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NIPPO・ヴィーニファンティーニの大門監督にインタビュー【TOJ参戦編】

日本とイタリアがタッグを組んだUCIプロコンチネンタルチームのNIPPO・ヴィーニファンティーニが、今年もツアー・オブ・ジャパンに参戦している。

開幕前夜、チームを率いる大門宏監督にインタビューし、TOJ参加メンバーや目標について、そしてリオ五輪代表に選ばれた窪木一茂について語ってもらった

総合は考えず、区間を狙う

インタビューに答えてくれたNIPPO・ヴィーニファンティーニの大門宏監督
インタビューに答えてくれたNIPPO・ヴィーニファンティーニの大門宏監督
「今年のTOJでは、富士山ステージ以外はすべて狙っていけるんじゃないかと思う。総合はどのチームがトップかわからないが、富士山ステージがある時点で、最初から考えない方がレースはやりやすい。

総合で2位になっても何の意味もない。優勝でなければ意味はない。正直なところ、総合はイランが強いと思う。我々のチームには山岳のスペシャリストはいないし、総合で2位や3位になることを考えてもしょうがない。逆に富士山はゆっくり走って、伊豆と東京でも頑張りたい」


「スプリンターはニコラス・マリーニ(イタリア)とダニエーレ・コッリ(イタリア)。窪木一茂にもチャンスはあると思う。小石祐馬も悪くはないが、彼は逃げるタイプなので、逃げに乗れば十分に狙えるだろう。どの集団に入っても、今回のメンバーなら行けると思う。

窪木が2位になっても3位になってもそんなにうれしくはない。やはり優勝しないと。優勝に絡むような走りをしてほしい。

窪木はコッリ、マリーニと一緒にいて、小石とピエールパオロ・デネグリ(イタリア)は、タイミングを見て逃げに乗る。コッリもチャンスがあれば行き、その時は窪木も一緒に付いていければいい。最後まで待っていてもしょうがない。付いて行けないのなら、マリーニと一緒にいて、集団ゴールになったときに一緒にスプリントをする感じだ」

 

とにかく前の集団に入って勝負する

堺国際クリテリウムで集団を引いていたベテランのコッリ
堺国際クリテリウムで集団を引いていたベテランのコッリ
「みんな得意なコースだが、前で勝負をするようにしなければいけない。逃げに誰か1人が乗っていればいいのではなく、2人も3人も乗せられたらいい。1人でも多く入れて、最後の最後でどうするかを決められるような展開にしたい。

なるべく前の方、前の方で走り、2~3人が残っている集団の中で最後に勝負をしていきたい。コッリやデネグリは、そういう展開が得意な選手だからだ」

「日本のレースはレベル的に低いので、前の集団で勝負しなければいけない。メイングループに残っていたら何もできない。メイングループには、完走だけを考えている選手ばかりなので危険だ。ちぎれたくないと思って走っている選手が半分くらいいる。

それはヨーロッパ以外のローカルではどこの国でも同じ。中国や南米でやってもそうなる。コンチネンタルチームの若手にとってみれば、地元開催のレースは最終日まで走りたい。

だから彼らは集団に残ったら、ランプレや我々のような、ヨーロッパの強いチームを見ながらレースをして、そこでお見合いになる。守りのレースをされてしまったら。展開的には面白くないレースになる」


「今回はアントニオ・ニーバリ(イタリア)が唯一上りの選手かもしれないが、彼は完全にアシストの要だ。しかし、今後のことも考えて走らせる。イタリアに帰ってからのこともあるので、どこか上りのあるステージで思い切り走らせたいとは考えている。南信州か伊豆か。

でも、やはりそれはチームの他のメンバーの出来にもよる。コッリだって伊豆は得意だと思う。あれくらいの短い上りだったら問題はない」

 
NIPPO・ヴィーニファンティーニのTOJ参加メンバー。左からコッリ、マリーニ、ニーバリ、デネグリ、小石、そして日本チャンピオンの窪木
NIPPO・ヴィーニファンティーニのTOJ参加メンバー。左からコッリ、マリーニ、ニーバリ、デネグリ、小石、そして日本チャンピオンの窪木

初開催の京都ステージの『ホームチーム』になったことについて

京都生まれの小石と話す大門監督                                                                                     
京都生まれの小石と話す大門監督                                                                                     
「京田辺市が小石の生まれ故郷だったので、主催者側が作ったもの。自分たちが作ったものではないので、気合を入れて走るということはないが、期待に応えられるようなレースはしたい」

「自分の目では見ていないが、コースは狭くてテクニカル。デネグリに向いている。(彼は2014年に南信州ステージで優勝しているが)南信州で走れれば、どのステージでも行ける。

チームとしては、前半から逃げに誰かを乗せる展開にしたい。コッリもピュアなスプリンターではないし、彼、デネグリ、小石、窪木、みんなにチャンスがあると思う。集団ゴールになったらマリーニで狙う」

 

昨年は堺国際クリテリウムと美濃ステージで勝った若手スプリンターのマリーニについて

マリーニは昨年勝った堺国際クリテリウムで3位だった        
マリーニは昨年勝った堺国際クリテリウムで3位だった        
「マリーニは、今年はあまり走れていない。落車などのいろいろな原因で、ステージレースで2ステージ以上走れていない。こないだも台湾まで来たのに初日だけで、2日目には落車で終わって帰ってしまった。だからせっかく日本まで来ているし、今回こそは、というのはあると思う。

