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第3世代デュラエースDi2 R9150系詳報

店頭に並びだしたシマノのデュラエースDi2最新モデルであるR9150系。前作の9070系と一体何がどう変わっているのか? 徹底解説する。
text:中島丈博 photo:山内潤也、中島丈博

"電動である意味"が突き詰められている

「デュラエースは常に最高じゃないといけない。デュラエースとそれ以外のグレードでは、部品ひとつとっても追求できるレベルが違う。そしてレースで、トラブルがあってもフィニッシュできるコンポーネントじゃないといけないんです」

かつてデュラエースの発表会で聞いた言葉だ。機械式に続いて発売がスタートしたDi2。操作系であるデュアルコントロールレバー、ケーブル&ジャンクション。変速系のフロントディレーラーとリヤディレーラーにわけてポイントを見ていきたい。デュアルコントロールレバーは、前回のモデルチェンジでは大きく手が入れられていなかった部分だが、今回は各部の形状を大きく変更している。握り比べると、より手にフィットするようなデザインに変更された。ブラケットの断面形状はもとより、ブレーキレバーのシェイプも変わっているし、変速スイッチの設計も変更されてカチッとした操作感を実現している。

フロントディレーラーはケーブルルートを変更し、外観上はケーブルルートが見えないスマートなデザインになった。また内部機構を変更したことで消費電力を抑えている。リヤディレーラーはシャドー化&シングルテンション化と、MTBで培われた技術を採用。バイクが振動しているときでもさらに安定して動作するようになった。またディスクブレーキ化に伴いリヤエンド幅が広がることになるので、張り出し量が少ないことのアドバンテージは大きい。

今回は試せていないが、Di2ならではの機能として大きな期待が持てるのがシンクロシフトだ。リヤの変速操作を行うだけで、フロントを自動で変速し、リヤ11枚×フロント2枚で実現できるギヤ比を最大限有効活用できる機能。ライダーが処理しなければいけない情報を減らし、ストレスを大幅に軽減してくれる電動コンポーネントならではの機能だ。
 

ST-R9150 デュアルコントロールレバー

機械式同様にデュアルコントロールレバーの先端部分は非対称デザインになった。より握り心地を向上させている。ブラケットフードは前作では場所によって素材を使い分けていたが、単一素材に。グリップパターンも変更されている。レバー形状も曲線や太さなどが細かく変更されている。シフトスイッチはサイズがやや大きくなっているが、スイッチの支点位置を変更することでパーツ自体を前作よりもコンパクトにしている。これによって操作したときにスイッチパーツのたわみが減り、操作感が高められている。

価格/6万4307円(左右セット・税抜)
平均重量/ 230g(左右ペア重量)
変速/2×11速


FD-R9150 フロントディレラー

よりコンパクトになったフロントディレーラーは20gの軽量化された。また外観へ与える影響が少なくなったと同時に、太めのタイヤを使ってもフロントディレーラーとタイヤのクリアランスを確保できる。またケーブルルートが変更され、多様化したフロントディレーラーまわりのケーブルルートにスマートに対応する。パッと見ただけでは、ケーブルが出ていないように見えるほど。

Di2に限った話ではないのだが、最新のデュラエースR9100シリーズではクランクに大きな変更が加えられている。インナーチェーンリングの位置がフレーム側に近づき、アウターチェーンリングとの間隔が広くなったのだ。これはフロントインナー×リヤトップ側で使用した際に、チェーンがアウターチェーンリングと接触するリスクを低減するため。またアウターチェーンリングは内側の肉厚が増えており、歯先の剛性を上げることで変速性能を向上している。この変更により旧型の9000系シリーズとはクランク、、チェーンリング、フロントディレーラーそれぞれの互換性がない。

本体内部機構に「トグル機構」を採用した。これはてこの原理を応用したリンク機構の一種で、おなじ入力で動作完了に近づくにつれ出力がアップするので、機械式の場合は動作フィーリングが軽く感じられる。Di2の場合は消費電力を抑えることができる。

新型Di2では安定したチェーンテンションを保つために、使用を制限されるギアの組み合わせが登場した。アウター×リヤがトップ、トップから2段目にいる時は、フロントがインナーに落ちないようになっている。その操作をするとリヤがロー側に2段変速するフロントインナー×リヤトップ側2枚は使用できない。チェーンテンションを確保できないからというのがその理由。上記の設定はEチューブプロジェクトで解除できる「ギア位置制御」というメニューがあるでもフロント 52-36T 50-34Tを使っているときは解除できない。XTR、XTも解除できない。

