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二つの熱戦とともにロードレースシーズンが開幕!「宇都宮クリテリウム」・「宇都宮ロードレース」レポート

栃木県宇都宮市を舞台に、3月18日(土)、19日(日)のJBCF主催のレースが二連戦で開催された。
18日(土)は「第4回目JBCF宇都宮クリテリウム」。自転車の街としても名高い栃木県宇都宮市にある清原工業団地内を使用して行われたクリテリウムは、1周3kmのコースで競われ、1万人もの観客が会場に詰めかけた。
また、19日(日)、以前までジャパンカップで使用されていたコースを使って今年初めて開催された「第一回宇都宮ロードレース」では、強豪チームである宇都宮ブリッツェンやマトリックスパワータグをおさえて、地元栃木の那須ブラーゼンの吉岡直哉が大会初、チーム初、自身初のうれしい1勝をあげた。
ロードレースシーズンの幕開けとなったこの二つの熱戦の模様をお伝えする。

 
text&photo:滝沢佳奈子

宇都宮クリテリウムで国内ロードレースのシーズン幕あけ! 仁義なきスプリント対決を制したマトリックスパワータグ吉田が初戦V!

吉田がスプリントを制す
3月18日(土)、暖かい春の日差しが降り注ぐ中で行われた宇都宮クリテリウム。日本のトップレーサーが会するJプロツアーの開幕戦に位置付けられている。今年のJプロツアーのレースは、日本全国で行われる全22戦で個人総合優勝のルビーレッドジャージやチーム総合の座が争われることに。初戦である宇都宮クリテリウムの優勝者は、今年のルビーレッドジャージに最初にソデを通すこととなる。トップカテゴリーPのほか、エリートカテゴリーE1~E3、フェミニン(F)のレースが行われた。
 
Pカテゴリーは午前中に2組に分かれて予選が行われ、それぞれ上位50人が決勝に進んだ。午後12時30分ちょうど、決勝戦は地元栃木のチームが前方に並んでスタートが切られた。1周目から逃げに乗りたいチームが集団前方に位置し、タイミングを図る。しかし、少人数での逃げグループが若干の差を空けたかと思いきやなかなか集団はそれを許さない。
 
マトリックスパワータグが集団前方で位置取りする
各チームが攻撃を仕掛けるが、なかなか逃げが決まらない
5、10、15周回目にはスプリントポイントが設定され、5周回目は愛三工業レーシングチームの原田裕成が、10周回目はキナンサイクリングチームの中島康晴、15周回目は地元宇都宮ブリッツェンの鈴木譲が獲得した。20周回の合計60kmでレースは行われたが、それぞれのチームが逃げを送っては他のチームが潰し、という攻防が続き、逃げが決まらないまま終盤を迎えた。シマノレーシングの横山航太や那須ブラーゼンの新城銀二などが一人で飛び出すなどの場面も見られたが、半周しない内に集団に吸収されてしまう。

ラスト2周、各チームが集団スプリントに向けて隊列を組み始める。ラスト1周も前方での位置取り争いが続く。ラスト1kmの所でマトリックスパワータグの土井雪広が集団先頭に立ち、加速。その後ろにはチームメイトのアイラン・フェルナンデス、今日のレース大本命のスプリンター吉田隼人を引き連れる。ラスト500mまで土井が引き、フェルナンデスにバトンタッチ。最後の直線150mを残すラストコーナーまでフェルナンデスが引き、吉田の猛スプリント。他を寄せ付けず、真っ先にフィニッシュラインを超えた吉田が咆哮を上げた。

自分が一番強いと思ったので、後ろ見ることもなくそのまま行きました(吉田)

ルビーレッドジャージの吉田と、今回4位に入った水谷翔(シマノレーシング)がU23リーダーのピュアホワイトジャージにソデを通す
中間スプリント賞を獲得した原田、鈴木、中島
スプリントで2位に入った雨乞竜己(キナンサイクリングチーム)は「明らかに力負けだったので仕方ないかなと思います。今日1戦目で2位ですがある程度力を見せることができて良かったです。」と話した。続いて3位に入った住吉宏太(愛三工業レーシングチーム)は「チームメイトが最後引っ張ってくれたので、自分があとはもがくだけだった。優勝できれば良かったんですけど、最低限良かったです。明日のロードレースはコースがきついらしいんですけど、優勝目指して頑張ります」と初戦を締めくくった。
 
優勝した吉田は、「監督今日来てないんですけど、しっかり今日は僕一本っていうので外人選手も動いてくれました。僕が乗らない逃げは全部潰すようにしてもらって、みんなに感謝ですね。」と満足げな様子で話した。最後のスプリントについては、「メンバー的に見ても自分が一番強いと思ったので、後ろ見ることもなくそのまま行きました。」と自信のほどをのぞかせた。明日初めて開催される宇都宮ロードレースについても、「チーム全体的にコンディションも悪くないんで、楽しいレースができると思います。」と語った。
 

