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自転車の事故で亡くなった方々を悼む《ライド・オブ・サイレンス》

5月の第3水曜日である18日、カナダ・ケベック州ケベック市で『ライド・オブ・サイレンス』が開催された。自転車の交通事故犠牲者に黙祷を掲げ、車道をゆっくりと走るというライドである。

 
Photo: Hiroyuki NAKAGAWA Text: Koichiro NAKAMURA

5月の第3水曜日、午後7時。ライド オブ サイレンスはスタートする



ライドオブサイレンスとは、自転車の事故で亡くなった方を悼むライドイベントだ。5月の第3水曜の夕刻に集まり、犠牲者に1分間の黙祷を捧げ、20kmほどの距離をゆっくりと走るのだ。そのメッセージは「サイクリストが交通安全への意識と行動を高めること」である。

 
大学そばにある教会の前に、多くのサイクリストが集まってきた
大学そばにある教会の前に、多くのサイクリストが集まってきた
午後6時半でもまだまだ北米はかなり明るい
午後6時半でもまだまだ北米はかなり明るい


「多くのサイクリストが深刻な事故に苦しんでいる。自転車が脆弱な乗り物であることを意識し、道路での安全と道路を使うものへの経緯を払おう。クラブや仲間のサイクリストに、道路を走る一員である意識を広めよう。そしてヘルメットの着用を進めていこう」と、パンフレットにはシンプルに書いてある。 

その思想に賛同する都市が増え、5月の第3水曜日に毎年開催されるようになった。2015年には20カ国357の都市で開催された。その2016年のライドの模様を、カナダ・ケベック州ケベック市で見てきた。こちらでは公用語フランス語の『ツール ド シランスTour de Silence』と呼ぶ。


 
『ライド オブ サイレンス』ケベック版のフライヤー
『ライド オブ サイレンス』ケベック版のフライヤー
背中に『ツールドシランス』のロゴを貼って主張する女性たち
背中に『ツールドシランス』のロゴを貼って主張する女性たち


スタートは午後7時。300人を超える人々がケベック・ラヴァル大学の広い駐車場に集まった。スポーツサイクリストらしい格好のチーム、アウトドアウエアを着こなすオバさま。みな自転車が生活に溶け込んでいる方々で、それはつまり、自分が被害者にならないためにできることをしたい、そんな人々である。 

7時になり、今回のライドでトリビュートされる2年前に娘を自転車の交通事故でなくしたジャン・ブレー氏、そしてライドをオーガナイズしたガノー社のルイ・ガノー氏が先のメッセージを繰り返す。「自転車で、これ以上涙を流さないために」。そして1分間、黙祷する。 

 
左からジャン・ブレー氏、地元の名物『ピエロベロ』さん、オーガナイザーのルイ・ガノー氏
左からジャン・ブレー氏、地元の名物『ピエロベロ』さん、オーガナイザーのルイ・ガノー氏
サイクリストの前には、数台の白バイが先導する
サイクリストの前には、数台の白バイが先導する


地元の警察が先導し、300名余のサイクリストはゆっくりとしたペースで走る。道路を安心して走れるためにできることはなにか。ドライバーでもあるサイクリストは考えて走る。1車線分は、ほぼサイクリストの死を悼む彼らに封鎖されるが、パトカーが後方を努め、20km弱を1時間かけて走る。 

その後は駐車場に戻り、解散となる。ケベックでの交通安全マナーを書いた冊子、そしてクルマに貼る「TOUR DE SILENCE」ステッカーが参加賞としてもらえる。そんな形での安全啓蒙ライドであった。日本での開催は、まだないようだ。 

 
集団の後ろは、地元レーシングチームのバンとパトカーが守る
集団の後ろは、地元レーシングチームのバンとパトカーが守る
粛々としたスピードで走る。身を守るために、サイクリストとして果たすべきものは何かを考える
粛々としたスピードで走る。身を守るために、サイクリストとして果たすべきものは何かを考える


ライド・オブ・サイレンス公式ページ http://www.rideofsilence.org/ 

ケベックでのライド・オブ・サイレンスの公式ページ https://tourdusilencequebec.com/