トピックス

ツール・ド・ラヴニール 日本代表監督・浅田顕インタビュー

2016年8月、U23ネイションズカップ最終戦のツール・ド・ラヴニールで、日本代表チームは予想以上に厳しい戦いを強いられた。選手時代に同レースを走り、監督としては初参戦となった浅田顕に、しかし失望にふけっている暇はない。この苦い経験を、来年以降の挑戦につなげていかねばならない。大切なのは、日本自転車界全体が、このU23版ツール・ド・フランスへ向かって意欲的に準備調整していくこと。なぜなら、ラヴニールこそが、トッププロや本物のツールへとつながる道だから。
 
text:Asaka MIYAMOTO、photo: jeep.vidon

「若い日本の選手には、ここをツール・ド・フランスだと思ってほしい」

若き選手たちの状態に常に目を配る浅田顕監督。出場した選手には「このハイレベルで実際に肌で感じたことを、周りに伝えてほしい」と願う。photo: jeep.vidon


CS:ツール・ド・ラヴニール初挑戦は、悔しい結果に終わりました。レース前の目標は「総合30位以内」でしたが?

浅田監督:決して不可能な目標ではなかったはずなんです。大それた夢を抱いたわけではなく、どちらかというとノルマに近いものでした。残念ながら選手たちのコンディションが伴いませんでした。疲労が日に日に蓄積していき、思った以上に厳しい状況になってしまったんです。このレースこそがシーズン一番の目標だったので、一番いい状態で来なければならなかった。

たとえば、この大きな目標に向けて、今年は初めて高地合宿も行いました。成果はたしかにあった。ただタイミングや、その後のトレーニングで、うまくない部分がありましたね。また初めてのラヴニールに、日本の選手たちは、高い意識で臨んでくれたはずなんです。ところが、実際に自分の力をぶつけてみたときに、「ああ、こんなにきついんだ」とひるんでしまったのかもしれない。そんな中で、選手たちがどれだけ気持ちを維持できていただろうか、とも感じました。

 
ポイントや山岳の距離が記されたメモを自転車へ貼るのも監督の仕事。今大会は監督1人(最終3日間+1人)、メカニック2人、マッサー1人という体制だった。photo: jeep.vidon


CS:U23版ツール・ド・フランスと呼ばれるレベルの高い大会の中で、日本代表チームの実力をどう位置付けましたか?

浅田監督:今までのネイションズカップ参戦で、日本チームの実力は主力チームに比べて一段階低い、と常に感じてきました。ただ今回ラヴニールを走って、さらにもう一段低いのだ、と悟りました。選手の実力もそうですが、チーム側の準備、コース研究、トレーニング計画など、すべてにおいてまだまだ甘かった。これが正直な感想です。たしかにがっかりしているし、はずかしいです。でもこの結果が、正真正銘、今の日本自転車界の実力です。成績や評価を100%受け入れて、これから何をすべきなのかを真剣に考えたい。そして改めて、来年に挑戦していきたい。とにかく、課題がたくさん残るレースだったと思います。

 
選手たちは路上で着替えし、監督も路上でPC作業。イタリアとオランダはプロ並みの巨大バスで乗り込んできたが、日本はミニバン移動だった。photo: jeep.vidon


CS:具体的な課題がたくさん見つかったということは、逆によい材料でもありますね?

浅田監督:そうです。まずはシーズン通しての取り組みを見直し、この格段にレベルの高い「決勝戦」ラヴニールへ向けてしっかり準備しなければならない。だから来年はシーズン開幕の段階で、この8日間の厳しいステージレースを走り切る能力のある選手を、プレセレクションしておく必要があります。実力のある選手、気持ちの強い選手、目標に向けて厳しく準備していける選手を、ある程度の人数揃えておかなければならない。

もちろん、こちらとしては、トレーニング環境も整えていく必要があります。こうして本番が近づくにつれてメンバーを絞り込んでいく。7月からは合宿やコース下見、さらに選手のコンディショニングをしっかり行ったうえで、再びラヴニールのスタートラインに立ちたいですね。

 
毎日レース後も、翌ステージのコース情報収集に忙しい。「来年は各ステージの重要なポイントは必ず下見をして、入念に準備をしたい」と浅田監督。photo: jeep.vidon


CS:選手たちはもちろん、日本自転車界全体に、ラヴニールとはそれだけの準備をする価値のあるレースなんだ、と理解してもらう必要もありますね?

浅田監督:ラヴニールに向けて一番盛り上がっていたのが、実は自分自身だったんですよ。選手にもこの興奮を伝えようと、今大会の重要性はできる限り説いてきたつもりです。ただ、最も重要なのは、実施に走る選手たちが、高いモチベーションでラヴニールを目指すこと。ほかのレースでは簡単にあきらめてしまうような辛い状況も、このレースだからここまで粘ったんだ……、という意識を持ってもらうこと。若い日本の選手には、ここをツール・ド・フランスだと思ってほしい。

ツールに出たい、と夢を語る選手も多いけれど、まずはアンダーでツール・ド・ラヴニールを目指してほしい。この意識は日本自転車界全体に浸透させていかなければなりませんね。アンダー23版のツール・ド・フランスで活躍する選手こそが、この先のトップの世界でも活躍し、さらにはツールでも活躍するのだ、という明確な流れが世界の自転車界には存在します。日本も同じレールに乗っていくべきなんです。

 
浅田監督も1992年、ラヴニールを走っている。当時は25歳以下を対象としたクラブチーム単位の参加であり、監督はフランス籍チームの所属だった。photo: jeep.vidon


「U23版ツール・ド・フランス」、ツール・ド・ラヴニールに日本代表が挑戦 http://www.cyclesports.jp/articles/detail/67951