■宇都宮クリテリウムP1決勝リザルト

1  吉田 隼人 マトリックスパワータグ 1:19:41
2  雨乞 竜己 KINAN Cycling Team 1:19:42
3  住吉 宏太 愛三工業レーシングチーム 1:19:42 
4  水谷 翔 シマノレーシング 1:19:42
5  鈴木 譲 宇都宮ブリッツェン 1:19:42
6  渡邊 翔太郎 愛三工業レーシングチーム 1:19:42
7  大前 翔 東京ヴェントス 1:19:42
8  増田 成幸 宇都宮ブリッツェン 1:19:42
8  小野寺 玲 宇都宮ブリッツェン 1:19:42
10 岡 篤志 宇都宮ブリッツェン 1:19:43
 

フェミニンも圧巻のスプリントでライブガーデンビチステンレの吉川美穂が3連覇!

喜びを語る吉川
午前中に行われたフェミニンのレースでも初戦から激しい闘いが繰り広げられた。最初に飛び出したのは、昨年のフェミニンの総合リーダーの座を獲得した弱虫ペダルサイクリングチームの唐見実世子。単独で逃げるも集団に飲み込まれてしまう。その後、ライブガーデンビチステンレのチーム攻撃が開始される。「最初から攻撃していってもみんな脚あるので。みんなが動いて、おさまってから行くようにオーダーを出していて、レースの展開次第で臨機応変に。伊藤(杏菜)も福本(千佳)も本当によく動いてくれたと思います。本当に助かりました。」と語るのは、今季からスペインのチーム、ビスカヤ・ドゥランゴとも契約を結ぶ吉川美穂(ライブガーデンビチステンレ)。

完璧なチームプレーによりライバルたちの脚をどんどん削っていく。決定的な逃げが決まらないまま、最終周回のラストコーナーを回ってくる。過去2連覇を果たしている吉川は、その時点で5番手ほどに位置していた。「フィニッシュラインまで踏み切ろうと決めていました。今日は絶対勝てるっていう確信がなかったので、とにかく最後まで力を出し切ろうと思って走りました。」と話した吉川は、得意のスプリントで集団のトップに躍り出て、そのまま3連覇を決め、両手を高く上げた。
序盤に単独で逃げる唐見
チームでの勝利、地元での勝利に喜ぶ
昨年の10月からレースのスケジュールがびっしりと詰まっていたと話す吉川。先日バーレーンで行われたアジア選手権の後、2週間ほど空いたという。「そこで一気に気持ちが切れちゃって、持ち直すのがすごい大変でした。」と話す。しかし、「今日は本当に勝てて良かった。ホッとしました。今年、スプリントは自分しかいなかったので、去年より緊張していました。」と笑顔を見せた。日本国内でのスプリントでは敵なしのように思われたがそうではなかったようだ。

「去年まで結構その自信があったんですけど、アジア選手権でポキっと折れちゃったんで。一回気持ち入れ替えて、磨きかけていきたいですね。」今後について、「今年はスペインのチームにも入るので、そっちのチームでもしっかり認めてもらえるように。世界選手権に出られるだけのUCIポイントはおそらく獲得できたので、そこからまた選んでいただけるように今年一年、1ランク、2ランク上げていきたいです。スペインのチームでは、ワールドツアーが初戦なんですけど、結構厳しいレースなので、後半の世界選手権に向けて調子上げていけたら一番いいかなと思っています。1年目なのでリズムつかむまでなんとも言えないですけど。」と語った。
 

■宇都宮クリテリウムF決勝リザルト

1 吉川 美穂 Live GARDEN BICI STELLE 38:13
2 岡本 二菜 日本体育大学 38:13
3 唐見 実世子 弱虫ペダル サイクリングチーム 38:13
4 金子 広美 イナーメ信濃山形-F 38:14
5 樫木 祥子 AVENTURA AIKOH VICTORIA RACI 38:14
6 高橋 瑞恵 イナーメ信濃山形-F 38:14
7 福田 咲絵 フィッツ 38:14
8 新川 明子 ブラウ・ブリッツェン 38:15
9 野口 佳子 FORCE 38:15
10 福本 千佳 Live GARDEN BICI STELLE 38:15

遂に掴んだ悲願の1勝! 那須ブラーゼンの吉岡が第1回宇都宮ロードレースで初優勝!

