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帰ってきた世界最速TTバイクTIME RXR CHRONO

タイムのラインナップに再び”あの”TTバイクが返ってきた。しかも数量限定での生産。かつて世界選手権のTTも制している同社のTTバイク。その詳細と、試乗記をぜひ。
 
text:中島丈博、photo:山内潤也

11年ぶりの復刻版

※インプレッション車は市販モデルと仕様が異なる場合があります
※インプレッション車は市販モデルと仕様が異なる場合があります
タイムのTTバイクをご存じだろうか? そう聞かれると自転車好きとはいえ、モデル名が出てこないという人も多いのではないだろうか。それもそのはず、ロードモデルは毎年アップデートをかけてくる同社のラインナップを見ても、TTバイクは見当たらない。 もちろん作る技術がないなんてことはない。エアロロードというカテゴリーができる以前より、RXR ULTEAMに始まる空力を意識したモデルをラインナップしている同社なのだから。その源となるのが、今回紹介するTTバイク「RXRクロノ」の原型となる「RXR」である。
 
その登場は2005年。当時はその実力、ルックス、価格のどれもが度肝を抜く内容だった。スペイン・マドリードで開催された世界選手権男子エリートTTでマイケル・ロジャースが駆り、見事にアルカンシエルを獲得すると同時に、世界選手権TT3連覇を達成。そのフレームは受注生産で発売され、サイズオーダーに対応するという気合の入れようだった。フレームセット価格も約90万円と、これまた気合が必要な金額であった。 あれから11年。ワールドプレミアとして東京に姿を現したのが「RXRクロノ」だ。一見すると塗装のデザイン以外は、かつてのRXRと大きな違いを見つけることは難しい。だが、その実はしっかりブラッシュアップが行われている。フレームの成り立ちはトップ+ヘッド+ダウン、シートチューブ+シートステー、BB+チェーンステーの3ピースを組み合わせて構成される。当時のサイズオーダーに対応するための構成と同じだ。ヘッド&フォークは、現在のUCIルールに適合させるためにシェイプを変更している。
 
電動コンポーネントにも、もちろん対応
電動コンポーネントにも、もちろん対応
アルミ製の短いシートポストが付属
アルミ製の短いシートポストが付属
フォークの形状はロードバイクのそれに近い外観。ハンドリングは安定している
フォークの形状はロードバイクのそれに近い外観。ハンドリングは安定している

RTM成型を採用したカーボン素材

それ以外のチューブも、構成するカーボン素材の〝編み方〞に見直しが図られている。ここで少しタイムのカーボン製造方法について触れたいと思う。多くのメーカーは内圧成型という芯材や金型にプリプレグを張り、圧力をかけて成型する方法を採用している。そこをタイムは、RTM(レジントランスファーモールディング)という、フレーム形状に合わせて積層したクロスを、芯材にまるで靴下をはかせるようにかぶせて、金型に収め成型する方法をとる。この利点は、フレームの各部位に最適なカーボン繊維構造を、正確に実現できるところにある。また、一続きのカーボン繊維の編み物でフレームが形成されるので、強度、剛性でも有利とされる。
 
昨今のTTバイクと見比べると、専用ブレーキやハンドルなど、猛烈に凝ったギミックがあるわけではなく、オーソドックスなパーツ構成。ブレーキもノーマルが使用可能。実戦での使いやすさを最優先にバイクを設計しているからだ。作りはオーソドックスでもその生産台数は世界限定50台とスペシャルな数字になっている。
BB周辺も凝った造形。JIS規格を採用している
BB周辺も凝った造形。JIS規格を採用している
リヤブレーキのワイヤリングも必要最低限の距離
リヤブレーキのワイヤリングも必要最低限の距離
反応の良さを最優先したチェーンステー長は401.6mmという短さ
反応の良さを最優先したチェーンステー長は401.6mmという短さ

ナカジIMPRESSION!

自分の持っているTTバイクのイメージは、猛烈なフレームの剛性感と、突き進むための直進安定性重視の走行感だ。では、自分のもつタイムらしさはというと、硬すぎず、他社のどのバイクとも似ていない絶妙なしなりによってライダーを前へと連れて行ってくれる印象がある。ではタイムがTTバイクを作ったら、それはどう表現しているのか。

走り出すと、ディスクホイール特有の唸りを上げてバイクが加速していく。少し左右にハンドルを切ってみる。ダンシングでバイクを振っていく。TTバイクと聞いて想像していたのは、まるでフレームが板かのようながっしりした乗り味だったが、意外にもロードバイクに近しい乗り心地だ。それゆえ、操作もしやすい。DHポジションをとっても時速30km台から時速40km後半まで安定して巡航できる。高速コーナーもDHポジションのまま不安なくクリアしていける。けっしてこのポジションで走ることに慣れているとは言えない自分だが、これだけの高い操作性を体感できた。ひたすら直線のコースを走る場合はこのバイクでなくてもいいかもしれないが、テクニカルなコースでは良さが生きてくる。ロードレーサーのようにと言ったら言い過ぎかもしれないが、ジオメトリがTTバイク、走りやすさはロードバイクといえる。

・試乗車SPEC
タイム・RXRクロノ
フレームセット価格/85万円(税抜)
フレーム●カーボン
フォーク●カーボン
コンポーネント●カンパニョーロ・スーパーレコードEPS
ホイール●ライトウエイト・オートバーン
タイヤ●ハッチンソン・フュージョン5ギャラクティック 700×25C
ハンドルバー●デダ・エスプレッソカーボンTTハンドルバー
ステム●タイム・モノリンク アルティウム ステム
サドル●サンマルコ・アスピデカーボンFX トライアスロン
カラー●レーシングファクトリー
サイズ●1、2、3、4
試乗車実測重量●7.66kg(1サイズ、ペダルなし)

問い合わせ先

ポディウム
0742・64・3555
http://www.podium.co.jp/time