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ツアー・オブ・ジャパン 宇都宮ブリッツェン密着レポート【TOJ振り返りインタビュー】

アジア最大級のステージレースなだけあり、世界の強豪たちが揃うこのツアー・オブ・ジャパン(TOJ)だが注目して欲しいのは海外チームだけでない。日本人選手や”純日本チーム”の活躍・戦いぶりにも是非とも着目してみて欲しい。そこで今年のTOJは、地域密着型チームのリーダー的存在である宇都宮ブリッツェンに全ステージ密着し、その内側をお届けしていく。ひとりでも多くの人にその魅力を知ってもらえると嬉しい。
 
text&photo 滝沢佳奈子

TOJ全体の振り返りインタビュー 増田選手

CS:TOJ全体を通してどうでしたか?

増田選手:今年はイラン人以上に、オスカル(・プジョル チーム右京)とマルコス(・ガルシア キナンサイクリングチーム)のスペイン勢がすごい強いなという印象ですね。あとは8日間休息日なしのレースってのは自分にとってプラスだったのかなと思いますね。タフな展開だったりとか、より回復力が求められるようなレースだったので。自分のなかでも、1日1日で調子がいい日、脚が重い日とかそういうのはあったんですけど、うまく高いところでパフォーマンス保てたんで、ずっと集中して走れてたし、すごい良かったと思いますね。

CS:どこのステージで一番調子が良かったですか?

増田選手:伊豆ではすごい良かったです。落ちてるとは思うんですけど、周りがやっぱり疲れてきてて、そこは自分の強みが発揮できたステージだったと思います。それも途中のステージで、いなべとか美濃とか、みんな自分のこと助けてくれて、南信州ステージでも大久保選手と阿部選手と小野寺選手が次の日につなげるためにグルペットで!って言ってたんですけど、意外に陣が上れてて、思いの外助けてもらったり。みんな「明日は休養日です!(笑)」みたいに言ってるけど、だいぶ助けてもらったりしてました。それがなかったら総合10位(という結果)ですけど自分一人では、成し得なかったと思いますね。チームとしてはUCIポイントも取れたし、日本人最上位も取れたし、ひとまずって形ですが。やっぱり目指してたのは表彰台、さらには優勝とかを目標に頑張ってきてたんですけど。このレースは自分の総合成績を第一目標にやってくれてたんで、みんな得意なコースではそれぞれが助けてくれましたね。

CS:今まで所属したチームのなかでここまで雰囲気のいいチームはありましたか?

増田選手:そういう意味では、毎日バカみたいに笑ってましたね(笑)。今回全然緊張しなかったんですよ。自分も今まで経験積んできて、気持ちを入れ込みすぎるといつも空回りして失敗するっての分かってたんで、今回、なるべくレースを楽しもうって、移動してツアーを楽しもうって気持ちで臨んでたんですけど。まぁごきぶりポーカーとかやり始めた時もありましたけどね(笑)。さすがにそこまではって(笑)。見てて楽しませてもらったりとか、いろいろ笑いが絶えなかったので、笑うといいホルモンが出るっていうじゃないですか、それで回復もしたんじゃないかと思います。

CS:TOJ期間中一番面白かったことって何ですか?

増田選手:何だろう、毎日ゲラゲラ笑ってたな~。(部屋が)シングルの時は、ああもう早く寝よう、みたいな、あぁー、休まる~幸せ~みたいな感じなんですけど、大部屋の日が何回かあって、あの日はあの日で、うるさくても疲れるんですけど逆に精神的には癒されてるみたいな、肉体的には疲れるけど(笑)。チームのキャラがみんな全然一緒じゃないんで、ボケ担当、ツッコミ担当とか常に真面目な人もいれば、常にふざけてる人とか、愚痴を言ってる人とか、いい意味でバランスが取れてるチームだと思いますね。脚質に関しても。スタッフも面白いですね。真面目で、みんながレースに対して真摯だし、みんな集中してるんだなってのは感じましたね。

CS:今一番何したいですか?