序盤はアタック合戦が起こるものの決定打にはならない集団
大規模な土砂崩れによってしばらく完全に封鎖されていた、ジャパンカップのコースとしても久しい鶴カントリー倶楽部(通称:鶴カン)に向かう激坂。この激坂を使用した周辺特設コースで第1回目となる宇都宮ロードレースが行われた。トップカテゴリーのP1クラスタは、パレードランの10kmに1周6.4kmの周回コースを11周する総距離80.4kmで争われた。気温16度ほどまで上昇し、春の訪れを感じる気候であった。地元宇都宮ブリッツェンや那須ブラーゼンのファンも含め、多くの観客がこのコースの一番の見所、鶴カンの激坂に詰めかけた。
 
選手たちはパレードランのスタート地点である大谷資料館を出発し、一度メイン会場を経由してからリアルスタートに向かった。序盤は前日のクリテリウム同様アタック合戦が始まるが、どの攻撃も逃げの形成にはつながらない。「力が拮抗していて、アタックが続くんですけど決定打がなかったんです。」と那須ブラーゼンの清水良行監督が話す。逃げに乗せたいチームと逃げを許したくないチームの力が拮抗していたようだ。レース中盤にかけて有力選手を含む逃げができてもメイン集団から数秒から十数秒しか開くことがなく吸収されていた。
少し離れても集団からすぐにブリッジをかけられてしまう
レース中盤、マトリックスの土井が中心に集団をコントロールする
シマノレーシングは、序盤から積極的に逃げを作ろうと動きを見せていた。
野寺秀徳監督は、「まだそこまでチームとして誰か一人を勝たせるための動きをするよりも、チームの成長段階として、今いい形なのでそれぞれが優勝できるように逃げを狙って、誰でも行けるようにっていうのが今日の作戦でした。今日確かにその通りに前半から動いて、いい動きもあったんですけど、やっぱり逃げの展開ができなかった。
有利な展開ができなかったっていうのが一つと、そうならなかったら勝つための駒を進めるほどの力がチームにまだない。成長の実感は掴めているけど、このコースで本当の優勝争いをするのには力が足りなかったかと思います。」と分析する。


前日のクリテリウムでもチーム力を見せ、数的優位にもあるブリッツェンやマトリックスパワータグがほとんどの逃げにチェックに入る、あるいはブリッジをかけに行くなか、有力なメンバーの逃げになりそうな場合を見極めて必ずチェックに入っていたキナンサイクリングチーム。
石田哲也監督は、「初めてのコースだからどういう展開になるかわからないので、クリテリウムを見てもチーム力が拮抗してるのかなと思いました。ブリッツェンかマトリックスがコントロールするのはわかってたんですけど。あとは吉田(隼人)選手も調子がいいので、マトリックス的にも吉田選手で行くんであればそんなに攻撃をしないでしょうし、でもブリッツェンは行きたいだろうし。
その2チームプラスシマノも脚が揃ってるんで、そのアタックに僕らは反応していって、危険なものには椿(大志)、野中(竜馬)のエースクラスを乗せてっていう感じでしたね。」と語った。キナン同様、ほとんどの逃げに対応していたのは数的不利にある那須ブラーゼンもであった。
 
ラスト3周を残し、ブリッツェンが前を固めてサポーターの前を通過する
最終周回に入る前の鶴カンの上りでブリッツェンがペースを上げる
集団にいた那須ブラーゼンの岸崇仁は、「最後2周までで集団に僕と吉岡(直哉)さんだけになって、もともと最後僕が位置取って吉岡さんを上りで勝負させるっていう作戦でした。ラスト2周で僕が先頭集団から遅れちゃったんですけど、僕のいた第2集団が先頭に追いついて、またそこから僕がアタック反応したり自分から攻めたりして吉岡さんに脚を使わせないようにしていました。ラスト1kmくらいで全部集団が一つになってそこからブリッツェンとマトリックスが引き始めて、その後ろに僕と吉岡さんという構図でラスト500mまで行きました。」と話す。

完全な勝ちパターンに持ち込んでいたブリッツェンも、 完全な勝ちパターンに持ち込んでいたブリッツェンも、「最後の仕掛けどころ、瞬間的で感覚的なものだと思うんですけど、そこでうまくかみ合わなかったかなと。今まではベテラン同士があうんの呼吸で経験値で何も言わなくても感覚で走りを見てああしよう、こうしようっていうのが瞬間的にできていて、それが勝利につながってたことがあったと思うんです。今回は最後、新人の岡と増田が残った時に本当に瞬間的な動きで増田が不利な状況に来てしまって。増田も不完全燃焼というか届かなかった。300m地点まで土井が引いていて、土井は上手いんで、後ろに増田、吉田と続いていて、増田先行させたらいいって土井が引くのをやめたんです。」とブリッツェン清水裕輔監督は話す。残り300mで増田がスプリントを開始しても、スプリント力のある吉田をぴったり後ろにつけたままだと最後に刺されかねず、分が悪い。「増田は一瞬躊躇した。その瞬間に吉岡が行って、どうしようもなくて増田が行かざるをえなかったんですけど、その後ろに岡がいるんですよ。」清水裕輔監督は続ける。ブリッツェンの事前のミーティングでは、チームとしては増田を勝たせることを優先させるが状況によってはいける人がいく、という話になっていたという。「その前に本当は岡は、増田を前に入れたりとかしなければいけなかった。でも岡も勝てそうだったから、迷ってしまったと思うんです。」
 

