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全日本チャンプ初山選手を巻き込んだ! シクロクロス東京サンドスイッチエンデューロ詳報

シクロクロス東京のサンドスイッチエンデューロに出場したサイスポ.jp&本誌チーム。なぜ全日本ロードチャンピオン、ブリヂストンアンカーの初山 翔選手を引っ張り出すに至ったのか、大会当日にあったできごとやそれぞれが走ってみた感想も交えながら、実際に初山選手のチームメイトとして走った編集部・滝沢の目線でお届けしよう。
text:滝沢佳奈子、photo:岩崎竜太

ロード全日本チャンプがシクロクロスに参戦!?

エース初山翔選手を滝沢はアシストできるのか、サイスポ本誌チーム
サイスポ.jp編集長ナカジと新米・江里口コンビのサイスポ.jpチーム
2016年末、シクロクロス東京のエントリー受付が始まった。シクロクロス東京といえば、他の会場とは比べものにならないほどの観客が集まり、その年のシクロクロスシーズンの集大成といってもいいような大会だ。毎年観戦に行くと、お祭り騒ぎのお客さんたちからたくさんの声援を浴び、エリートカテゴリーのみならず多くの一般参加者も全力で楽しんでいる姿を見て、一度は参加してみたいと感じていた。

「今年もエントリーが始まったね」、「今年はどれくらい集まるんだろう」などと編集部で話していると、新卒で入ったばかりの江里口(サイクルスポーツ.jp担当。おっさん顔)が「僕出たいっす!」と一言。「お、いいねぇ!俺も出ようかな」と同じくサイクルスポーツ.jpのナカジ編集長が声をあげる。「ただカテゴリーレースに一人ずつ出るのも微妙だから、この今年からのやつに出ようぜ」とナカジ編集長が指さしたのは、サンドスイッチエンデューロという新しい種目であった。そのままその場のノリで申し込みを済ませるサイスポ.jpチーム。完全に乗り遅れた。「私も出てみたいです!」と後から言ってみたものの、何に出るか……? どうせならサイスポ内で対決とかしたほうが面白いよな……と考えつつナカジ編集長に相談。「そうだね~、ちょっと考えといて!」丸投げである。

その後1週間程考えてみた。対決するにしても、大学では自転車競技部で高校では陸上部という江里口と、元メッセンジャーのナカジ編集長が相手だ。万年かけっこドベでレースに出たこともない運動音痴の私ではそもそも勝負として成り立たない。さまざまな人を候補として考えてみた。シクロクロスが強い選手……、うーん、普通にシクロクロスのカテゴリーレースを走ってる人だと当たり前に速くて逆につまらないのか……? 知名度があってシクロクロスを主戦場としていない人……ロードレース?……誰だろう、知名度……全日本ロードチャンピオンだったらみんな分かるよな……?初山選手!!!! ロードレースのシーズンイン直前の大事な時期にまぁ無理だろうとは思いつつ、初山選手に連絡をしてみた。「いいっすね!スケジュール確認してみます!」嘘やろ!軽っ! 人選に関しては、ただの思いつきによってこんな流れで決まった。
 
スタート地点でにらみ合う2人
一斉にスタートしたランニング大会。もといサンドスイッチエンデューロ
さっそくナカジ編集長にも報告。「まじで!? 初山選手が出てくれるの!!」といい反応。年始にサイクルスポーツ本誌チームとしてエントリーを済ませた。さて、問題は練習である。そもそもこの時点で初山選手がシクロクロスをどれくらい走れるかも未知であった。私が足を引っ張る役であるということは間違いないが、DNFレベルだと何にも面白くない。1月上旬、私は少しでも走れるように自転車とランの練習を始めた。サイスポ.jpチームも皇居ランなどシクロクロス東京に向けた練習を開始した。しかし全員、コースやルールについてちゃんと理解したのは大会前日のことであった。(※編集部注:みなさんはルールなど熟読してからエントリーしましょう)

新しく作られたサンドスイッチエンデューロのルールは、2人1組の1周交代制で、時間は1時間だ。ピット区間でバイクを置いて、砂浜区間の後半はランニングしなければならない。なお、第1走者は自転車を置いてピットまでランニングでスタートした後に1周する、というから大変だ。いろいろ理由をつけて初山選手に走ってもらおうと考えていたのは秘密である。
 