増田選手:今さすがにちょっと休みたいですね。ゴロゴロしたいです。また1カ月せずに全日本があるので、ちょっと休んだらまたトレーニング頑張っていきたいですね。去年TTが2位で、ロードが3位だったので。欲しいタイトルなので。

CS:次に課題を設定するとしたらなんですか?

増田選手:あとはスプリントかな、とか冗談で言ってたんですけど、あれは天性の才能がないと伸びていかない分野って言われているんで。あんまりそこばっかりやらずにバランス良く鍛えていきたいと思います。まだまだJプロツアーもたくさんあるし、今年はUCIレースと全日本を目標に掲げてるんで、Jプロツアーとかでは他の選手を助けたりとか、場合によっては自分も勝たないといけないときもあると思うんですけど、またみんなで頑張っていきたいですね。

 
レース後、笑顔でファンと接する増田選手
レース後、笑顔でファンと接する増田選手

TOJ全体の振り返りインタビュー 鈴木譲選手

CS:TOJ全体を通してどうでしたか?

鈴木選手:8ステージになって初回だったんで、結構長いなと思いましたね。いきなり京都ステージの激しいレースから始まって、中盤戦ではチームでも動けて、総合に絡んでいって、チーム全体として動きも良かったんで。日本人選手の活躍って意味では物足りないかもしれないですけど、選手目としてはすごくいいレースだったなと。やりたい動きもできて、増田選手も昨日(伊豆ステージ)厳しいレースのなか、残ってたりで力示してくれたりとか。やっぱり今年取り組んできているチームの底上げってのが少しずつ形になりつつある気がしますね。結構今回ブリッツェン存在感見せたなと思います。他の日本チームだと、ムラがあったりとか、強い選手いてもステージレースだとチーム力が問われるんですよね。今回はベテランも3人いるし、他の選手も指示通り動けるんで、チームとしては存在感見せられたと思います。

CS:目標としては達成できたという認識でしょうか?

鈴木選手:最低限の目標で、増田選手の総合一桁とかステージ優勝とかあって、もうちょいっていう感じではあったんですけど、割と手応え感じるレースになったんじゃないかと思いますね。次のレースに向けていい形でした。スケジュール通しても不利な立ち位置なんですね、5月レースなくていきなりTOJなんで、こういう形でもしっかりトレーニングができていたっていう証明でもある。これを継続していけばいい方向に行くんじゃないかなと思ってます。

CS:今まで所属されていたチームと比べてチームの雰囲気はどうですか?

鈴木選手:ここまで雰囲気いいチームなかなかないですね。エースで増田選手の立ち位置だと結構ピリピリしちゃう人もいますし。言いたいことは言えてると思うんで、雰囲気もいいですし。

CS:鈴木譲選手自身もベテランの立ち位置ですが、後輩に向けて何か言ったりするんでしょうか?

鈴木選手:あんまりたくさん言うこともないですけどね。ダメだったら仕方ないし、自分で自発的にやろうって思わないと、言われてやっても覚えない気がするんで。あまりにわかってない時には、こういうとき脚使っちゃダメだよとか、レース中の無線で細かい指示を出したりはしてますね。ミーティングではあんまり。レースは臨機応変なんで。あと、今回増田選手がエースなんで、増田選手がしたいことをできるようにって感じですね。

CS:エースをやりたいと考えているんでしょうか?

鈴木選手:誰しもあると思うんですけど、今回TOJって難しくて厳しいレースなので、エース何人も作っちゃうと誰が誰アシストするとかなっちゃうんで、うまくちゃんとエース立てて、増田選手が日本人で一番力のある選手だってことは認めてるんで。立てつつも自分も返り咲いてもいいかなっていう(笑)。そういうのを持たないと選手って継続してやってけないんで、そういう気持ちもありますけど、今は力をまとめて、うまく立てていきたいなと思っています。今日みたいにチャンスがある時はあるんで、それをうまく掴めるかどうかが、長くできる秘訣というか。頭の中で今日はスプリントステージだって決めつけると、今日みたいな走りできないんで。決まんなかったらそれ(スプリント)に向かって力を使うけど、逃げが決まったら自分にチャンスっていう感じで、少し存在感見せつつですね。バランスです。ずっとアシストやってると長くできないんで。

CS:TOJ期間中に一番笑ったことって何ですか?