那須ブラーゼン悲願の1勝

勝利を確信し、拳を突き上げる那須ブラーゼン吉岡
ゴール前にはたくさんの観客が何重にも層になって集まり、選手が来るのを今か今かと待ちわびていた。
一番最初に見えるのは赤いジャージ(ブリッツェン)か緑のジャージ(マトリックス)のどちらか⁉︎と話していた実況席から「おっと!黒いジャージです!……那須ブラーゼン!」と伝えられると大勢の観客に大きな衝撃が走った。後ろから迫るルビーレッドジャージの吉田との差を自転車2つ分ほど空けたブラーゼンの吉岡が後ろを振り返るとゴールラインを割る前に勝利を確信し、大きく大きく右拳を突き上げた。

「残り300mちょいで行きました。地元のコースですし、ジャパンカップで何回も走ってるので、コースの特徴というのはもう熟知していて仕掛ける場所とかも前の日に考えて作戦を練って、その通りに行った感じでした。うまくみんながアシストをしてくれて、最後は自分の闘いだと思って集中して勝負できました。チームの初優勝が地元の栃木で、僕が優勝できたっていうのは本当に嬉しくて、チーム全員のおかげで勝てたので本当に感極まるものがありますね。チームメイトが序盤から終盤まで動いてくれて、僕はすごい楽に走れて、最後の勝負ももがくタイミングも予定どおりにうまく決まって優勝できてすごい嬉しいです。」と吉岡は喜びを語った。

駆けつけた清水良行監督は涙しながら吉岡の勝利、那須ブラーゼン悲願の1勝を讃えた。続々とゴールラインに到着するチームメイトたちも、吉岡と抱擁を交わし、チーム全員で掴んだ念願の勝利をかみしめていた。
清水良行監督は、「こうやって若手のチームで邁進して、イチから作ったチームで勝ったというのが本当に嬉しくて、この1勝には大きい意味があるのかなと思います。しかも今日は5人で走ってるので、一人一人が機能して連携がうまくいったということだと思います。吉岡の顔見たら終始落ち着いていて、これはいけるなっていうのは思っていました。最後本当に強かったですね。増田選手であったりあれだけ強い選手がいてエースの闘いの中でちぎっていけるっていうのは彼の中でもすごい大きい自信になったと思います。」とあふれんばかりの喜びを爆発させた。

再来週の3月31日(金)~4月2日(日)には、また栃木県内全域を舞台にしたUCIレース、第1回ツール・ド・とちぎが開催される。Jプロツアーに参戦する多くのチームと海外を拠点に活動するチーム、海外チームも参加する本格的なラインレースだ。シーズン序盤からチームの力や個人の力が見られる今年最初の国内ビッグレースにも是非注目してみてほしい。
チーム悲願の勝利に監督、チームメイトが喜びの涙を流しながら抱擁を交わす
シャンパンファイトでシャンパンを浴びまくった後の笑顔

第1回JBCF宇都宮ロードレース リザルト

1位 吉岡直哉(那須ブラーゼン) 1時間42分49秒
2位 吉田隼人(マトリックスパワータグ) +1秒
3位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +2秒
4位 岡篤志(宇都宮ブリッツェン) +2秒
5位 西村大輝(シマノレーシング) +3秒
6位 野中竜馬(キナンサイクリングチーム) +4秒
7位 早川朋宏(愛三工業レーシングチーム) +7秒
8位 横塚浩平(リオモベルマーレレーシングチーム) +9秒
9位 ホセ・ビセンテ(マトリックスパワータグ) +12秒
10位 谷順成(ヴィクトワール広島) +13秒
 
第2戦終了時点
ルビーレッドジャージ(個人総合) 吉田隼人(マトリックスパワータグ)
ピュアホワイトジャージ(U23個人) 岡篤志(宇都宮ブリッツェン)
 
フェミニンのレースを制したのは、自身の脚質とコースが合っていたと話すイナーメ信濃山形の金子広美