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【全日本選手権】西薗良太が全日本TTチャンピオンジャージを獲得!

伊豆大島で開催中の全日本選手権。6月24日、個人TT最後のカテゴリーとなる男子エリートで、2度目のタイトル獲得を狙う西薗良太(ブリヂストアンカーサイクリングチーム)が他の選手を圧倒するタイムを叩き出し、みごと優勝を果たした。

 
text&photo 滝沢佳奈子

「単純な勝利じゃない。準備が功を奏した」



全日本選手権・個人TT【男子エリート】は、全34選手がウェイブ1とウェブ2の2部構成に振り分けられた。空にはどんよりとした厚い雲がかかり、雨が降る前兆のような少しジメッとした空気の中、13時15分からウェイブ1が30秒おきにスタート。2位・椿大志(ブリヂストアンカーサイクリングチーム)との差をおよそ40秒まで広げ、一人だけ43分台と、宇都宮ブリッツェンの鈴木譲が気迫の走りを見せ、暫定1位に。

ウェイブ1の最終走者がゴールラインに到着後、ウェイブ2の選手11人は14時30分から1分おきにスタート台を後にした。ウェイブ2の選手もなかなか鈴木譲のタイムを上回ることができずにいたが、第7走者である佐野淳哉(マトリックスパワータグ)がついにそのタイムを更新する。

が、前年3位に入ったブリヂストアンカーサイクリングチームの西薗良太が中間計測で他選手を大きく上回る。前年2位の増田成幸(宇都宮ブリッツェン)もいいタイムで追いかけたが、西薗との差は縮まらない。そのままペースを刻んでいった西薗は、見る者を圧倒する速さでゴールラインを切った。

 
西薗の計算し尽くされた走り
西薗の計算し尽くされた走り
西薗は他の選手を圧倒するタイムを叩き出す
西薗は他の選手を圧倒するタイムを叩き出す

西薗良太のコメント

西薗は全ての選手が走り終えるのを見届け、全日本個人TTのタイトルを再度獲得したことを確認すると、その場で泣き崩れた。

西薗:2012年に勝った時より嬉しいです。いろんな人に支えられて、すごいキツかったんですけど、これまで本当に細かいところまでいろんな人にアドバイスをもらったりして、自分なりに煮詰めてきてこのタイムが出たので、単純な勝利じゃないっていう感じですね。

CS:この全日本個人TTのために、どんな準備をしてきましたか?

西薗:そうですね、ありとあらゆるところを見つめて、1秒でも速く出るようにすごい考えてきたんで、その準備が功を奏して良かったです。


学生の頃から淡々とペースを刻む練習を積んできた西薗選手は、昨年のダイナミックなアップダウンのある那須での全日本個人TTで苦い思いをしたと言う。

西薗:平坦基調の感覚でやったら大失敗してしまって、それで負けたっていうのがすごい自分の中で反省があります。今回も細かいけど、アップダウンがあって速度変化がつくことが事前に予想ができたので、そういう時のペーシングをどうすればいいかっていうのを自分なりに研究して臨みました。身体的にも仕上げていって、TOJ(ツアー・オブ・ジャパン)では富士山ステージで日本人で一番速いタイム更新できたりとそれなりに順調に進めている感じはありました。出すべくして出たタイム・速さだったんですけど、それが全て出すことができてすごくホッとしています。自分の中で非常に良いペーシングができたんじゃないかと思っています。いろんな数字とかデータを積み上げるのが得意なんですけど、最後は自分の感覚との相談なんで。そういう部分も大事にできるようにトレーニングは修正してきました。

CS:26日に行われるロードレースはどう戦いますか?

