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新城幸也・別府史之選手のコメント 2016年世界選手権エリート男子

展開は予想通りだった。しかし横風による分断の破壊力が、予想以上だった。周回コースに入る前に、別府史之と新城幸也の世界選手権の闘いは「終わった」。別府は残り2周回を残して、第3集団のたくさんの選手たちと共に、強制的に自転車を下ろされた。最後の5周回は「ただみんなでぐるぐる回って、グルペットとしてゴールを目指すだけだった」という新城は、世界選手権としてはひどく特殊だったレースを35位で走り終えた。
 
text:Asaka MIYAMOTO photo:Asaka MIYAMOTO/Graham WATSON

新城幸也「やはり強い者が勝つんです」

「できるだけ別府さんと2人で固まって動きました。周回コースに帰ってくるまでが鍵で、周回に先頭集団で帰ってこられたら2人のうちの脚があった方が(勝利を)狙おう、と考えていました。先頭で帰ってこなければしょうがない、というのは誰もが分かっていることでした。でも、帰ってこられなかった。今日はそこですでに負けたんです。

1回目の右折は、僕は別府さんのほぼ後ろで曲がることができました。そこでは50番手以内だったんですよ。でも、そこでもう割れちゃった。前には20人くらいしか入れなかった。予想以上でした。もっと固まるかな、と思っていたけれど、固まらなかった。プチン、と行きましたね。

(第2集団内には)キッテル、グライペル、ブアニがいましたし、デゲンコルプも前からパンクして降りてきたので、だから追いつくかな、と思っていたんです。あとはオランダもいたけれど、なぜかオランダは引きませんでした。前の集団も待ってはくれかった。僕はひとりだったので、僕がたとえ引っ張って追いついたとしても、スプリントが出来なかったら意味がないし……。

(足りなかったのは)やはり力ですよ。力さえあれば、1人で上がっていけばいいんですから。上りだって一緒です。『はい、ここでアタックかかりますよ~』という場所は、誰もがあらかじめ分かっている。分かっていても、毎回、強い人だけが前へ行く。それが自転車競技です。みんなが分かっている場所でアタックをかけて、そして千切る。これが世界選手権なんです。やはり強い者が勝つんです」
 

別府史之「本当に特別でした」

「72㎞地点の折り返し、そこがポイントでした。もちろん途中で風向きが変わるたびに、色々なチームが警戒して、押し合いへし合い、活発な動きがありました。ポイントの少し手前から熱いバトルが始まって。自分と幸也は結構いいところ、50番手くらいにいました。2人でアイコンタクトして、『よし、ここならまあ、危険な場所は通り越せる』と。

イギリスとベルギーが主導権握って、曲がったところでスピードアップして。悪くない場所に位置取りしていて、行けたな、と思ったんですけど、すでに割れてました。後ろを振り返ったらもう誰もいなくて。僕は第2集団の後方にいたんですけれど、そこから6、7人で千切れて。さらに後ろにも集団がいて。その時点で、もうダメだな、となりました。

結果的にツアー・オブ・カタールと同じでしたね。あそこの折り返しで全てが決まったんです。あそこでできた差のまま、あそこでできた集団のまま、周回コースまで行きましたから。何度も世界選手権に出場してきましたけれど、今年は特殊でした。ロードレース、と言うよりは、斜め隊列のスペシャリストたちの勝負でした。もう少し展開があるかな、第2集団が追いついたりするかな……とも思っていたんですけれど、終わってみれば、そうはいかなかった。本当に特別でした。

足切りで終わったわけですけれど、そのまま走り続けても、いずれにせよ結果は出せませんでした。悔しさはもちろんありますが、仕方ないかな、とも思います。山で遅れた、というのではなく、なんというかすごく特殊な感じでしたから。ギャンブルのようでしたね」