去年もシーズン通してコンスタントに強かったわけではないが、今年はあまりにもすぐに止めるレースが続いているので、やはり最後まで走らせたい。去年はそんなことはなかった。何分遅れようが一応完走していた。だから今回連れてきたのは本人にとってどうなのか、という不安材料はある。

今回のメンバーはツアー・オブ・ノルウエーからそのまま来日しているが、マリーニはノルウエーも2日目でリタイアしている。ちょっと練習不足かもしれないが、狙えるステージはどこだろうと考えている。美濃だって上りがないわけじゃあない。東京ならマリーニにも狙えると思う。そこまで残れればいいが、足切りもあるのでどうだろうか。とにかく、コッリとマリーニが連携したプレーを期待している」

 
堺ステージで元チームメートの黒枝士揮と再会の記念撮影をしていたマリーニ
堺ステージで元チームメートの黒枝士揮と再会の記念撮影をしていたマリーニ
今年はライバルになったマリーニと黒枝。競い合って成長してほしい
今年はライバルになったマリーニと黒枝。競い合って成長してほしい

男子オムニアムの五輪代表に選ばれた窪木について

メディアからも注目されている五輪代表の窪木
メディアからも注目されている五輪代表の窪木


「オリンピックは窪木にとって大事なのであって、チームにとって重要なことではない。

ジロでドイツのトラック出身のローガー・クルーゲ(IAM)が勝ったが、あんなのを見て窪木も刺激になったんじゃないかと思う。トラックの選手でもちゃんとジロを走って、ステージ優勝する力があるんだから」

「窪木にはいつも言っていることだが、オリンピックでオムニアムに出ても連盟の目標は8位。日本ナショナルチームにとっては過去にオムニアムで8位になった選手はいないのだから、それは理解するが、それをプロチームにも当てはめて、来年の契約(窪木の契約は1年)を継続する条件になるかと言えば、ならない。

それはナショナルチームの目標であって、我々のチームの目標ではない。チームとしては、オリンピックに出るからはメダルを取るくらいでなければ、来年の契約を継続する条件にはならない」

「一番の問題は、オリンピックがあるとナショナルチームの拘束期間が長くなることだ。8月の終わりだけオリンピックに行く、というわけではない。やはりナショナルチームには強化プログラムがあり、5月のTOJに出ることも反対だった。

僕にとってみれば、そんなことをやっている余裕はない。オリンピックに出ます、だからナショナルチームに3ヶ月間拘束されるので認めてくださいと言われたら、ああ、じゃあお前の査定は次は9月からだなということになる。窪木にもそういうことだと言ってある」

 
堺ステージでは、結構かわいがられていた?!    
堺ステージでは、結構かわいがられていた?!    
「だから今回のTOJで、窪木は表立った成績を出すよりも、チームから認められる走りをしなければならない。それは彼が優勝するということではない。チームに対して、自分の存在感を見せられる走りをしなければならない。

窪木の走りによって、チームが1つでも多くのステージで優勝できれば、彼はチームで存在感を認められる。4位や5位に入ったところで、チームの判断材料にはならない」

「ここまでレースには結構出しているが、まだまだ連携が“あうん”の呼吸でできるまでにはなっていない。言葉は関係ない。喋れなくても何をやればいいのかはわかっているからだ。

コッリやマリーニがどこでスプリントするのかとか、一緒にいないとわからないことがある。今、本人もそれを必死で覚えていると思うし、次はこうしようとか、考えていると思う」


「ツアー・オブ・ターキーやノルウエーでも一緒に走っているし、そういう意味で、今回のTOJというのは、その集大成になる。この後はナショナルチームに合流して、思う存分トラックで走れるくらいの気持ちでやってほしい。

窪木はTOJに出たけど、いたっけ? …という感じにはならないでほしい。もうオリンピック気分で、トラックを走りたくて、TOJどころじゃなかったっんじゃないのか、なんて陰口を叩かれないように!」

 
[NIPPO・ヴィーニファンティーニのツアー・オブ・ジャパン参加メンバー]
窪木一茂(日本/26)
小石祐馬(日本/22)
ピエールパオロ・デネグリ(イタリア/29)※東京ステージが誕生日!
アントニオ・ニーバリ(イタリア/23)
ニコラス・マリーニ(イタリア/22)
ダニエーレ・コッリ(イタリア/34)
(http://teamnippo.jp)
 
 

TOJ2015のNIPPO・ヴィーニファンティーニ密着レポート

堺ステージ:http://www.cyclesports.jp/articles/detail/29307
いなべステージ:http://www.cyclesports.jp/articles/detail/29309
美濃ステージ:http://www.cyclesports.jp/articles/detail/29311
南信州ステージ:http://www.cyclesports.jp/articles/detail/29305
富士山ステージ:http://www.cyclesports.jp/articles/detail/29299
伊豆ステージ:http://www.cyclesports.jp/articles/detail/29306
東京ステージ:http://www.cyclesports.jp/articles/detail/50653


NIPPO・ヴィーニファンティーニの大門監督にインタビュー【山本元喜のジロ編】http://www.cyclesports.jp/articles/detail/63610