トピックス

JAL自転車クラブ試走会in青森レポート 後編

日本航空(以下JAL)は今年4月から青森県や津軽半島フェリーなどと協力し、サイクリスト向けに「JALダイナミックパッケージ」を売り出した。それに伴い6月9日、10日の2日間、JAL自転車クラブが青森県内を試走し、サイクリスト目線から、青森のサイクリング事情を体感し、その課題などを探った。編集部・西村がその試走に完全密着。

今回は後編のレポートをお届けする。(前編はこちら


 
text●西村裕貴 photo●吉田悠太

獲得標高差1300m。青森の魅力を詰め込んだルート

試走会2日目は、青森市内を出発し八甲田山麓を経由し三沢市内へと抜けるルートで、「青森横断!チャレンジ八甲田山・おいらせ渓流トライアルコース」と題した走りごたえのあるコースを走った。獲得標高差は1300m。距離は100km。この日の青森は最高気温が25度以上の夏日だったが、青森は風自体が涼しく、不快に感じなかった。夏場でも快適にサイクリングできるのは青森ならではの魅力だ。

一行は午前7時15分にルートイン青森を出発。昨日とはうって変わって天候が回復し、テンションも上がる。スタートしてしばらくは青森市と十和田市を結ぶ国道103号沿いを進む。青森市街を抜けると路側帯も一気に広がり、自転車が走りやすい快走路になる。先頭を牽引してくれるのは十和田市出身で、青森県サイクルツーリズム推進協議会の江利山元気さん。江利山さんはJCA公認サイクリングガイドでもあり、今回のツアーでは、青森県内をガイドしてくれた。

 
今日は午後から快晴の予報。皆さん昨日よりも気合いが入っている
今日は午後から快晴の予報。皆さん昨日よりも気合いが入っている
江利山さんは青森いくべえのジャージで、我々を2日間先導してくれた
江利山さんは青森いくべえのジャージで、我々を2日間先導してくれた


青森市郊外の公衆浴場「かっぱ温泉」を過ぎると八甲田山エリアに向けての上りが始まる。坂自体は急ではないものの、標高1040mの傘松峠までは25kmほどの上りが続く。ここからは隊列を崩しそれぞれのペースで上る。 途中、標高約540mの萱野茶屋でひと休み。左手に八甲田連峰を望む眺望に一行は歓声をあげる。ここは熱々の「三杯茶」で一服。


 
左手に八甲田連峰がそびえる絶景。思わず自転車を降りて記念撮影をする人が続出
左手に八甲田連峰がそびえる絶景。思わず自転車を降りて記念撮影をする人が続出
三杯茶は「1杯飲むと3年長生きし、2杯飲むと6年、3杯飲むと死ぬまで生きる」といわれる
三杯茶は「1杯飲むと3年長生きし、2杯飲むと6年、3杯飲むと死ぬまで生きる」といわれる


萱野高原から、傘松峠までは約10kmの道のり。途中、酸ヶ湯温泉(標高約900m)で2回目の休憩。酸ヶ湯温泉は、国内保養温泉地の第1号に指定された湯治宿で、「ヒバの千人風呂」が名物だ。この時点で午前10時前、ほぼ全員が麓からここまで2時間以内で上っていた。温泉で汗を流したい衝動をグッとこらえながら進む。

酸ヶ湯温泉を過ぎて2kmほど進むと最高地点、傘松峠(標高1040m)に到達。ここは毎冬閉鎖されるほど雪深い場所で、ゴールデンウィーク頃まで、道の両側に10m以上の雪の回廊を楽しむことができる。たしかに道沿いにはわずかではあるが積雪が残っていた。傘松峠頂上を過ぎ、1kmほど下ると睡蓮沼に到着。八甲田連峰をバックに臨み、手前に湿原が広がる雄大な景色だ。

 
平均斜度10%超の区間もあり、走りごたえのある峠道が続く
平均斜度10%超の区間もあり、走りごたえのある峠道が続く
国内有数の湯治宿として知られる酸ヶ湯温泉。冬期の積雪は5m以上にもなるという
国内有数の湯治宿として知られる酸ヶ湯温泉。冬期の積雪は5m以上にもなるという