鈴木選手:あれじゃないですか、京都ステージでアベタカが帰ってきて、無線で「もうしゃべんなくていい!」ってやつですね(笑)。(密着レポート2日目参照!)レース中ですけどちょっと笑って、また終わった後思い出して笑ってました(笑)。なんか後ろでドラマが起きてるぞ、みたいな(笑)。

CS:今一番何したいですか?

鈴木選手:3日くらい休みたいですね(笑)。富士山終わってから伊豆が調子悪くて、富士山の山頂で寒くなったのか、ちょっとわかんないですけど、おとといは飯食べれなかったんで。あとは昨日乗り切れたから、今日は調子良かったですね。無理に食べたりしてたから抑えめで休みたいです。

 
レース後、ファンに労いの言葉をかけられ笑顔で答える鈴木譲選手
レース後、ファンに労いの言葉をかけられ笑顔で答える鈴木譲選手

TOJ全体の振り返りインタビュー 阿部選手

CS:今回のTOJ、全体を通してどうでしたか?

阿部選手:休息日がなくなったっていうのは取りざたされてますけど、ステージレースらしくなって特に大きく変わったことはないんですけど、単純に比較すれば僕が骨折することもなかったですし(笑)、なんとか東京にもたどり着きましたし、良いTOJになったかと思います。チームとしても増田さんの総合10位ということで、そっから上となるともっとチーム力ないといけないのかなと思ったりします。そこが僕ら増田さん以外の選手の課題でもありますね。

CS:次に向けてどこを改善したいと思いますか?

阿部選手:やらなきゃいけないことは多いんですけど、基本的には登坂力ですね。登坂力に余裕ができればもう少し違う形で走ったり、大事な場面で僕が残ったりできると思うんで、そこが一番ですね。

CS:期間中ひたすら仕事をされてから、いつも最後にゴールしてるのが印象的でしたが……

阿部選手:手抜いてるだろって思ってました?(笑)結局まだ現状の能力では余力があるわけではないので、仕事を終えてバトンタッチをして、もちろんそのままその集団にとどまれればいいんですけど、帰りの支度だって遅くなるわけだから(笑)。現状それができないので。それだったら遅れてしまえばクールダウンを兼ねてゆっくり帰るのが賢い走り方かなと思いましたね。TOJというレースのルールをうまく使えば、ラスト1周は30分遅れようとタイムアウトになることはないので、そういうのをうまく使って走るのも一つ、僕ももう30になりますし、ベテランの域になってきた人間が少し考えていかないといけないところですよね。若手だったら、おらー!頑張ってついてけ!って言いますけど、ある程度歳いってたら、明日あるからもう休んどけってなります。

CS:今一番何がしたいですか?

阿部選手:家でゆっくり自分で淹れたコーヒーを飲みたいですね。

 
ブリッツェンサポーターの前で報告をする阿部選手
ブリッツェンサポーターの前で報告をする阿部選手

TOJ全体の振り返りインタビュー 大久保選手

CS:増田選手からだいぶ上れていたとありましたが、TOJに向けて体重を落としてきているんでしょうか?

大久保選手:そうですね、やっぱり上りが上れないと完走できないので。いつもTOJくらいで絞ってますね。冬は72kgくらいなんですけど、今66kgくらいです。練習してるだけで、そんな無理には絞ってないです。食事も別にそんなに気を使ってないですし。他の選手に比べたら全然、油とかも気にしないですし。ステージレース中疲れちゃうんで、回復するためにも食べるってのはいいことですよね。食べられないことの方が多くなるので。あとはストレス解消の意味合いもありますけどね。

CS:今回のTOJの各ステージを思い返してみて一番キツかったのはどこですか?

大久保選手:一番キツかったのはいなべですね。ずーっと引いてたんで。あとは京都も、まさか逃げると思わなかったんで(笑)。まぁでも去年の自分を考えたら逃げるってことは考えられなかったんで、その点では良かったですけど。

CS:結果としてはどうですか?

