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ツアー・オブ・ジャパン 宇都宮ブリッツェン密着レポート 1日目

世界の強豪チームが揃うツアー・オブ・ジャパン(TOJ)が、今年も大阪で開幕した。アジア 最大級のステージレースではあるが、海外チームだけでなく、日本人選手や”純日本チーム”の活躍・闘いぶりにも是非とも着目してみて欲しい! そこで今年 のTOJは、地域密着型チームのリーダー的存在である宇都宮ブリッツェンに全ステージ密着し、その内側をお届けしていく。ひとりでも多くの人にその魅力を 知ってもらえると嬉しい。
 
text&photo 滝沢佳奈子

TOJが堺ステージを皮切りにいよいよスタート!

大阪・堺市の大仙公園周回コースで行われた第1ステージは1周2.65kmの短い距離で争われる個人タイムトライアル。今年は全16チーム94名のレーサーが順番にスタート台に立った。また、タイムトライアルの前には、前哨戦として同コースを10周回する堺国際クリテリウムが行われた。

今日のステージだけで会場を訪れた人はなんと7万6000人と、昨年を上回る来場者数を記録し、レースの注目度の高さを感じる。
チームプレゼンテーションにて笑顔を見せるブリッツェンメンバー
チームプレゼンテーションにて笑顔を見せるブリッツェンメンバー

前哨戦のクリテリウムでは小野寺選手と大久保選手が逃げに入り、調子の良さを見せる!

前日のチームミーティングでは、「クリテリウムはウォーミングアップや美濃などスプリントステージの予行演習程度で、チャンスがあったら大久保、小野寺で出る」と清水監督が話していたが、実際にその通りとなった。最終周回の前に集団を率いたランプレ・メリダの引きに飲み込まれてしまったが、レース後、小野寺選手は「(アタックチーム)ガストの選手に付いていったら、集団から飛びててました。あとにTTが控えてなければ全開で引いたんですけどね。」と語った。最後にはJプロツアーでもスプリントでの強さを見せるチーム右京のジョン・アベラストゥリ イザガが集団スプリントを制した。

クリテリウムの様子を見て、清水監督は、「抜け出せたってことは調子がいいってことなんで良かったと思います」と語った。

 
TTの前に行われたクリテリウムで逃げる小野寺選手と大久保選手(最後尾に隠れている)
TTの前に行われたクリテリウムで逃げる小野寺選手と大久保選手(最後尾に隠れている)

出走順は吉と出るか凶と出るか?

第1ステージとなるTTは13時35分から各選手30秒間隔でスタートしていった。ブリッツェン内の出走順は、前日に清水監督が決めた、堀選手、大久保選手、鈴木譲選手、小野寺選手、阿部選手、増田選手の順。1周2.65kmのコースであるため、ひとりあたりの走っている時間が3分程度と短く、最初の堀選手と最後の増田選手の間でも1時間も間が空かないため、そこまで状況は変わらないと判断された。しかしクリテリウムが終わったあたりで雲行きが怪しくなってきた。空がどんよりと曇っている。天気予報では夕方から雨だという。

堀選手がブリッツェン最初のスタートを切り、大久保選手、鈴木譲選手と天気を保ったまま出走していく。ちょうど小野寺選手の出走近辺で雨がぱらついてきた。路面はそこまでウエットな状態にはなっていないものの、不安が残る。清水監督は「雨が降ってきて、路面だけは濡れないでくれ、と思っていた」と語る。ブリッツェン内の最終出走者であった増田選手はレース後、「監督の(決めた出走順)のせいで雨の中走らないと……って思ってた(笑)」と笑った。

増田選手が出走する頃には雨はいったん止んだ。増田選手の名前が呼ばれ、スタート台でのカウントが終わると、それまでに出走した誰よりも低い姿勢でスタートを切っていった。

 
途中通行人が横切るなどトラブルに見舞われながらもゴールラインまで全力で駆け抜ける大久保選手
途中通行人が横切るなどトラブルに見舞われながらもゴールラインまで全力で駆け抜ける大久保選手
安定した走りを見せた鈴木譲選手のスタート
安定した走りを見せた鈴木譲選手のスタート
雨がぱらつく中スタートする小野寺選手
雨がぱらつく中スタートする小野寺選手
増田選手が誰よりも低いエアロフォームでスタートを切る
増田選手が誰よりも低いエアロフォームでスタートを切る

増田選手が3位という快挙!

