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MYN(マイン)パオラ・ベディン氏に聞く 高機能サイクリングウエアの作り方

MYN(マイン)というブランドをご存知だろうか、ピセイの女性ラインとして誕生した。MYNはピセイで培ったクオリティーを女性にもということで立ち上がった。ファッションの最新トレンドをサイクルウエアにもいち早く取り入れることで定評がある。

もちろん、単なるファッショナブルなサイクルウエアというイメージだけを売りにしたブランドではなく、機能性においても他のブランドと真っ向勝負できるアイテムがそろっている。

というのが、MYNを説明するフレーズなのだが、実際どれほどのこだわりを持って”ファッション性”と”機能”を両立しているのか。MYNの社長でデザイナーであるパオラ・ベディン氏に直接聞くべく、来日に合わせて2時間のインタビューを行った。

 
text:中島丈博 photo:佐藤正巳、長谷川拓司

生粋のサイクリストデザイナー


父、兄弟が熱心なサイクリストという自転車一家に生まれたパオラ。7歳から自転車に乗り始め、3年間プロ選手として活躍した経験もあるというサイクリストだ。だが、その後は選手としての道は選ばず、ファッション業界へ。エレガントクローズでセールスとして3年務めていた。その間もサイクリングへの思いは持ち続けていたという。そしてサイクルウエアのメーカーに転職。再び自転車の世界へと帰ってきた。その後、今のMYNにつながる「ピセイ」に転職する。

当時のピセイはレギュラーコレクションはなく、プロ用のカスタムウエアのみに特化したブランドだった。だが、ブランドを成長させるために、コレクションラインの必要性をパオラが提言。2011年頃のことだ。「とてもチャレンジングなことだった」とパオラは当時を振り返る。これによりピセイの知名度は上昇した。
 

MYN=Mind Your Nature

そしてピセイの女性向けブランドとして「MYN」が2013年に誕生。

「Mind Your Nature」の頭文字をとったもので、このフレーズには「自分の素質を大事にして! 自分自身をしっかり持って」というメッセージが込められている。

ピセイがレーサーのための商品をラインナップしているのに対して、MYN誕生当時はウイメンズのみでのスタートとなった。

その理由を「かつてはロードバイクに乗っているのは男性が圧倒的に多かった。モーニングライドに出かければ、女性が1人いるグループに1度出会うか出会わないかくらい。今はサイクリングにでかければ多くの女性ライダーとすれ違うようになりました。そのライダー達を見て、女性にフォーカスしたアイテムを作ろうと思ったの」。と語る。
 
MYNの開発で注力したのはレーサーウエアの機能性と、ウエアとしてファッション性。その二つを両立することだ。「既存のウエアブランドの商品は男性用のサイクルウエアの機能を女性用のパターンにしたものであったり、高機能に注力してデザインがおろそかになっていたり、その逆でデザインとイメージに注力しているブランドばかり。

だが、女性が着たいウエアというのは、機能だけを追い求めただけではダメ。もちろんデザインだけでも、快適なライディングを実現することができませんね。そのデザインも、ピンクや花柄だけのラインナップでは、女性のニーズを満たすことはできません。サイクリストであると同時に女性である事を大切にしたい、楽しみたいという思いを実現できるウエアをデザインしたい」。その思いがMYNを生み出した。
 

機能だけでもない、デザインだけでもない

ネオンオレンジの生地もグレーの生地も、クールな見た目に高機能を隠している
サイクルウエアにとって高機能であることは大切だ。吸汗速乾性能、ウインドストップ、放熱性、高い伸縮性など。だが高機能な素材はデザインの面から見るとハンデが多い。プリント出来なかったり、色が黒しかなかったりするからだ。機能とデザインを両立できる素材を手に入れられるかどうかがキーになる。

それらの生地をMYNは使っているのだが、どうやってそれらの素材を見つけてくるのか。パオラに聞くと、自分の頭を指さして「ここよ」といたずらっぽく笑った。

そして「幸いにしてイタリアには、高い技術力をもつ生地メーカーが多くあります。私は、これまでのキャリアでそれらのメーカーと強い信頼関係を築いているので、理想のウエアを実現するための素材を手に入れられるのです。ここがイタリアの産業の特殊なところで、信頼関係がないメーカーには生地を出さない。ゆえに他社では使えない素材をMYNでは使うことができる」というのだ。

そして「イタリアの生地は、生地メーカーが”エコテックス”という、厳しい品質テストを課しています。摩耗や度重なる洗濯にも耐えることができます。また生地の製作には手間を惜しみません。一見するとあまり違いがわからないかもしれませんが、特殊な編み方をする生地をつかっています。この生地は普通の生地よりも同じ長さを製造するのにより多くの時間を要します。そしてその生地を製造するための機械は、イタリアでも数社しか所有していない。そういう高機能な生地を探してきて使っているんです」。

デザインについては、例えばリフレクターは被視認性、安全のために重要だが、シルバーの素材では色気がない。そこでリフレクター機能はあるけれど、見た目は生地と同じ色の素材を使用している。また、ネオンカラーで高機能な素材いち早くサイクルウエアのデザインに取り入れたのもMYNだ。左写真のウエアがそう。

このアイテムのグレーの部分の生地、一見するとリアルクローズに使われていそうなカジュアルな素材に見えるが、その実は高い伸縮性と吸汗速乾性能を持ち合わせている。ライド時でもベタッとならない快適なウエアだ。