価格/3万8333円(税抜)
平均重量/ 104g

RD-R9150 リヤディレーラー

シャドー化に加えてモーター位置も変更。側方への張り出しを抑え、転倒時にリヤディレーラーが損傷するリスクを減らしている。プーリーとスプロケット歯先の間隔が最適化されたこととシングルテンション化されたことで、リヤスプロケットのどの歯にチェーンがかかっていても安定した変速を実現する。

また上プーリーの歯丈が深くなったことでローでの変速性能が向上している。下に実際に動作させた動画を掲載する。

旧モデルではリヤディレーラー全体が動作していたが、新型ではモーター部分は動かず、アーム、プーリーケージ部分のみが動作しているのが見て取れる。悪路などバイクが大きく揺さぶられるシーンでも安定した変速性能が期待できる。

価格/6万2041円(税抜)
平均重量/ 204g


ジャンクション、ケーブル類

EW-JC130 分岐タイプジャンクション
EW-JC130 分岐タイプジャンクション
今までのコックピットジャンクションは、ステムまわりにぶら下げるか、特殊な設計でフレームに内蔵する必要があったが、この三股ケーブルと、新たなジャンクションの登場により、フレームへの内蔵が容易になった。
価格/ 5810円~ 5900円(税抜)
ケーブル長/ 250-350-50㎜、450-350-50㎜、550-550-50㎜

EW-WU111 ワイヤレスユニット
以前のモデルよりもかなりコンパクトになったワイヤレスユニット。ケーブルルートの途中に取り付けることができるので、ルックスがよりスマートに。Di2のセッティングアプリ「Eチューブプロジェクト」をワイヤレスで利用するとき、ガーミンなどのワイヤレスユニットとDi2を連携させるときなどに必要。
価格/ 7958円(税抜)
対応通信規格/ Bluetooth、ANT+


EW-RS910 ジャンクションA(内装タイプ)
大きくデザインが変更されたジャンクションA。この形状になったことプラス新たなケーブルが登場したことで、従来では取り付け場所の選択肢になかった、ハンドルバーエンドに挿入することも可能に。またフレームへ内蔵するための設計自由度も上がった。変速調整モードへの移行機能のほかに、マニュアルシフトモードから以下で説明するシンクロシフトモードへの切り替えもこのボタンで行うことができる。
価格/1万595円(税抜)
対応内装方式/フレーム、ハンドルバーエンド
 
EW-WU111 ワイヤレスユニット
EW-RS910 ジャンクションA(内装タイプ)

シンクロシフト、Eチューブプロジェクトアプリで簡単セッティング

Di2の強みは、そのセッティング幅の広さだ。それを実現するのが専用アプリ「Eチューブプロジェクト」。シフトスピード、ボタンの役割割り当て、新たな機能のシンクロシフトのセッティングは、全てこのアプリから行う。前作ではPCと有線でつなぐ必要があったが、モデルチェンジ後はBluetooth接続でスマートフォンやタブレットからワイヤレスでセッティングすることができるようになった。

Di2ならではの機能として大きな期待が持てるのがシンクロシフトだ。リヤの変速操作を行うだけで、フロントを自動で変速し、ギヤ比の変化が小さい組み合わせでリヤ11枚×フロント2枚で実現できるギヤ比を最大限有効活用できる機能だ。いままではライダーが”マニュアル変速”していたロードの変速操作を、コンポーネントがアシストしてくれるいわば”セミオートマチック変速”してくれる機能だ。ライダーが処理しなければいけない情報を減らしてくれる電動コンポーネントならではの機能として期待される。

シンクロシフトのセッティングについては、シフトアップ側、ダウン側でそれぞれどのギヤに入ったときにフロントを変速するのかを個別に選ぶことができる。自分にとって最適なセッティングを煮詰めていく楽しさがある。
 

パワーメーターが姿を現す

新型デュラエースの目玉であるパワーメーター内蔵クランクも製品版が登場。バッテリー、センサー類がほぼクランクに内蔵され、重量も70gの増加に抑えている。パワー、左右バランス、ペダルスムーズ、ケイデンス、トルクエフェクティブネスを計測することができる。ただし、メーターはシマノ純正品リリースの予定はない。ANT+通信対応のサイクルコンピュータとペアリングすることで表示、計測が可能になる。ブルートゥースは非対応だ。パイオニア・ペダリングモニターのようなペダリングパワーのベクトル表示は現状できない。

