレームのパリッとした感覚がペダルやハンドルを通じて伝わってくる。ペダリングに対してリニアに反応してくれる。ジオメトリもアディクトと同じだから、ポジションに関する違和感もない。ディスクブレーキ化によって重心が下がり、安定感が増しているものの、ハンドリングそのものはクイックだ。

これをもってアディクトらしい、と言えなくもないのだが、何かが違う気がする。

その違和感の正体は、車重が重いことにあるような気がした。シマノ・アルテグラ+油圧ディスクブレーキ仕様で8.3kgほど。ブレーキ以外はほぼ同じスペックのキャリパーブレーキ仕様のアディクト20と比較すると800gほど重い。だから僕が知っているアディクトより加速が鈍く感じてしまうのだ。

上りにさしかかると、違和感の正体は決定的なものになった。アディクト最大の武器である軽さを生かした切れ味の鋭い登坂性能が、ディスクブレーキによる重量増によってスポイルされていると感じたからだ。

ディスクブレーキロードの中では軽いからアディクトの名に恥じない、という見方もできるのかもしれない。しかし、"アディクト中毒"の僕に言わせれば、アディクトの看板をそんなに安っぽく使ってほしくないというのが正直なところだ。エンデュランスロードのソレイスにディスクブレーキモデルが登場しても驚きはなかったし、むしろ当然だと思うが、それとはわけが違うのだ。

アディクトはキャリパーブレーキでもいいので、“超軽量なレーシングバイク”という生命線は死守してほしいのだ。ディスクブレーキロードにアディクトという名前を付けるなら、ディスクブレーキの重量ハンデをものともせず、キャリパーブレーキモデルと比べても引けを取らないぐらいの超軽量レーシングバイクであってほしいと思う。

アディクトディスクに個人的に感じる違和感は、レーシングロードとロード用ディスクブレーキが未だ完璧なマリアージュを果たしていないところに由来するものだ。だからこの違和感は何もアディクトディスクに限った話ではない。

ロードバイクのディスクブレーキ化にはメリットも多い。ディスクブレーキ化によってキャリパーブレーキと比べて低重心化が進み、スルーアクスル化によってフォークやリアエンド付近の高剛性化も果たしているため、下りでの安定感や操縦安定性は高まる。また、あらゆる天候で安定して制動力を発揮する点や、油圧ディスクならではの軽いレバーの引きも魅力だ。

もちろんアディクトディスクもディスクブレーキの恩恵が受けられる。過酷なアップダウンを繰り返すようなコースでのレースで、雨が降って気温も低いような場合、アディクトディスクのコントロール性の高さは魅力だと思う。

アディクトは圧倒的な軽さと剛性、高次元でバランスの取れた走行性能によって自転車界に激震を与え、多くのサイクリストをアディクト中毒にした。アディクトディスクがレーシングロードとディスクブレーキとの完璧なマリアージュを果たし、「ディスクブレーキ仕様の超軽量レーシングロード」として歴史に残る名車にまで昇華する日が近い将来訪れることを、ひとりのアディクト中毒サイクリストとして期待している。

spec.

●フレーム/カーボン ●フォーク/カーボン ●コンポーネント/シマノ・アルテグラ ●ホイール/シンクロスRP2.0 ●タイヤ/コンチネンタル・グランドスポーツレース 700×c ●ハンドル/シンクロスRR2.0 アナトミック31.8 ●ステム/シンクロスRR2.0 ●サドル/シンクロスRP2.0 ●サイズ/XXS,XS,S,M,L ●試乗車重量/8.5kg(サイズS)

■浅野真則
実業団エリートクラスで走る自転車ライター。ロードレース、エンデューロ、ヒルクライムなど幅広くレースを楽しみ、海外のグランフォンドにも参加経験がある。愛車はスコット・アディクトとキャノンデール・キャード10。ハンドル位置が低めのレーシングバイクが好き。
 

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