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ツアー・オブ・ジャパン 宇都宮ブリッツェン密着レポート 3日目

世界の強豪チームが揃うツアー・オブ・ジャパン(TOJ)が、今年も大阪で開幕した。アジア 最大級のステージレースではあるが、海外チームだけでなく、日本人選手や”純日本チーム”の活躍・闘いぶりにも是非とも着目してみて欲しい! そこで今年 のTOJは、地域密着型チームのリーダー的存在である宇都宮ブリッツェンに全ステージ密着し、その内側をお届けしていく。ひとりでも多くの人にその魅力を 知ってもらえると嬉しい。
 
text&photo 滝沢佳奈子

うだつの上がる町並みをスタート

大阪、京都と関西でのステージを終え、中部地方の岐阜県美濃市にやってきた。昨日の夜まで降っていた雨雲はどこへやら、まるで真夏のように照りつける日差しは路面をあっという間にドライな状態に戻していた。

”うだつの上がる町並み”の旧今井家住宅前からセレモニーランがスタートする。スタートのおよそ30分前に選手たちはスタート地点周辺に到着。その時点でスタート地点の通りは、まっすぐ進むのが難しいくらい、多くの観客で埋め尽くされていた。ブリッツェンの選手たちは少しだけ昨日の疲れが残っている様子であった。

 
うだつの上がる町並みのなか、スタートを待つ選手たち。うだつとは屋根の両端に作られた防火壁のことで富の象徴とされていた
うだつの上がる町並みのなか、スタートを待つ選手たち。うだつとは屋根の両端に作られた防火壁のことで富の象徴とされていた
今日のコースについて記載されたテープがそれぞれの選手のバイクに貼られる
今日のコースについて記載されたテープがそれぞれの選手のバイクに貼られる

外国人選手3人の逃げが形成。ブリッツェンは集団内でリラックス

序盤、1周目に外国人選手3人の逃げができる。前日のミーティングによると、今日は回復する日とのこと。ブリッツェンはチーム全員でまとまり、リーダーチームであるNIPPO・ヴィーニファンティーニの集団コントロールのもと、中盤での位置取りを行なう。

「今日は終始チームでまとまって、コミュニケーションとりながら走ってたんで、チームの連携としてはすごい良かった」と小野寺選手は振り返る。清水監督も「今日はリラックスしてましたね。それなりにポジション取りとかはしっかりしてたと思うんですけども、ずっと同じような展開が続いてたので」と話した。

 
1周回目はチーム全員で集団中ほどに位置し、和やかな雰囲気
1周回目はチーム全員で集団中ほどに位置し、和やかな雰囲気
2周回目の直角コーナーを抜ける
2周回目の直角コーナーを抜ける

レース途中で無線トラブル発生?犯人は誰……?

レース途中小一時間ほど、誰かの無線機がしゃべるときに押すボタンをロックしてしまい、ずっと雑音が入った状態になってしまう無線トラブルがあったようだ。レース後、雑談を交えながら何が起こっていたのか聞くと、「増田が無線で『補給食が欲しい、固形物はありますか?』って言ってて、こっちはずっと答えてるのに、『監督取れますか?取れますか?』ってみんなが言い始めて、無線が通じない(ロックされててしゃべれない)から僕から呼ぶことはできないのでもどかしい思いをしてたら陣が下がってきて、『監督無線は?!』って言って、『誰かスイッチ入りっぱなしになってんだよ』って返した。でも誰が犯人だったかわからずじまいで。そのあと直ったんで良かったです。」と清水監督が話す。

それを近くで聞いていた阿部選手がボソッと「俺か……?」とつぶやく。すかさず大久保選手が「アベタカさん今日全然聞こえなかったって言ってましたよね……。」「え?途中でって増田が言ってんのも?固形物ありますか?って言ってるのとか」と清水監督が聞く。「それは僕が(増田選手の)近くにいたから、直接しゃべってるのが聞こえただけで無線は何にも聞こえなかったです」と阿部選手が答える。「犯人が分かりました!(笑)」と清水監督が笑う。「分かりましたね、あれだけみんな確認してくださいって言ったのに(笑)」と大久保選手。「全然聞こえなかったよ……」とばつが悪そうに阿部選手が言う。

「堀、良かったな!堀が犯人じゃなかったぞ」と清水監督が堀選手に言う。なぜか堀選手が犯人だと思われていたようだ。大久保選手も「自分、土井さん(マトリックスパワータグ)としゃべってて、『今無線がずっと入りっぱなしなんですよ』って言ったら『絶対堀やな!』って(笑)。」堀選手はみんなからそういうキャラとして認識されてしまっているらしい。阿部選手は「監督!あの(イヤホンの)ケーブル新しくしてくださいよ!」と監督に言うと、「ケーブルあれ新しいんだよ!今年全部新調したんだよ。」と清水監督が答える。大久保選手がいたずらな笑みを浮かべながら「調子乗ったこと言っていいですか?イヤホンのアダプター買う前にロック解除してください!(笑)」と言うとその場にいた全員が笑った。

 
リーダーチームのNIPPOがコントロールし、同じような展開が続く
リーダーチームのNIPPOがコントロールし、同じような展開が続く

予想通りのスプリント勝負。小野寺、大久保がトライするも上がりきれず

こんな事件があった後、最終周回のラスト7km地点で逃げの3名を捕まえた集団は、各チームスプリントに向けて位置取り争いを始める。その時の状況について小野寺選手はこう話す。