問●酸ヶ湯温泉
住所:青森市荒川南荒川山国有林酸湯沢50番地 
TEL:017・738・6400
http://www.sukayu.jp/Tops/

 
名物の生姜味噌筍おでんとブルーベリーソフトクリーム
名物の生姜味噌筍おでんとブルーベリーソフトクリーム
古い噴火口後に温泉水がたまった「地獄沼」。周囲には硫黄の匂いが立ちこめ、草木の生えていない荒涼とした景色が印象的
古い噴火口後に温泉水がたまった「地獄沼」。周囲には硫黄の匂いが立ちこめ、草木の生えていない荒涼とした景色が印象的
傘松峠に到着。ここから十和田市に入る
傘松峠に到着。ここから十和田市に入る
「睡蓮沼」で集合写真。背後には八甲田連峰がそびえる雄大な景色。湿原にはミズバショウの花が見ごろを迎えていた
「睡蓮沼」で集合写真。背後には八甲田連峰がそびえる雄大な景色。湿原にはミズバショウの花が見ごろを迎えていた

ブナの林を進む森林浴ロード

散々と降り注ぐ太陽光と混ざりあって力強い緑色を描く。こんな光景は全国でも滅多にお目にかかれない。

昼食は蔦温泉沿いの食堂で、十和田市のB級グルメとして有名な「十和田バラ焼き」をいただく。牛バラ肉のジューシーさと玉ねぎの甘さが絶妙で箸が止まりません。蔦温泉は100年以上の歴史をもつ一軒宿。ブナの林の中にある木造の建物は、1918(大正7)年の建築で歴史と風格を感じさせる。

問●蔦温泉 
住所:十和田市奥瀬字蔦野湯1 
TEL:0176・74・2311
http://tsutaonsen.com

 
ブナの林でできた自然のトンネルを進む。日中でも若干暗いため、ライト点灯を推奨
ブナの林でできた自然のトンネルを進む。日中でも若干暗いため、ライト点灯を推奨
十和田市のB級グルメとして親しまれている十和田バラ焼きは、B級グルメの祭典「B-1グランプリ」で2014年にグランプリを獲得
十和田市のB級グルメとして親しまれている十和田バラ焼きは、B級グルメの祭典「B-1グランプリ」で2014年にグランプリを獲得


昼食後は、十和田湖と焼山の間の14kmを流れる青森きっての景勝地、奥入瀬(おいらせ)渓流を進む。秋には紅葉で有名なスポットだが、新緑の時期の奥入瀬も美しい。今回は渓流沿いの代表的なスポット「三乱の流れ」までさかのぼり、十和田市方面へ折り返す。三乱とは3つに分かれた渓流が合流し、白い泡を立てて流れていることに由来する。噴火の土砂によって形作られた渓流の美しさに一同は圧倒されていた。

奥入瀬渓流を後にすると、十和田市までは下り基調の快走路だ。国道102号の両端には水田が広がり、都会から来た人間にとって、心が洗われるような風景が広がる。

十和田市街地を抜けると、ゴールの三沢空港まではあと少し。道の両側に、市役所や裁判所、合同庁舎など40の官庁が並ぶ「官庁街通り」を進む。歩道には1.1kmにわたって156本の桜、165本の松が植えられている。ここは、日本の道100選にも選ばれている。

 
三乱の流れを進む。川の流れる音を聞きながらのサイクリングに心が癒される
三乱の流れを進む。川の流れる音を聞きながらのサイクリングに心が癒される
道の駅奥入瀬で製造されている「奥入瀬のむヨーグルト」。ほどよい酸味と甘みでごくごく飲めてしまう
道の駅奥入瀬で製造されている「奥入瀬のむヨーグルト」。ほどよい酸味と甘みでごくごく飲めてしまう


問●十和田湖ふるさと活性化公社
住所:青森県十和田市奥瀬字堰道39-1 
TEL:0176・72・3204
http://www.oirase.or.jp

 
地元の人にとっては何気ない田園風景でも、都会から来た人間にとっては貴重な風景だ
地元の人にとっては何気ない田園風景でも、都会から来た人間にとっては貴重な風景だ
道の駅100選の「官庁街通り」を進む。直線で見通しの良い道が続く
道の駅100選の「官庁街通り」を進む。直線で見通しの良い道が続く