増田選手がゴールすると、残り8人の出走者を残して暫定3位と発表された。これには清水監督も嬉しげな表情。その後、出走者全員がゴールし、暫定3位から3位確定となった。上位2人は完全なスプリンター。その後ろ2秒差につけるクライマーはこう言った。「ボトルもいらなかった、なかったらもしかしたらもうコンマ数秒は稼げたかも。」まだまだ伸びしろがあるようだ。

「昨年は3分22秒だったから1秒縮まった。年々良くなっていて来年のハードルがまた上がった(笑)。コーナーも自分なりに安全な範囲で攻めた。短い距離のプロローグ的なTTは苦手だったけど、苦しいトレーニングが効いた。」と喜びの表情を見せた。

チームピットに戻ると、地元である大久保選手がファンの方と話をし終えていたところだった。増田選手が3分21秒でゴールし、3位になったことを告げると、「本当ですか?!すげぇ!!!!増田さん!!」と素の表情で驚きと喜びが入り混じった声を上げていた。

レース後、+6秒61の26位で安定した走りを見せた鈴木譲選手も、「個人的にも悪くなくて、チーム全体として良かったです。むしろすごい良い方向でびっくり」と明日につながる結果を喜んでいた。

今日の結果を、清水監督はこのように振り返る。「増田が素晴らしい走りだったと思います。強化してきた部分が結果に出たという部分と、過去日本人がこういうコースで活躍することが少なかったなかで、もともとヒルクライマーだった選手がここまでやってきたっていうのはすごいことだと思います。あと、第1カテゴリーで3位に入ったってのは初めてじゃないですかね?チーム全体的にも、このコースを狙ってる選手はもう一声欲しいところはありましたけど、コンディションの良さを確認できたと思います。」

 
ステージ3位という結果を称え合う選手たち
ステージ3位という結果を称え合う選手たち

チームとしての目標は増田選手の個人総合一桁台、若手にも期待がかかる

カテゴリー1のTOJではステージ3位までにUCIポイントが与えられる。今回のステージで増田選手はUCIポイントを取得できたことになる。全ステージ終了後の総合順位でも25位以内に入るとUCIポイントが入る。チームとしては個人総合で増田選手を一桁台に乗せることを目標と考えているという。また、それだけでなく上りに強く、総合力を付けてきた若手の堀選手にも期待がかかる。

「増田の相方として厳しい局面で一緒に行って、アシストしながらもUCIポイントがつく総合25位までに入ってもらうようにしたいと思います。大久保や小野寺も持久力等、全体的なベースが上がって、後半に向けて脚を残せるようになってきた」と清水監督は語った。
 

翌日は朝まで雨予報……。荒れるレースの予感

京都ステージは、セレモニーランで9時25分に普賢寺ふれあいの駅をスタートし、けいはんなプラザの周回コースに入る全長105kmのロードレース。道が狭いことやテクニカルな下りがポイントとされるが、加えての雨予報。清水監督は、「テクニカルでハードなサバイバル的な感じになるんじゃないかと思ってます。そうなった場合、うちの増田、鈴木譲、堀が狙えると思います」と展開を読む。その鈴木譲選手は、「コース的にも天候的にも逃げの方が有利なんで、逃げに入れたらいいですね。展開が厳しくなってきたらまた荒れるレースになるんじゃないかと思います」と答えた。

増田選手の総合順位について清水監督は、「このタイム差はあってないようなもんなんで、新たにタイム差を作っていきたいです。総合3位だからどうのこうのってわけではなく、普通にレースをしていきたいと思います」と語った。明日からの展開にも期待だ。

 
チームミーティングで明日のコースを確認する
チームミーティングで明日のコースを確認する


ツアー・オブ・ジャパン 5月29日/第1ステージ(堺)個人TT/2.65km 結果(個人総合順位も同様)
1位 アンソニー・ジャコッポ(アヴァンティ アイソウェイ スポーツ) 3分19秒00
2位 カルロス エドゥアルド・アルサテ(ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルCT) +0秒23
3位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +2秒87

17位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) +5秒87
23位 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) +6秒45
26位 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) +6秒61
63位 大久保陣(宇都宮ブリッツェン) +14秒56
65位 堀孝明(宇都宮ブリッツェン) +14秒88


チーム総合順位
1位 アヴァンティ アイソウェイ スポーツ
2位 ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルCT
3位 チーム右京
4位 宇都宮ブリッツェン


宇都宮ブリッツェン http://www.blitzen.co.jp
ツアー・オブ・ジャパン 2016 http://www.toj.co.jp/2016/

■ツアー・オブ・ジャパン 宇都宮ブリッツェン密着レポート【2016】http://www.cyclesports.jp/articles/series/2104