生地と同じように、縫製についてももちろんイタリアで行われている。そして出来上がった製品は、契約しているテストライダー=選手によって実地テストが行われる。彼らが出場するレースの数も日本とは比べ物にならない位多いため、彼らがシーズンを通して着用して得るフィードバック自体が十分テストとして成立するのだ。

その意見を反映して改良したテスト用ウエアをすぐに提供することで、早いスパンで改善を行なうことが可能。これらのプロセスを経ることが「イタリア製」の信頼につながっている。
 
ぐっとカジュアルなウイメンズ。アシンメトリックなアームカバーも好評
アウターのジレとインナーのサイクルシャツのデザインを合わせることで、サイクリングに欠かせないレイヤリングをしても、統一感のあるスタイルを実現
アームカバーはすべり止めのシリコンバンドが肌に密着しない外側に。肌にダメージを与えないための配慮
肩口にはさり気なくネコのシルエット
サイクリングウエアっぽくないプリントのデザインも魅力
この裾のテーピングは実はリフレクター。ウエアのデザインに干渉しない

イメージだけで売りたくない

高価格帯のサイクルウエア市場において、ライバルとの差は何かを聞いてみた。

「先に言ったように、MYNでしか使えない素材が多くあります。最近急速に成長しているサイクルウエアのハイブランドたちは、確かに素敵な商品を持っていますが、彼らはデザインとイメージ戦略に注力し、製造は外注で既存のウエアブランドが行っていることがほとんどです。

でも私はデザインはもちろん、製造にもこだわっています。それは長年サイクルウエア業界で培ってきた人脈がないと実現できないことです。

また、日本製のウエアは日本人の体型を研究し尽くしたパターンが採用されています。ですが、素材はどうでしょうか。高いフィット感を実現するためにはパターンだけでは50点です。素材の特性とあわせることで100点の製品が出来上がります。

イタリアには自転車ウエアのために開発された生地があります。それらはスポーツウエア用という大きなカテゴリー分けではなく、自転車用に特化したものです。自轉車競技の歴史が長いからこそ、そういった素材が開発されています。ゆえに非常に高いポテンシャルのウエアを作ることが可能になるのです。

MYNのビブショーツがそうです。生地にはライクラではない、特殊な生地を使っています。非常に耐久性が高く、テカりのないルックス。使い続けても生地が薄くなりにくいものです。もちろんパッドにもこだわっています。実はあえてシンプルな構造のパッドを採用しています。

その理由は複数の素材を複雑に組み合わせたパッドは、スイートスポットが狭くなってしまうからです。ライダーは体型に差があります。パッドがその差を許容できないと結果的に快適性が損なわれてしまいます。またライド中は細かくポジションを変えますよね。その時も同じことが言えるのです。長年テストした結果これがわかりました」。
 
バックポケットにマチを設けて、物を入れても着心地が損なわれない。マチの素材も被視認性が高いカラーを採用
もちろんビブもラインナップする。パッドはあえて複雑な構造ではないものを使用
生地はライクラではなく、より耐久性の高い素材を使っている

2017年からは男性向けコレクションも登場

「MYNのラインナップは常に進化を続けています。2015年にはヨガウエアを追加しました。これは欧米のサイクルショップでは、単に自転車を売るだけではなく、お店でヨガスクールを開催していることが多いからです。もちろんサイクリングイベントもあります。その2つのニーズを満たすウエアをラインナップに加えたのです。

そして2017年からはメンズコレクションもスタートしました。MYNのウエアを着る女性サイクリストを見た男性からの要望があったからです。レーシーではない、カフェライドにマッチしたデザインでありながら高機能なウエアというニースが高まっているのです。

カフェライドのウエアというと、ちょっとゆったりしたサイズのジャージを想像する人もいるかもしれませんが、MYNのウエアはぴったりのサイズを選んで欲しい。生地のストレッチ性がとても高いので、見た目がぴったりでも着用感は窮屈になりません。

体格のいい人がワンサイズ上を選ぶ事があるかもしれませんが、それもあまりおすすめしないです。なぜなら、袖丈や着丈が長くなってしまい、むしろルーズな印象になってしまうからです。ぜひ一度、自分サイズのウエアを着てみてください。むしろそのほうがスタイリッシュになりますよ」。
 

リンケージサイクリングとMYNライドへ

江ノ島をバックに記念撮影
インタビューを行った週末は、湘南のリンケージサイクリングとMYNのコラボイベントを開催。もちろんパオラ自身も走った。参加者にはMYNのウエアをライド中試着してもらい、その着心地を確かめてもらった。女性参加者は「かわいい!」を連発。色やサイズ感ももちろん、いままでにないプリントのデザインには大いに惹かれているようだった。
 
また、意外にも男性参加者が女性もののデザインに興味をもっていた。アームウォーマーなどはアクセントとして着用したいという声が上がっていたのが印象に残った。
 
バイクのパーツチョイスにこだわる人は多い。オーナーのこだわりが色濃く出たバイクは個性的で魅力的だ。「Mind Your Nature」次はウエアで個性を表現してみてはどうだろうか。
 
参加者と積極的に意見交換するパオラ。イタリア人だが現在はイギリス在住で英語が堪能
ランチスポットのカフェで集合写真。MYNアイテムのクオリティーに満足度高し

問:MYN 
 

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