大久保選手:自分自身は結果まったく出てないんで。チームとしては増田さんがいいところでゴールしてくれたんで。でもチームの目標からしたら最低限というか、達成したのかなって感じですね。力が外人選手と比べて全然ダメじゃないですか。そこに尽きますよね。毎年外人にやられっぱなしですし、ここをどうにかしないとですね。

CS:一番面白かったこと?

大久保選手:やっぱアベタカさんの無線が入りっぱなしだったことですかね(笑)。(密着レポート3日目参照!)ミーティング中はもうずっと和気藹々と、ピリピリしてなくて良かったです。2年前とかそんな感じじゃなかったんですけどね。

CS:今一番何したいですか?

大久保選手:とりあえず酒飲みに行きたいです(笑)。

 
レース後にファンの子供たちと写真を撮る大久保選手
レース後にファンの子供たちと写真を撮る大久保選手

TOJ全体の振り返りインタビュー 堀選手

CS:3度目のTOJはどうでしたか?

堀選手:総合順位でUCIポイントがつく25位以内を狙ってたんで、終わってみて31位という結果は悔しい思いはあるんですけど、最後伊豆ステージであれだけの力を使って、順位を上げることができなかったので、まぁ地足が足りなかったというか、勝負どころとかタイミングとかじゃなくて単純に力が足らなかったんで、また練習して強くなってTOJに帰ってくるしかないなと思いましたね。

CS:何を強化していくべきだと考えていますか?

堀選手:最後にアタックするだけのスタミナですね。あと、冷静さとか状況判断力とかですね。もっと周りを見て動けるっていうところですかね。

CS:ステージレースでの回復力としてはどうでしたか?

堀選手:思ってた以上に後半の方が走れてたんで、回復の方は全然問題なかったですね。

CS:リラックスもできましたか?

堀選手:海外遠征と違って、ホーム(国内)での開催なんで、レース以外は普通通りでしたね。台湾に今年の初めに行ったんですけど、やっぱり結構食事とか合わないし、ホテルもすごい良かったんですけどちょっと違ったんですよね。

CS:チームの雰囲気はどうでしたか?

堀選手:チームの雰囲気は良くても悪くてもいいところ悪いところ言い合えたんで、結果が良くても悪くても冷静に、時には仲良く、時には意見を言い合ったりとすごく良かったと思います。

CS:TOJ期間中一番面白かったことって何ですか?

堀選手:そう言われるとわかんないですけど、結構笑ってた気がしますね(笑)。アベタカさんの京都ステージの無線のあれ(やり取り)だったかもしれないですね。

CS:今一番何したいですか?

堀選手:昼くらいに起きて、マック食べてまた寝たいです(笑)。完全にダメ人間な1日をやりたいですね。

CS:それやっていいんですか?(笑)

堀選手:まぁ1日くらいだったら大丈夫だと思います。また次の日から走って。奈良(クリテリウム)に出た後、(ツール・ド・)熊野に出るんで、次のレースに切り替えて。

CS:堀選手自身でステージレーサーとして資質があると思いますか?

堀選手:自分はステージレーサーになりたいんですよね。増田選手みたいに総合系の選手だと思ってるので、自分で勝手に。なのでやっぱりもっとスタミナと総合力を増やせばもっと高い位置に行けると思ってるんで、これからそこは頑張って強化していきたいですね。

CS:大久保選手のFacebookに載ってましたが、毎日顔のパックしてるんですか?

堀選手:この期間だけですね(笑)。家とかでは全然してないんですけど、今回化粧水の代わりにパックを持ってきて、やってみたらすごい気持ち良かったんで帰ってもやります(笑)。嫁のだったんですけど、日焼けすると予想以上にめちゃくちゃ気持ちいいんですよね。それが癒しでもありましたね。レース終わってパックして、寝る前に蒸気でホットアイマスクして(笑)。女子力高めですね(笑)。

 
アフターパーティでファンと写真を撮る堀選手
アフターパーティでファンと写真を撮る堀選手

TOJ全体の振り返りインタビュー 小野寺選手

CS:初めてのTOJはどうでしたか?