決戦、お台場海浜公園

ピットに戻ってくる江里口。そのすぐ後ろに初山選手が迫る
ピットでスタートを見守るナカジ編集長と滝沢
イチバンきつい1周目から帰ってきた初山選手。本当にありがとうございます
まだまだ余裕なナカジ編集長
大会当日朝、取材のため江里口と一緒に8時30分に会場に到着。「おっ、今日の主役登場!」とカメラマンの辻啓氏からいじられる。あとからナカジ編集長も合流し、会場をウロウロ。「ほとんどランニング区間じゃないっすか! 良かった、ランの練習だけに絞ってきて」と江里口。なんだかテンションが上がっている様子だ。そうこうしているうちに初山選手が会場に到着。事前の撮影のため、準備をしてもらいながら話を聞くと、シクロクロス車に乗るのはこれが初めてだと言う。なんと……! 全日本チャンピオンジャージを着た選手が自分でペダルを付ける姿は、随分とアウェイなところまで引きずり出してしまったな……と申し訳なく感じる瞬間であった。

サンドスイッチエンデューロは12時50分からで、12時20分から20分間試走ができる。この試走のために、同じくブリヂストンアンカーの沢田時選手もシクロクロス全日本チャンピオンのジャージを着て会場に来ていた。試走開始とともに、多くの選手がコースになだれ込む。全日本ジャージが会場内に2人いることが不思議である。一部の人は全日本チャンピオンのコスプレだと思っていたらしい。先に砂浜区間に入っていった初山選手に追い付くと、砂にホイールが埋まり、こぎ出せずにいる初山選手が後ろを振り返ってニヤッとし、「全然走れないですね(笑)」と笑っていた。(かくいう私はそのときすでに息切れしていたのだが。)

試走時間が終わり、いよいよエンデューロがスタート。試走してみて改めて第1走者を初山選手にお願いする。サイスポ.jpチームの第1走者は体力を持て余す男、江里口。(ナカジ編集長に逆らえないだけ、ともいう。)ナカジ編集長と私はピットでスタートを見守る。スタートしたのは39組だ。自転車の大会でランニングスタートというのは何ともシュールな光景である。ほとんど最後尾からスタートした二人だったが、ピット手前に走ってくるまでの間になんと江里口がトップに!! 初山選手も後ろから3~4番目をスタートしたはずなのに、先頭から5番目ほどに上がってきている。「これ、いけるんじゃ……!?」とナカジ編集長。ピットで自転車を拾い、林間区間に入ると江里口が抜かされてしまった。しかし、2人とも前方はキープ。そのまま1周し、ピットに戻ってくる。「いいぞ!江里口ー!」だったり、「初山さん頑張れ!」だったり言ってみるものの、いよいよ人ごとではなくなってきた。
 
スタートダッシュにかけた江里口、回復できるか
声援を受けてまだ笑顔でこたえられる滝沢
バトンタッチ。.jpチームは上位のまま
「きっちー!!!」と帰ってきた初山選手の計測チップを受け取り、自転車を持ってペース配分など何も考えず砂浜を走り出した。林間区間でうしろから迫り来るナカジ編集長。ものすごいキャンバーになっているヘアピンコーナーでもたもたしているうちにサクッと抜かれてしまい、あっという間に見えなくなった。もう地脚とかそういう問題ですらねぇ、と思いつつとりあえず前に進む。1周目は応援に来てくれた友達の声援にニヤニヤする余裕がまだあった。自転車に乗れる林間区間はまだしも、砂浜区間がまるで乗れず。ピット手前で自転車を受け取ろうと初山選手が待つ。そこからのランニング区間が本当に地獄であった。轍ができている砂浜区間を自転車を押して走る分には、まだ走りやすい。ランニング区間は轍などなく、ただただ足をとられる。ランニングが遅すぎておそらく10人以上には抜かされたと思う。交代する初山選手の姿が一番奥に見えるにも関わらず1歩1歩があまりに遠い、辛い。ゼーゼーしながらたどりつき、計測チップを渡すと颯爽と走っていった。

あとから聞いた話によると、初山選手は1周目でパンクに見舞われ、2周目は全てランニングでこなしていたという。ブリヂストンアンカーのブースに向かって代わりのホイールを要求したが、「ない!」と言われてそのまま走ったそうだ。そして私が走っている間、1分足らずでチューブを交換してもらっていたらしい。何事もなかったように交代したように見えたのだが……さすがプロ……。
 
