トピックス

パナレーサーが放つ “勝てる”タイヤとは?

どんなに高性能なバイクも、2本のタイヤで路面を蹴って進む。それゆえロードレースにおいて勝敗の大きなカギを握るタイヤ。 日本のタイヤメーカーであるパナレーサーは、 勝利には何が必要なのかをもう一度見つめ直した。

 
text●ナカジ  photo●吉田悠太/ナカジ
presented by Panaracer

これが次世代チューブラータイヤ



2016年1月「面白いチューブラータイヤができたんです」という一報が編集部に入った。自転車用タイヤを製造するパナレーサーからだった。何でも〝次世代に向けてのプロトタイヤ〞だという。そう聞いては見に行かないわけにはということで、 編集部はパナレーサーがサポートするプロロードレースチーム「宇都宮ブリッツェン」のシーズン前合宿を訪れた。  

ロードサイドにはまだ雪の残る冬の宇都宮。チームの集合場所で待っていると、しっかりと防寒装備をした選手たちが集まってきた。 メカニックが用意しているのは、真っ黒なチューブラータイヤが装着されたホイール3セット。見たことのないラベル、手書きでコードネームが書かれたものなど、いかにもプロトタイプという雰囲気がただようタイヤだ。  

1年近くの開発期間を経て出来上がったタイヤに、パナレーサーの担当者は「チームはいいことも悪いことも忌憚なく伝えてくれる。製造からテストまで国内で完結するから開発スピードも速いし、細かい要望も実現できる」と胸を張る。チームとは何かあれば頻繁に連絡を取り合っているという。 


 


開発しているタイヤは「チームエディション」というシリーズ。 エディションゼロがプロトタイプで、エディション1が市販モデルとなる。キーワードになるのは「タイヤ剛性」だ。勝てるタイヤには何が必要なのかを考え、追求していった結果、いかにエネルギーロスを少なくするかが重要。そのためにはムダな動きをしないことが勝利を引き寄せる。なるほど、フレームやホイールも高剛性化を進 めている流れからするとうなずける。  

より具体的な話を聞くべく、編集部は兵庫県丹波にあるパナレーサー本社工場へ飛んだ。応対してくれたのはチューブラータイヤの開発担当者である安堂政明さん。

「チューブラータイヤという構造自体はとても古典的なものです。フレームやコンポーネント、ホイールなどロードバイクを構成する他のパーツの進化に比べると、チューブラータイヤの進化は少ないと思っていました。チューブラータイヤの弱点は大きく2つあります。ひとつはよくチューブラータイヤを形容する言葉として使われる〝しなやか〞であること。確かに快適性という意味では利点になりますが、ゴールスプリントなどでは、変形することによるエネルギーロスが発生します」 


 

ぜい肉を可能な限り削減

開発責任者・安堂政明 パナレーサー技術部所属。レースシリーズ全般の開発に携わり、特に競技用機材としてのチューブラータイヤの研究開発に余念がない。自身ももちろんサイクリストである。
開発責任者・安堂政明 パナレーサー技術部所属。レースシリーズ全般の開発に携わり、特に競技用機材としてのチューブラータイヤの研究開発に余念がない。自身ももちろんサイクリストである。
「もうひとつは、装着に接着剤が必要であるという点。接着剤の層が不確定要素となり、エネルギーロスに影響すると考えます。とはいえ、軽さが必要なレース機材において、現状ではチューブラーホイールが欠かせません。

ですので、以上の2点をいかにして改善するかに主眼をおきました。具体的にはタイヤの構造を見直し、ホイールへタイトに装着する設計としています。

もともと弊社製チューブラータイヤは、トレッドとケーシングを接着剤ではなく加硫接着(化学反応により 結合)しているのでタイヤ内でのエネルギーロスは最小限です。

そして、エネルギーロスにつながるぜい肉のような部分を可能な限り削減しています。 ホイールへの装着にはやはり接着剤が必要ですが、最適な装着方法を当社HPで紹介していますので ご参照ください」

このように、かなりエッジの利いた製品だ。それゆえのデメリットについても聞いた。

「正直、メカニックの方は大変だと思います。ホイールにはまるギリギリの設計にしているので。それから競技に特化した性能を追い求めたので、耐久性は標準モデルに比べると低下しています。トレッド面積は実際に使用する範囲ギリギリにしてありますし。その分、実験データはかなりいいです。製造は丹波工場のチューブラー専用ラインで行いますので、安定した品質はお約束します」  

この強烈な個性を持ったタイヤ は数量限定で販売される。その走りごこちを享受できる人は、そう多くないということだ。


 

プロトタイプに触れた4人に聞く

ルーラー・阿部嵩之:普段使っているタイヤは26Cの太さで、空気圧も6気圧前後にしています。 なので、この新作は私の好みと真逆の製品ではあります。テストでは空気圧を高めにしてから徐々に下げていっています
ルーラー・阿部嵩之:普段使っているタイヤは26Cの太さで、空気圧も6気圧前後にしています。 なので、この新作は私の好みと真逆の製品ではあります。テストでは空気圧を高めにしてから徐々に下げていっています
オールラウンダー・増田成幸:タイヤの好みは人それぞれだと思いますが、僕は硬いのが好きなのでこのタイヤは歓迎です。やっぱり柔らかいとその分ロスになる印象があります。 駆動系は踏んだ分だけ進んでほしいです
オールラウンダー・増田成幸:タイヤの好みは人それぞれだと思いますが、僕は硬いのが好きなのでこのタイヤは歓迎です。やっぱり柔らかいとその分ロスになる印象があります。 駆動系は踏んだ分だけ進んでほしいです
監督・清水裕輔:グリップと軽さは特筆もの。選手の好みもありますが、硬さというのもフィーリングの良さにつながっていると思います。重量も軽く仕上がっていますし。
監督・清水裕輔:グリップと軽さは特筆もの。選手の好みもありますが、硬さというのもフィーリングの良さにつながっていると思います。重量も軽く仕上がっていますし。
メカニック・田村 遼:新しいタイヤの硬さは選手も感じているようで、合宿でテストしたときは頻繁に空気圧を変更してほしいというオーダーがありました。 はめ合いは正直かなり硬いですね(笑)
メカニック・田村 遼:新しいタイヤの硬さは選手も感じているようで、合宿でテストしたときは頻繁に空気圧を変更してほしいというオーダーがありました。 はめ合いは正直かなり硬いですね(笑)


 

問い合わせ先

パナレーサー お客様相談室
0795-82-6806
https://panaracer.co.jp/