小野寺選手:いやー本当に、過酷な8日間でしたね。山あり谷ありといったどころか、コースバリエーションも豊富でしたし、それなりに自分が活躍できる場もあったんですけどそこはチャンスつかみきれなかったなというところも悔しさが残りますけど、8日間通して今まで自分になかったことを体感できてるんで、自分にプラスになることがたくさんあったんじゃないかなと思いますね。

CS:無事完走できて今の気持ちとしてはどうですか?

小野寺選手:まず安堵と達成感でいっぱいですね。最終ステージを終えて、あの赤いブリサポ(ブリッツェンサポーター)の前に6人揃って立てて、いやー、ほんと良かったなぁと達成感でいっぱいですし、感激しましたね。

CS:今後に向けてどこを強化していきたいですか?

小野寺選手:完走できるのはできるんですけど、レース中に動いたりとか積極的に動けるほどの力がまだないので、そういったところを強化していく。スタミナも付けつつさらに絞り込みをして山でもそこそこ走れるようにして、やっぱりレース勘を磨くっていうのをしてきたいですね。

CS:そういうのは見て学ぶんですか?

小野寺選手:レース走った方がすぐ身につくと思いますね。やっぱり場数こなしてた方がいろんな展開も学べますし、レース走ることによって練習では出せない力だったりとか、レースを走っていくことで成長していくんじゃないかなと思いますね。

CS:そもそもTOJ出場が分かったのはいつだったんでしょうか?

小野寺選手:1週間から2週間前には出るかもって話をもらってて、TOJまで1カ月切ったあたりでチームみんなで乳酸測定のテストがあって、その時結構いい数値が出てて、練習通しても結構いい感触だったんで、全日本までの1カ月間のレースどうする、みたいな話はあったんですけど。そこでも一応(TOJ)出そうだって話はしていましたね。

CS:期間中のどんな方法でリラックスしてましたか?

小野寺選手:自分の好きな音楽聞きながらストレッチしたりとか、一番に寝ることですね。音楽聞きながら気持ち良く眠りにつくとかそんな感じでしたね。レース終わってから移動なんで、ホテル帰ってから寝るまでの時間が唯一自分で使える時間だったので、そこでブログ書いたりしてましたけど。ブログ書くことも、今日会場で会った時に「毎日ブログ読んでますよ」って言ってくれたりして、そういうの聞くと楽しみにしてくれている人もいるし、地域密着でやってる以上、ファンの方との距離も近いわけですし、そういったところも発信していくのがこのチームにいる意味であり、仕事であると感じてるんで。できるだけ更新するようにしてます。

CS:今一番何したいですか?

小野寺選手:バイク乗り回したいですね。オートバイの方ですけど(笑)。同じ二輪でもちょっと自分の力じゃなくて機械の力頼って風を浴びたいですね(笑)。僕乗り物大好きなんですよ。元々将来の夢がパイロットから始まったんで、飛行機から電車から車から。まぁ飛行機が一番好きなんですけど。パイロットの次はF1レーサーとか目指したこともありましたね。最終的に自分が原動機になるっていうスポーツを選んだんですけど(笑)。中学の時にエンジン付きに乗りたいなと思ってたんですけど、乗れないから一番近いものが自転車だったんで、それで峠とかチャリンコで攻めて、そっから入ったんですよ(笑)。将来バイク乗った時の練習にって始めて。そっからいつの間にかエンジン付けずにここまで来ちゃいましたね。自分が自転車で練習で使うコースとかバイクで行ったりすることも多いです。あとは知らない道ちょっとふらーっと入ってみて、地図とか頼りにせずに思うままに行ってみるとかも好きなんで、時間あるときはそういうことしてます。

 
アフターパーティで乾杯する小野寺選手と大久保選手
アフターパーティで乾杯する小野寺選手と大久保選手

TOJを終えて……次のレースに向けてまた動き出す

レースが終わった後、表彰式が行われたみなとが丘ふ頭公園にブリッツェンサポーターが集まり、報告会が行われた。ファンの前に立った監督と選手たちは少しほっとしたような表情で、応援してくれたファンへの感謝の言葉とTOJを終えての感想を時に笑いを交えながら話す。集まった全員と笑顔で記念撮影をし、それぞれがファンとの交流を心から楽しんでいるようであった。

