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日本代表・浅田顕監督インタビュー 「ヨーロッパで実力強化を、アジアでポイント収集を」

ドーハに乗り込んだ日本代表団は、いつもよりも少し、規模が小さかった。なぜなら男子エリートは3人枠を使いきらず、男子アンダー23にいたっては出場枠なし……。2016年世界選手権で日本代表を率いた浅田顕監督に、今回のエリート代表選考の理由と、アンダー23活動の課題について話を聞いた。また2020年に東京五輪を控える中、次世代の育成についても、監督は理念を語る。
※写真は2016年ジャパンカップチームプレゼンテーション時のもの
text:Asaka MIYAMOTO photo:Takehiro NAKAJIMA

男子エリートの出場枠は3人でしたが、2人しか招集しなかった理由はなんでしょうか?

かなり迷いました。ただ、そもそも3人目に該当する選手が、存在しなかったんです。今回はかなり特殊なレースです。女子もジュニアもほぼサーキットレースでしたが、男子エリートだけは、ツアー・オブ・カタールのような「風」との闘いになります。その中で、環境に慣れない日本の選手がやって来ても、はじかれて周回前に終わってしまう……という結果になると判断しました。だから独断で、2人で行くことを決めました。もちろん批判の声はあると思います。前半にボトルを運ぶために、3人目を連れてきてもよかったんですからね。


Q.若手選手に経験を積ませる、という考えはありませんでしたか?
じゃあ、例えば、誰に経験を積ませたらよかったのでしょうか?……今現在、この地で走れそうな実力のある選手は、正直言っていないんです。ならば翌週のジャパンカップで思いっきり力を尽くしてもらい、1点でも多くのUCIポイントを取って欲しいと考えました。若い選手が、この世界選手権とジャパンカップの両レースをこなすのは、ほぼ無理ですから。


Q.今年はアンダー23カテゴリーの出場枠がゼロでした。2013年と2014年も出場枠が獲得できず、過去4年間で3回出場できていない状況ですが?
連盟からもお叱りを受けています。来年は積極的にポイントを取るための活動をしていきます。世界選手権への切符をつかむために、もう少し割り切った考えで、ポイント収集に挑みます。まず重要なのは、アジア選手権でポイントを取ること。また、これまでもアジア選手権は出場していましたが、アジアツアーは回ってきませんでした。実力を伸ばすためには、やはりアジアで走るより、ヨーロッパのアマチュアレースなり、ネイションズカップなりを転戦したほうがはるかに有効ですからね。ただし、欧州遠征は意味あることとはいえ、同時に世界選出場のチャンスを逃すことにもつながってきました。だから来年は、まずはアジア選手権を戦います。そこでポイントが取れなかった場合には、これまで通りにヨーロッパを走りつつ、アジアツアーでポイントを取るための活動も並行して行います。日本の特殊性やランキングシステムの不備などもありますが、そこにしっかり向き合って、さまざまな形でポイント収集の可能性を探っていきます。


Q.別府選手や新城選手に続く選手が育っていない、という指摘は繰り返し行われています。東京五輪までは、あと3回しか世界選手権が残っていません。この空白をどのように埋めていくおつもりでしょうか?
連盟主導によるナショナルのプロコンチネンタルチーム(浅田監督が長年提唱してきたプロジェクト)を作る話は、まったく進展がみられなくなりました。そんな中、今の自分の立場で言えることは、2つあります。1つ目は、男子も女子も含めて、今現在すでにトップチームで走っている選手「個人」を支援していく。たとえばコーチが必要な選手には、そこにかかる費用を連盟として援助していく。個人で高地合宿を行いたい、と考えている選手には、そのための協力を惜しまない。つまり選手ひとりひとりに合わせて、強化活動を見立てていくべきです。2つ目は、これから強くなっていくであろう選手を、支援していくこと。五輪に間に合わなくてもいいんです。ただ、五輪がやって来る、というのはチャンスです。若い選手がよりトップレベルへと近づき、さらに上を目指せるように、後押ししてく。これに関してはアンダー世代だけではなく、エリートに入って1年目、2年目くらいの若い選手も含めて、代表活動を通じてサポートしていきたいですね。
 

浅田監督としては、どんな選手を作り上げてきたいですか?

ジュニアやアンダーに関しては、順位ももちろん大切ですが、むしろ「この先どこまで強くなれるか」「どこまで上に上がっていけるか」という可能性のほうを重視しています。正しい段階を積めばきっといい選手になれる、来年は大化けするかもしれない……、そんな匂いのある選手を作っていきたいですね。こういう匂いのする選手を、さらに上へ引っ張り上げる、そんな活動を行っていきます。簡単なことではないですけれど、続けていくしかないですね。

ただし、今までと同じやり方ではいけません。「新城の時はこれで上手く行ったから、お前もこういうやり方でやれ」というのではもはや通用しないんです。古いやり方ではなく、新しいやりかたを積極的に取り入れていきます。僕自身も、頭を柔らかくして挑まなければなりません。もちろん、古くても大切なことはたくさんあります。守るべきところは守っていきます。ただし、今の選手たちに合わせて、柔軟に新しいことも取り入れていきますよ。