お疲れなチャンプ。一周ごとに倒れこむほど追い込んでくれたらしい
走る滝沢。遅い!遅いぞ!
走るナカジ編集長。なんだか犬みたいですね
ナカジ編集長の近くにへたりこむと、「お疲れー! 江里口、あいつ速いわ(笑)」と既に前半の砂浜の区間に非常に軽やかに走っている姿が見える。沿道からも「軽やか!」と驚かれていたぐらい軽やかだ。鮮やかなウエブチームのバイク受け渡しを見た後、初山選手が来るのを待とうと思ったらもうすぐ近くまで来ていた。初山選手……、ランも速いぞ。

計測チップを再び受け取り、走り出す。1周目よりも応援してくれる人が増えているような気がするが、顔が上げられない程キツい。というか、顔を上げても死んだような顔しかできないから下を向いている方がマシだ。ただでさえ初山さんが抜いてきた人たちを私の番でどんどん抜かせてるんだから、歩くのは絶対ナシ!と自分ルールを設け、走り続けるも体の様々な箇所が悲鳴を上げる。初山選手にバイクを渡し、ランニング区間。走っている途中で自転車をお借りしたPAX CYCLEの方に「頑張れー!」と応援されるも、「キツイ!」と答えることしかできない。前を向くと、死にそうな私を見かねた初山選手が一番手前で待っていてくれている。全日本チャンピオンジャージが一層輝いて見えたのは言うまでもない。「ありがとうございます……、ほんと、すみません……」としか発することができなかったが。

 
自転車を受け渡してここから地獄の砂浜ランのはじまり
せめて自転車はちゃんと受け取ろうと思うが、すでに語彙力の欠如により何も言えず
いつの間にラップされていたようで、すでに交代をしていた江里口のもとに行くと「おつかれっすー。キツいっすね! でも何か走り方、分かってきました!」と汗だくながら余裕げな表情。何?化け物か何かなの??と思うも疲れすぎて何も言えず。もうこの時点で自分らのチームが何番手を走っているのかまったく分からず、ただエリートカテゴリーで走るような人たちが前方でデッドヒートを繰り広げているということだけが分かった。ちょうどナカジ編集長が計測ラインを通ったタイミングだったのか、サイスポ.jpチームが4位で走っていると告げられる。「まじで! すごいじゃん!!」と江里口に言うと、「ここまできたらやったりますよー!!」と本気モード。表彰台に乗るなんてことになったらどえらいことだ。そうこうしている間にナカジ編集長が戻り、わきわきした江里口が走り出していった。しかし、1位、2位のチームの交代する様子を目の前にし、本気度が遥かに上回っていることを悟った。

初山選手も戻り、私も3周目に入る。「これで最後だぞー!!頑張れ!」と応援され、時計に目をやると残り10分程であった。どう考えてもキツいが、一周して楽しくなってきた。死んだ顔ばっかり誌面に残るのはマズイと考え、カメラを持った人の前では精一杯の引きつった笑顔を向ける。ピット手前までたどりつくと、バイクを受け取る初山選手に「滝沢さん! 男気見せて!」と応援(?)され、「男じゃ……ない……!」と息絶え絶えに突っ込むことしかできなかった。そんなことをしている間に江里口が「っすー!」と言って抜かしていった。はや!
 
サイスポ.jpチームがゴール!
遅れてサイスポ本誌チームもゴール!あ、シクロワイアードを差した!
最後の交代も一番手前で待っていてくれる初山選手。そしてなくなる語彙力。最後の周回でも抜ける人をズンズン抜いて戻ってくる。初山選手がランニングしている間に「3、2、1、終了ーー!!」の声が響く。終わったー!と気が抜けたのもつかの間、最後に交代してゴールラインに向かわなければいけないと気づいた。どこのタイミングが計測終了になるかよくわからないが、ここまで初山選手が抜いてきてくれたのに最後に抜かせるわけにはいかない!と最後の使命感に燃え、林間区間に入るとシクロワイアード編集部のジャージを着た人に抜かれる。いやいや、これはマズイ。フライオーバーを越え、最後の直線でスプリント。ゴール前に気を抜いてくれたシクロワイアード編集部を0.18秒差でさしきることに成功した。