西薗:僕が、というよりチームの中から誰でもいいのでとにかく勝ちを出すっていうのが一番です。誰でも勝つチャンスがあるような選手しかうちのチームはいないの思うので。コースを走ったことあるのがアジア選手権組しかいないので、展開もまったく予想がつかないですし、逆に何も予想しないで、定石通り攻撃して、勝ちを取りに行きたいです。

 
優勝が確定し、うれし涙を見せる西薗
優勝が確定し、うれし涙を見せる西薗
西薗をサポートしてきた人たちも会場を訪れ、喜びを分かち合う
西薗をサポートしてきた人たちも会場を訪れ、喜びを分かち合う


ブリヂストアンカーサイクリングチームの水谷監督も、
「走り方にダイナミックさを入れていけば絶対勝てるって言ってたんで。今日もパワーメーターを見ずに、フィーリングで走ってたので、それくらいの思い切った気持ちがあれば勝てるっていうことが証明されたので良かったです。彼自身パワーメーターとかを使ってちゃんとした練習するのは抜群なんですよね。本番は今ある力を出し切るだけなんで、それができたから勝てたんじゃないですかね。」と喜びを語った。

もともと、西薗選手のスケジュールとしてはツール・ド・熊野を走ってから全日本に臨む予定であったという。
「彼自身のペースでやらせるのが一番いいんですよ。『熊野走らないで本当に(全日本に)集中したい』って言ったんで、そういう準備ができるのであれば、彼を信じて調整させたんです。」と水谷監督は話す。

26日のロードレースに向けて、注意すべきチームについて聞くと、
「日本チームで今一番チームワークが強いブリッツェンじゃないですかね。プラスNIPPOと愛三。あとはアウトサイダー、シマノの木村とか、佐野とか、逃したらいけない選手もいますし。主要チームは動いてくると思うんで、そこをどうするかですよね。」と語った。
 

2位に入った佐野淳哉のコメント

佐野:思ったよりも今年の調子の中ではよく走れたと思いますけど、今思うと何回も2位とってるな、と悔しくなってきますね。でも悪い走りではなかったので、またTTに関しては来年狙っていきたいなと思います。

CS:気持ちはロードに切り替えていますか?

佐野:ロードは個人じゃなくてチームになるので、今の自分の脚質をチームの中で使えるようにしていけば、いい成績になるんじゃないかと思ってます。僕も一回勝ってるんですけど、今日の悔しさを良い形でチームの成績に結び付けられるような走りができれば。僕が取れなかったものをチームの誰かがとってくれたら一番いいなと思います。

CS:ロードレースに向けて、一番注意すべきチームは?

佐野:今の調子を見るとブリッツェンとブリヂストンですね。この2チームがメインになってくると思うので、そこが一番要注意かなと思います。

 
佐野はウェイブ2で暫定1位のタイムを出した
佐野はウェイブ2で暫定1位のタイムを出した
ゴールラインに向けて最後の一踏みに力を入れる佐野
ゴールラインに向けて最後の一踏みに力を入れる佐野

3位・増田成幸のコメント

3位に入り、表彰式でも苦い表情を見せた増田にも今回のTTの結果について聞くと、
「あんまり良くなかったですね。スタートしてからあまり脚回らないな、という感じで、集中力もいまいちでしたね。周りの環境に流されてる感じで、自分の世界に集中できていなかったです。西薗選手が速かったので、今日はこれがいっぱいいっぱいです。」と答えた。

ロードレース対しては、「明後日なので、しっかり休んで、優勝目指して頑張ります。」と次を見据えていた。

 
最終から2番目の出走順となった増田
最終から2番目の出走順となった増田
増田が西薗のタイムを追いかけるも届かず
増田が西薗のタイムを追いかけるも届かず


エリート男子のロードレースは6月26日(日)朝8時から大島支庁をスタートする。また、25日(土)に行われるU23のロードレースは悪天候のため、スタート時間は9時のまま、10周回から8周回に変更された。女子エリートのロードレースに関しては、現状周回数の変更はない。


全日本選手権・個人TT【男子エリート】結果(33.6km)
1位 西薗 良太(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)42分57秒29
2位 佐野 淳哉(マトリックスパワータグ)+26秒
3位 増田 成幸(宇都宮ブリッツェン)+51秒
4位 鈴木譲 (宇都宮ブリッツェン) +58秒
5位 阿部嵩之 (宇都宮ブリッツェン) +1分26秒
6位 椿大志 (ブリヂストンアンカーサイクリングチーム) +2分4秒
7位 石橋学 (NIPPO-VINI FANTINI) +2分9秒
8位 中村龍太郎 (イナーメ信濃山形) +2分10秒
9位 橋本英也 (NIPPO Racing/GOKISO) +3分10秒
10位 武井亨介 (Team FORZA) +3分10秒
http://nationalchampionships-road.com