電源はリチウムイオンバッテリーをクランクシャフトに内蔵。走行中の衝撃、温度変化が少ない部位なので安定した電圧、正確な計測が可能。クランク裏のセンサーは非常に小型で、ダイレクトマウントブレーキとも干渉しない。左クランクのセンサーの電源も、クランクシャフト内のバッテリーなので、電源ケーブルは左クランクからジャックが出ていて、シャフト内のバッテリーに接続。専用のフィックスボルトが必要。バッテリーライフは300時間稼働可能、2.5時間でフル充電できる。ワールドチームFDJが使用した場合で、3カ月に1回充電している。なお、バッテリー交換はできない。

価格/14万3662円(税抜)
歯数構成/50×34T、52×36T、53×39T
クランク長/170mm、172.5mm、175mm

R9150デュラエースDi2を使って気になったアレコレをシマノに聞いた!

R9150を実際に見て、使ってみて生まれた疑問をシマノに聞いた。下のインプレとあわせて読んで欲しい。


Q1 ブラケットのサイズが細身になっているように感じるが、その理由と意図は?
A 外観の印象だけでなく実際に握っても、手が受けるストレス荷重を適切に分散させる形状を追求することで、より握りやすい感覚を実現。より細身に感じられる製品になっています。実際は前作に対してブラケット部分のサイズが細身になっているわけではありません。しかしながらレバーとブラケットの付け根周りのクリアランスを広げたり、ブラケット先端形状の変化により細身になった印象になると思います。
 
 
Q2 シフトスイッチのクリック感とデザインが細かく変更されている。その意図は? また、スイッチを大きくしたり、ストロークを増やすという選択肢をなぜ選ばなかったのか?
A 市場の聞き取りや検証を通して、変速スイッチがキチンと押せたかどうかや、誤操作の可能性はないのかといったライダーの不安を取り除くことが、よりライディングに集中できると考え、デュアルコントロールレバーありかたを考えています。その背景から従来よりもスイッチのクリック感を強く設定しました。スイッチのデザインは質問1に関連します。ライダーがもっとも操作し易いスイッチの形状、大きさの最適化を検討しました。それはブラケット、レバー形状との組み合わせで実現するものです。スイッチの大きさやストロークでの単品比較でなく、“全体最適”として検討したものが今回の製品です。
 
 
Q3 リヤディレーラーがシャドータイプになったが、セーバー機能に何か細かい変更は?
A 既存の製品で採用している信頼ある機能を踏襲しています。基本的な変更はありません。
 
 
Q4 リヤディレーラーをシングルテンション化した理由は?
A 従来フレームの外へ張り出していた部分が少なくなることは、走行中の接触リスクを回避し、ライダーに安心感を与え、より走りに集中できるものだと考えています。同時に市場ではディスクブレーキの展開が進んでいます。多くの自転車が、スルーアクスルへ移行しています。ディスクブレーキのホイール着脱時の軸の軌道は真下へ降ろすようになります。そのときにシングルテンションのリヤディレーラーは後方への動きの自由度が大きい分、従来のダブルテンションより利点があると考えます。さらに外観の美しさ、コンパクト感は多くの部品やケーブルがインテグレートされている最先端の自転車により合うものです。上記のバランスを考慮してシングルテンションを採用しました。
 
 
Q5 リヤディレーラーのモーター位置を大幅に変更している。MTB系ではすでに採用している設計変更だが、開発には苦労した?
A カセットスプロケットのワイドレンジ化にともなう大型化と、ロードバイクのリヤディレーラーとしてのたたずまい(小型である)という背反する部分があります。しかしながらロードバイクの美しさを崩さない最適な配置はどこかということを慎重に検討しました。最終的なモーター位置の変更はシングルテンション化したゆえの結果ですが、そのなかでシングルテンション化とデザインの両立は苦労した部分です。
 
 
Q6 フロントディレーラーのケーブルルートが変更されている。その意図は? また、ケーブルはフロントディレーラー本体からはずせない構造になったのか?
コネクターを見せない、より自転車と一体となっているルックスを実現するためです。ケーブルはプラグカバーに沿ってはまっている状態です。フロントディレーラーからの取り外しは既存のTL-EW02を使用します。
 