ブリッツェンは18時半からメリダ主催のランプレ・メリダとの合同アフターパーティが予定されていた。そのため、一旦ホテルに自走で戻り、まだチェックアウトしていない監督の部屋で代わる代わるシャワーを浴びる。最終日も慌ただしいスケジュールだが、そこでもメンバー同士の会話は尽きない。どこまでも仲の良いチームである。開始の1時間前にホテルを後にすると、時間の20分前にアフターパーティの会場に到着した。時間をきっちり守るのは日本人チームならではといったところであろうか、ランプレ・メリダのメンバーは少し遅れての登場となった。

 
大井埠頭に集まったブリッツェンサポーターと記念撮影
大井埠頭に集まったブリッツェンサポーターと記念撮影


パーティの会場では清水監督に話を聞いた。今回、TOJ全体を通して見たときに、ブリッツェンのメンバーが攻撃するというシーンが目立ったように感じる。やりきったと感じるかをまず尋ねた。

「攻撃していくとそういう気持ちは生まれますよね。今回はそれをテーマにして結果を出そうとしていたので、何らかの手応えはあったんですけど、ちょっともどかしいのと手応えと両方ありますね。今のメンバーの力量であったらできると思ったし、コンディションも良かったので、要所要所詰めていくだけのレースだったらもしかしたらもう少し順位は上がったかもしれないですけど。攻撃した結果、成功したのも少なかったですけど、こうやって積み重ねていくことによってこういうレースは勝っていかないといけないし、そういうことをやることによって勝ちパターンの動きとかも見えてくると思うので」と話した。

満足度でいうとどれくらいか聞くと、「60点くらいですね。富士山のヒルクライム能力でいくと、順位的に10番手くらいだと思ってたんですよ。あとは前の3ステージとかでタイムを稼いで、(総合順位)一桁に入るとか、もしくはもっと、表彰台に入るっていうパターンを捉えたかったので、ある意味予想の範囲内の順位だったと思います。ただやっぱり第1ステージのTTがすごかったっていうのが全日本に向けた収穫だったと思いますね」と答えた。

総合一桁やステージ優勝を狙うに当たって足りなかったと思うところはなんだったのだろうか。「勝負する上で勝つための武器がもう一枚、二枚あげてかないと厳しいなと思いましたね。ベースアップはそれなりにできてると思うんで、例えば大久保で言えば、もっと最大出力を上げていかないとですし、堀なんかであれば登坂力や体力を作っていかないとですし。勝つための最後の経験値もそうですけど、やっぱ勝つ選手って最後にパワーが爆発するとすごいし、そういったのがないと改めてこのカテゴリーでは勝てないなと思いましたね。」

清水監督は最後にこう付け加えた。「大阪からスタートして、最後の2日間一番苦しいところで宇都宮からはちょっと(距離)ありますけど、ホームステージということで応援してくれていたのは僕らにとってすごい力になりました。だからみんなも頑張れたと思います。」

 
メリダのランプレ・メリダとの合同アフターパーティで参加者と記念撮影
メリダのランプレ・メリダとの合同アフターパーティで参加者と記念撮影


今回の密着を通して、なかなか知ることの難しいチームの内側に触れることができたのではないかと思う。選手、監督だけでなく帯同するマッサージャー、チームドクター、メカニック、チーム専属のライター、カメラマンそれぞれがこのロードレースというスポーツに真摯に向き合い、様々な思いを持って毎日の戦いに向けて取り組んでいることがわかった。まだまだシーズンは始まったばかりだ。ぜひ一度はレース会場に足を運んで、彼らの魅力を感じ取ってみてほしい。

8日間密着させてくれたチーム関係者各位に感謝の意を告げるとともに、この宇都宮ブリッツェンというチームに魅了された一人として、これからも応援していきたいと思う。

宇都宮ブリッツェン http://www.blitzen.co.jp
ツアー・オブ・ジャパン 2016 http://www.toj.co.jp/2016/

■ツアー・オブ・ジャパン 宇都宮ブリッツェン密着レポート【一覧】http://www.cyclesports.jp/articles/series/2104