結果はナカジ編集長&江里口のサイスポ.jpチームが堂々の4位。初山選手&私のサイスポ本誌チームが18位。サイスポ対決としては惨敗だったが、思わぬサイスポ.jpチームの好成績に喜ぶ一同。初山選手の「走り」にも会場を沸かせることができた。サイスポとしては満足である。しかし、悔しい! 次こそは接戦を!!とこっそりリベンジを誓うのであった。
 

初山選手コメント

最後までどんどん抜いてくれる初山選手
使用機材はアンカーのシクロバイク「CX6C」。この日のために特別にセッティングした、というわけではないらしい
「思っていた以上にキツかったです。ランニングが!砂浜が!キツかったです。第1走者は滝沢さんにお任せしようかなと思ってたんですけど、まぁ僕ということだったんで足が絡まりながら(笑)。1周目でパンクしてたんですよね、全然気づかなかったんですけど。2周目で代わって、初めて自転車またがったときにパンクしてることに気づいて。ちょっとずつ抜けたのかなんなのか、2周目は1周全部走りました(笑)。

もともと僕はMTBでオフロードやっていたので、そのときの技術は全てもうないんですけど、やっぱり面白いなぁと思いましたね。砂浜とか走れたらもっと面白いだろうなぁと。またやってみたいと思いますよ。でも寒くないところにしましょう(笑)。」
 

jpチームコメント

ナカジ編集長の使用機材はディスクモデルの「CX6D」
滝沢使用機材。PAX PROJECTのALCX-DISC。Di2仕様の超戦闘用シクロクロス車。これに乗ってしまったら他のものに乗れる気がしない
ナカジ編集長「滝沢の原稿では、さも中島が好き勝手にムチャぶりした挙句、大して速くもなさそうに書かれているが(笑)。実際はバイクパートで抜かれたことはなかった。それもそのはず、この1週間前にはロヴァールのプレスキャンプのため、米国カリフォルニア州で土砂降りのなかMTBライド取材をこなしてきているのだ。晴天のトレイルなどわけもない(言い過ぎ)。

砂地獄にはすっかりやられてしまっう……。ことは予測できたので、これも対策を講じていた。先に説明したカリフォルニア取材の宿は、砂浜に面したシェアハウスだったため、暇を見つけてビーチでランニングをしていたのだ。自画自賛ではあるが、我ながら完璧すぎる準備!

だが、付け焼き刃であることにかわりはない。表彰台に上がった日々シクロクロスで闘っている猛者たちには遠く及ばず、悔しい思いをしたと同時に、尊敬の念を抱いた。
レースをしっかりと楽しめたことは間違いないし、初山選手のおかげで会場を盛り上げることができたので、サイクルスポーツとしては目標達成だ。来年も何かしら記憶に残る走りを仕掛けたいと思う。」


 
江里口使用機材。通常のロードモデルに、パナレーサーの「グラベルキングSK」を履いてブロックパターンとしたのでオフロードでも使える一台にチェンジ
タイヤ幅は26Cなので、現行のバイクのほとんどにマッチする。パンク対策に空気圧は3.5barとしたので、砂浜区間はラン一択
江里口「砂浜、キツイ!シクロクロス、めっちゃキツイ!
いくら企画とはいうものの、闘う相手は全日本チャンプをエースに据えたチーム。下手に自転車の練習をしても勝ち目はないので、レース1ヶ月前から自転車に乗らず走り込みの練習ばかりしていた。

せっかく出場するのだから少しは目立っておこう!と思い1周目のラン区間で飛び出したら、かなり走りやすい位置に。しかし林道区間では後続の選手が次々と抜かしていくので、自分のバイクコントロールのへたくそ具合を改めて感じた。

一周目のラン区間後半で黄金級にタレてしまったところ、僕の隣を颯爽と初山選手が抜いて行った。自転車選手はバイクを下りたら遅い(ランなどの自転車で走ること以外の筋肉は鍛えていない)などとよく言われているけど、アレは嘘だ。全日本チャンプクラスは、脚で走っても速い。

ちなみに今回選んだ機材は、編集部にあったロードバイクに、グラベル用のタイヤを履かせてみた。それが結果的には非常に軽量なバイクに仕上がったので、砂浜でバイクに気を取られること無くランに専念することができた。でも自転車メディアの編集部員なのだから、ちゃんと自転車で速く走れるようにならなきゃいけない…」
 
結果はサイスポ.jpチームの圧勝!慰めてくれる初山選手の優しさが沁みます
表彰台まであと1歩届かなかったサイスポ.jpチーム。ここにもリベンジを誓う者が…