十和田市を過ぎ六戸町へ入ると、道ばたにはにんにく畑が目立つようになる。 青森県産にんにくのシェアは国内生産量の約80%を占め、ここ六戸町は”大玉にんにく”日本一の街を標榜するほど、にんにくで有名な街なのだ。六戸町を過ぎると三沢市へと入る。

三沢市は米軍基地のある街であり、基地の周辺にはアメリカンテイストの建物が軒を連ねている。米軍基地を横目に進むと、今回の旅の終着点、三沢空港へ。時刻は午後5時。スタートから、約10時間での到着だ。輪行袋に入れる時間を考慮すると、90分前には空港に到着することをオススメしたい。

サイクリングの最後に立ち寄ったのは、「三沢空港温泉」だ。市内には温泉の出る銭湯が10軒近くあり、この三沢空港温泉は空港から歩いて2分の距離にあり、なんと露天風呂とサウナ付き。 入湯料は大人350円(タオル、石けん等は別途必要)と都内の銭湯よりも安い。

問●三沢空港温泉
住所:三沢市東岡三沢1-83-90
TEL:0176・53・4167 
http://kite-misawa.com/onsen/

 
三沢空港に無事ゴール。2つの空港を結ぶライドを完走した
三沢空港に無事ゴール。2つの空港を結ぶライドを完走した
輪行袋に自転車を梱包する大橋さん。シーコンの輪行袋が一番安心して預けられるそう
輪行袋に自転車を梱包する大橋さん。シーコンの輪行袋が一番安心して預けられるそう
今回、西村とともに走ったバイクは、ジャイアント・ディファイアドバンスド2だ。コンポは105を採用し、ディスク仕様でありながら21万円(税抜)という価格を実現。ツーリングのおともにオススメしたい。
今回、西村とともに走ったバイクは、ジャイアント・ディファイアドバンスド2だ。コンポは105を採用し、ディスク仕様でありながら21万円(税抜)という価格を実現。ツーリングのおともにオススメしたい。
東京への帰路ももちろんJALでひとっ飛び。羽田空港から三沢空港へは1日3往復就航しており、柔軟なスケジュール調整が可能だ
東京への帰路ももちろんJALでひとっ飛び。羽田空港から三沢空港へは1日3往復就航しており、柔軟なスケジュール調整が可能だ

青森市内を走ってみて

最後に、今回青森県を2日間走ってみた印象を大橋さんと松井さんに聞いてみた。

Q:今回走ってみて印象的だったところはどこですか?

A(松井さん):やっぱり(傘松峠から下ってくる)ブナのトンネルが印象的でした。あそこは唯一無二な感じがします。
A(大橋さん):傘松峠を完全に上りきる手前のところもよかったです。一面開けていて。

Q:今回のルートでオススメしたい食べ物は何ですか?

A(松井さん):今回食べた中でオススメしたいのはホタテですね。時期であれば、リンゴも食べてみたかった。
A(大橋さん):今回でいえば、ホタテがメインでしたが、せんべい汁やマグロも美味しかったです。

Q:サイクリストとして改善してほしいと思ったところはありますか?

A(大橋さん):雪国特有で仕方ない面もあるんですが、冬に除雪車が多く走り、路面の砂利を路肩に寄せてしまうので、自転車が走る場所に砂利が目立ちますね。せっかく路肩が広くて走りやすいところが多いのにもったいない。モデルコースとして紹介したところだけでも、砂利を清掃する活動を行ってほしいと感じます。
 

最終便でもその日のうちに帰れます

三沢空港から羽田空港へは19時出発、20時20分着の最終便だ。これなら都内近郊に住んでいれば、1日たっぷりサイクリングしても、その日のうちに帰宅できる。新幹線ならば、青森から東京までは約3時間かかるので、空港までのアクセスが良い人にとっては、断然飛行機のほうが早い。

今回、JAL関係者の特別協力により、自転車が飛行機へ積載される模様を捉えた写真を入手した。

 

自転車の輪行袋は我々の想像以上に丁寧に扱われているのだ。もちろん預ける側も責任をもって梱包をしてほしい。

JALツアーの行程(2日目)のルート