「最後にハイスピードで激しい展開になってきて、最後の上りでそれぞれみんなの疲労具合とかでばらけちゃって。他のチームももういいやって選手と、まだ(集団に)いるぞって選手がごっちゃになっててスピード差が集団のなかで生まれて、そういうので意外と集団のなかで埋もれて分裂が起きてはぐれちゃったりするんですよね。残ってたアベタカさんと増田さんと陣さんが前にいて、自分はちょっと後ろの3人が確認できる位置で走ってたんです。最後のストレート入って、増田さんと陣さんしかいなくてなんとか陣さん引き上げようと思って、陣さんの方まで上がれたんで上がってったんです。最終コーナー入ったのは25番手くらいでした。それで一回牽制入ったのか、集団が緩んだ時にガッと出れた。自分も狙ってましたし、陣さんも調子良さそうだったので、狙えると思って、なんとかアシストしようと思ったんですけど、色々すごいゴッチャゴチャになって、危ない人とかもいて、最後の最後までちゃんとみんなで一緒にまとまるってことができなかったんです。なんとか引き上げようと右側から上がっていったんですけど、みんなギア比が違ってぐんぐん伸びてくし、アシスト終わった選手たちが右によけてきて、それで結構詰まっちゃって上がりきれないまま、ちょっと減速してる内に反対側がガァーッて伸びてってしまった。」

どの点が改善できそうか聞くと、「スプリンター擁する強いトレインは崩せなくて、みんなが今日ガチで狙いに行くっていう感じではなかったので、どうしても狙いに行けるのが僕と陣さんくらいしかいなくて、他のチームと比べると今日のステージでは最後の最後で力不足だなと感じるところがありました。最後の狭いコーナーでみんなでばらけずに固まって走ってればまた展開が違ってきたのかなと思います。」と答えた。

レース後、大久保選手は清水監督から「最後どうだった?勝て(るスプリントだっ)た?」と聞かれると「勝てはしないです。でももうちょっと前でゴールできたかもしれないです。番手がちょっと後ろ過ぎたかも。改善点はありますね」と答えていた。

 
レース直後どんな展開だったかを監督がヒアリングする。悔しそうな表情を見せるスプリンター2人
レース直後どんな展開だったかを監督がヒアリングする。悔しそうな表情を見せるスプリンター2人

今日は休息日のようなレース。スプリンター2人は経験値を積むいい機会に

今日のレースを振り返り、清水監督は「今日は正直、休息日のようなレースになったなと。ある程度予測はしてました。昨日ちょっと不運があって増田とかアベタカも(パンクで)脚使ってしまったんで、この後に向けて選手にとってはもう一度仕切りなおす日となりました。あと若い小野寺と大久保でスプリントトライしたんですけど、まぁ経験不足かな、と。それを含めて力だとは思うんですけど、まだ自分たちの脚を残しながらの状態だったので。まぁそれを含めての実力だと思って、また経験積ませてやってきたいと思います。」と話した。

明日のステージに関して増田選手は「明日は総合挑戦するところでの、大きく左右させられるかどうかの根気戦だと思うので、できることは挑戦したいと思います」と語る。「明日も集中力切らしたら終わりなんで気をつけたいと思います」

 
ミーティングで明日のコースを確認する
ミーティングで明日のコースを確認する
夜ごはん後のミーティング前にまたしてもごきぶりポーカーを始める。増田選手は疲れそうだから嫌だ、と見てるだけ
夜ごはん後のミーティング前にまたしてもごきぶりポーカーを始める。増田選手は疲れそうだから嫌だ、と見てるだけ


ツアー・オブ・ジャパン 第3ステージ(5月31日/美濃ステージ/139.4km)結果
1位 アンソニー・ジャコッポ(アヴァンティ アイソウェイ スポーツ ) 3時間24分
2位 ジョン・アベラストゥリ イザガ(チーム右京) +0秒
3位 ピエールパオロ・デ ネグリ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ ) +0秒

14位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +0秒
21位 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) +0秒
28位 大久保陣(宇都宮ブリッツェン) +0秒
31位 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) +0秒
41位 堀孝明(宇都宮ブリッツェン) +0秒
91位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) +6分9秒

ツアー・オブ・ジャパン 第3ステージ終了時個人総合順位
1位 アンソニー・ジャコッポ(アヴァンティ アイソウェイ スポーツ ) 6時間16分17
2位 ピエールパオロ・デ ネグリ (チーム右京) +5秒
3位 ジョン・アベラストゥリ イザガ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ ) +7秒

5位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +16秒
15位 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) +16秒
18位 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) +16秒
41位 堀孝明(宇都宮ブリッツェン) +24秒
77位 大久保陣(宇都宮ブリッツェン) +12分46秒
90位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) +30分55秒

チーム総合順位
1位 アヴァンティ アイソウェイ スポーツ
2位 チーム右京
3位 宇都宮ブリッツェン

宇都宮ブリッツェン http://www.blitzen.co.jp
ツアー・オブ・ジャパン 2016 http://www.toj.co.jp/2016/

■ツアー・オブ・ジャパン 宇都宮ブリッツェン密着レポート【一覧】http://www.cyclesports.jp/articles/series/2104