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ワイヤレス? いえ”セミ”ワイヤレスです。 FSAのコンポーネントKフォースWE詳細 ユーロバイクレポート

今年のツール・ド・フランスで実践投入され注目されたFSAのコンポーネント「KフォースWE」。シマノ、カンパニョーロ、スラムの3強時代に割って入る存在になれるのか、ユーロバイク会場でその詳細をチェックした。
 
text&photo:中島丈博
昨年のユーロバイクといえば、スラム・レッドの無線モデル「eタップ」の発表が大きなトピックスだった。そして今年は、FSAから新型コンポーネントが発表された。同社のハンドル、ステムの最上位グレードに付けられる「Kフォース」の名と、「wireless electronic」の頭文字を取って「KフォースWE」と名付けられたロード用電動コンポーネントだ。
変速はレバーとフロントディレーラーの間は無線で変速操作を伝え、前後のディレーラーは電動だ。ゆえに「セミワイヤレスコンポーネント」というわけ。これによりハンドル、ステム、ヘッドチューブ周りのワイヤリングを省き、スマートな構造、メンテナンス性の高さを実現。前後ディレーラーはひとつのバッテリーにケーブルでつながっているので、完全に無線のレッドeタップのようにバッテリーを2個充電する必要がない。既存の電動コンポーネントであるシマノDi2シリーズとスラム・レッドeタップのいいとこ取りをしたのがKフォースWEなのだと、開発担当者は語る。それぞれのパーツ詳細を見ていこう。
 
レバーはカーボン製で長さが2種類から選べる。ブレーキレバーに変速スイッチがよりそう。シフト操作は左右それぞれ2ボタン
レバーはカーボン製で長さが2種類から選べる。ブレーキレバーに変速スイッチがよりそう。シフト操作は左右それぞれ2ボタン
デュアルピボットタイプのブレーキキャリパーもそろう
デュアルピボットタイプのブレーキキャリパーもそろう
やや大ぶりなフロントディレーラー。「SET」ボタンを押すと変速調整モードに移行する
やや大ぶりなフロントディレーラー。「SET」ボタンを押すと変速調整モードに移行する
リヤディレーラーはショートゲージのほか、ロー32T対応のロングケージタイプも発売予定
リヤディレーラーはショートゲージのほか、ロー32T対応のロングケージタイプも発売予定
レバーの操作を受信するのはフロントディレーラーの役割、通信方式はANTを採用しているという。フロントディレーラーは同時にANT+にも対応しており、ガーミンを始めとするサイクルコンピューターと連動させることができる。バッテリーはシートポストに内蔵するタイプのみ。フレームの外側に取り付けできるタイプは用意されていない。前後ディレーラーはバッテリーと有線でつながっている。そのバッテリーライフは4000kmから6000kmと、なかり長寿命。プロがツール・ド・フランスを走っても充電しなくていい。変速レバーはボタン電池で稼働する。

そのブレーキレバーの長さは、ノーマルタイプと6mm短いショートタイプが用意されており、ユーザーの好みによって付け替えることでベストなフィッティングが実現できる。

クランクセットはフルカーボン。165mm、170mm、172.5mm、175mm、177.5mm、180mmが揃うほか、パワー2マックスのパワーメーターを採用したモデルもある。

フロントディレーラーには、「SET」ボタンと電源ボタンがある。変速調整をするときはSETを押して調整モードに移行する。リヤは他社同様の微調整が可能。特筆すべきは、フロントディレーラーの調整範囲の広さだ。アウターチェーンリング、インナーチェーンリングそれぞれに微調整機能が付いている。純正以外のクランクセットを使用する場合に、ベストな変速調整を実現するためには強い味方になるだろう。

リヤディレーラーは、11速対応でトータルキャパシティーは30T 。ロー最大32Tに対応する。スプロケットは11-25、11-28、11-32が揃う。ロー5枚はチタン製だ。
 
シマノの内蔵タイプとほぼ同サイズのバッテリー。内蔵タイプのみでシートポスト内への装着を想定している
シマノの内蔵タイプとほぼ同サイズのバッテリー。内蔵タイプのみでシートポスト内への装着を想定している
すでに登場していたクランクセットがグループセットに組み込まれる。パワー2マックスのパワーメーターを搭載したモデルもある
すでに登場していたクランクセットがグループセットに組み込まれる。パワー2マックスのパワーメーターを搭載したモデルもある
同時に発表されたKフォースのハンドルバー
同時に発表されたKフォースのハンドルバー
ドロップ部はレバーがより握りやすいように、少し外側に広がる独自のシェイプを採用している
ドロップ部はレバーがより握りやすいように、少し外側に広がる独自のシェイプを採用している
バッテリー内蔵に対応したシートポストがFSAから登場する
バッテリー内蔵に対応したシートポストがFSAから登場する

油圧ディスクブレーキモデルも

やや大ぶりになるディスクブレーキ用のレバー
やや大ぶりになるディスクブレーキ用のレバー
ディスクローターの固定は6穴タイプ。140mmと160mmがそろう
ディスクローターの固定は6穴タイプ。140mmと160mmがそろう

完成度、高し

ユーロバイク会場内のデモエリアにはすでに試乗できる状態でリムブレーキモデルとディスクブレーキモデルが用意されていた。実際に変速を操作してみた感じは、思っていた以上に高い完成度であると感じた。各社のいいとこ取りというが、それが絶妙。変速スイッチの支点がブラケット内部ではなくレバーにあり、上下のスイッチがシーソーのように動くことになるので、既存のどのコンポーネントとも違う構造ではあるが、それに違和感があるかと言われればほぼない。スイッチの操作感も軽く、ストロークはシマノに近い浅さだ。前後の変速調整が細かくできるのはいい、特にクランクセットにコンポーネントメーカーの純正品以外が付いているバイクにとっては大きなアドバンテージだ。