 
Q7 外観のブラックフィニッシュ仕上げへのこだわりは?
漆黒や水墨画のように昔から日本の歴史にある黒が持つ様々な表情、それはクランクが光に当たった際に黒色から色が変化して行き、その先が透けて見えるような、これまでデュラエースが積み重ねてきた歴史を、金属特有の光り方を織り交ぜて、単なる黒一色ではなく、クランクからチェーンホイールへ向けてグラデーションさせることでそれを表現しました。
 

使用感「強力無比な変速。ブラケットは大きく印象が変わった」

まず最初に気になったのブラケットの大きな変更だ。シマノからの回答ではサイズ自体は変わっていないと言うことだったが、最初は信じられなかった。旧モデルと触り比べてみてわかったのは、縦横高さのサイズこそ同じだが、例えばレバーのカーブ1つとっても曲がり始め、終わり、アールの形など細かく変更されている。ブラケットもそれは同じで、ゆえに握り心地は似て非なるもの。ハンドルからブレーキレバー根元までの間隔が広がっている。自分の指の太さでは前作では2本半くらいだったが、新作では3本入る。コンポーネントのみを新型に乗せ換えようと思っているユーザーはポジションを出しなおす必要が出てくる可能性がある。また、ブラケットの触り心地がソリッドになり、ダンシング時などブラケット部をよじるようなうごきでもブラケットフードのヨレを感じなくなった。

シフトスイッチは、支点位置が大きく変更されている。これにより、見た目はあまり変わらないが、レバーの長さが短くなりよりソリッドな操作感になった。これは非常に歓迎すべき点で、確実に操作の質感向上を感じる。気になるポイントは、シフトスイッチ同士の段差は減ったのでミスタッチの不安は残る点だ。指切りグローブのときはいいが、冬などフルフィンガーグローブをしているときは、ミスタッチをするというユーザーの声を聞く。その点、ライバルのスラム・eタップは、シフト操作を左右独立したスイッチに完全に振り分けているので分がある。ただ、直近のDi2ファームウエアアップデートでブラケット先端にあるスイッチAに変速操作を振り分ければ、少し解決になる。変速動作の速さは圧倒的にデュラエース。とてもパワフルで安定している。早くて確実な分、変速ショックが大きめなのは気になった。絶対確実な変速を取るか、ちょっとくらい遅くても良いから”しっとり”と変速する方が良いのかは個人の嗜好も関わってくる部分。何を正義とするかは難しい。

変速スイッチのストロークはもっと増やしてもよかったのでは? とも思う。またレッドeタップくらべてしまうが、ある程度スイッチのストロークがあった方が、ちゃんと操作した感覚があるので安心。反面、デュラエースはボタンのストロークが少ないので、「ちょっと押すだけでいいや」と思って、ボタンを押すのをサボると「あれ、押せてない」なんてことになる。レッドeタップはバシッと押さないと変速しないので、ミスシフトは少ない。だが、こうも考えられる。ストロークを増やす=動作の時間が長くなってしまう。そうすると今のストロークがベストとも考えられる。押しっぱなしによる多段変速ならその影響は少ないが、連打する場合はなおさらだ。

一番のアドバンテージはシンクロシフトや変速スピードを含むセッティング幅の広さと、それが専用アプリによってより手軽に行えるようになったこと。ロードでは、カンパニョーロが電動コンポーネントEPSシリーズで先んじて実現した機能だが、これをデュラエースDi2が装備するというのは鬼に金棒といえる。経験値の高いサイクリストのなかには、シンクロシフトの必要性を疑問視する人もいるかも知れないが、変速操作経験が少ないライダーにとってはとても意味のある機能だ。もっとギヤを軽くしたい、重くしたいという直感のままにシフト操作を行うことができるので、一層ライドに集中できるようになる。

そのリヤディレーラーは、動いている様を見ているとシャドー化のメリットを感じる。というのはアーム〜プーリーケージまでが動くけれど、モーターユニットはまったく動かない。稼働するパーツが少ないということは走行中の振動のなかにあって、安定した変速動作が可能になるといえる。Di2は、あらゆる状況から(機械式では無茶だった状況でも)変速できてしまうことを考えると、かなりアドバンテージがあると理解できる。

そして待たれるディスクブレーキバージョンの登場。各パーツの仕様がディスクブレーキロードを見据えた作りになっている事を考えると、その仕様で完成させたバイクでの性能が気になる。
 

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