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米国チャンピオンを相手に日本勢が善戦! シクロクロス東京2016

都心のお台場海浜公園が舞台となる
シクロクロス東京は、
今年で5年目を迎えた人気イベントだ。

午前中の暴風雨から一転して、
時ならぬ初夏のような陽気に見舞われた
男子エリートのレースでは、
優勝候補の米国チャンピオンを相手に
日本勢が最後まで善戦。
のべ1万5000人の観客が
その熱戦に沸いた!
 

米国チャンピオンが2度目の優勝!

星条旗をあしらったチャンピオンジャージを着て、お台場の砂浜を疾走したパワーズ
星条旗をあしらったチャンピオンジャージを着て、お台場の砂浜を疾走したパワーズ
 
お台場海浜公園(東京都港区)で2月14日に開催された、第5回シクロクロス東京2日目のメインイベントである男子エリートは、米国チャンピオンのジェレミー・パワーズ(アスパイアレーシング)が、2013年の第2回大会につづいて2度目の優勝を果たして幕を閉じた。

しかし、今年のシクロクロス東京は一味ちがっていた。これまでお台場で海外からの招待選手と互角に闘ってきた日本人選手と言えば、ヨーロッパのレースで経験を積んでいる日本チャンピオンの竹之内悠(東洋)で、彼がまずパワーズを終盤に追い詰めたのだが、そこに今年は小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)も加わったのだ。

27歳の小坂は今シーズン、一皮むけたような活躍ぶりで開幕から連勝をつづけ、1月にはベルギーで開催されたシクロクロス世界選手権に、エリートカテゴリーで初めて参加。ジャパンシクロクロス(JCX)シリーズでは総合首位に立ち、最終戦のシクロクロス東京を迎えていた。

序盤遅れていた小坂は、残り2周に入る前に先頭の竹之内とパワーズに追いついただけでなく、先頭に立って最終周回へと突入。5年目にしてシクロクロス東京史上初の日本人王者が誕生するのではと、会場はさらに熱狂し、熱い声援とカウベルの音がこだました。

その期待を打ち砕くように、星条旗を身にまとった米国チャンピオンのパワーズは長い砂浜エリアであっさり小坂を追い抜き、先頭でゴール。しかし、背後に迫る小坂の息遣いが聞こえていたかのように、パワーズはハンドルから両手を離すことなく、フィニッシュラインを通過した。
 
フィニッシュラインを先頭で通過したパワーズに勝利のポーズはなかった
フィニッシュラインを先頭で通過したパワーズに勝利のポーズはなかった

初夏のような暑さとの闘い

シクロクロス東京は2年前大雪に見舞われ、昨年は冷たい雨の中で開催された。今年も2日目の午前中は暴風雨になったのだが、午後に天気はガラリと変わって日差しが照りつけ、気温20度C以上という初夏のような陽気になった。

今年のコースは砂浜エリアが長くなり、海岸線を延々と走るレイアウトになったが、午前中の雨で砂は水を吸って固くなっていた。2日間のイベントの最後を飾る男子エリートには、31選手が出走。海外からは歴代のチャンピオンたちが全員招待されていた。

初代王者のベン・ベルデン(Wカップ)は昨年で40歳になり、シクロクロス東京を現役最後のレースとするために来日していた。彼は引退レースのためだけに、特別にデザインされたジャージを身にまとい、最後のスタートラインに並んだ。

不運だったのは、昨年雨天のレースで連覇を果たした米国のザック・マクドナルド(ストリームラインインシュランスサービスズ)だった。彼は自転車がロストバケージしてしまい、借り物の自転車での参加を余儀なくされてしまっていた。
 
これが引退レースとなったベルデン(右から2番目)は特注ジャージでスタートラインに並んだ
これが引退レースとなったベルデン(右から2番目)は特注ジャージでスタートラインに並んだ
パワーズがシケインでバニーホップを披露するたびに、会場からは歓声が上がった
パワーズがシケインでバニーホップを披露するたびに、会場からは歓声が上がった
暑さにやられたパワーズを追い詰めた日本チャンピオンの竹之内            
暑さにやられたパワーズを追い詰めた日本チャンピオンの竹之内            
小坂のみごとな追い上げに会場は熱狂した
小坂のみごとな追い上げに会場は熱狂した

レースは1周目から優勝候補の竹之内、パワーズ、ベルデンが先頭に出たが、そこにディフェンディング・チャンピオンのマクドナルドの姿はなかった。3周目でパワーズが先頭に立つと、後続に数10秒差を付けて独走を続けた。

しかし、予想外の暑さに百戦錬磨のパワーズも苦しめられた。中盤で彼は筋肉がツッてしまい、2番手の竹之内にじりじりと差を詰められていった。そして残り4周で、ついにパワーズは竹之内に追いつかれてしまった。その後方では、単独で3番手を走っていたベルデンを小坂が追い抜き、先頭の2人を追撃した。

残り3周の終盤の林エリアで小坂は竹之内とパワーズに追いつき、先頭は3人で残り2周へと突入した。この大事な局面で、竹之内は痛恨のミスをおかした。砂浜エリア終盤のコーナーで砂に車輪を取られてしまったのだ。

それで千載一遇のチャンスが巡ってきたのは小坂だった。彼はわずかな差を得て、最終周回を告げるベルが鳴るコントロールラインを先頭で通過した。しかし、ベテランのパワーズは落ち着いていた。長い砂浜エリアを文字通り“パワー”で走りきり、小坂を抜いて先頭に立つと、その後は誰も前には行かせなかった。

「とてもハードなレースで、思いもよらなかった暖かさがもっとレースをキツくしたが、うまくやれてうれしい。(中盤は)汗をたくさんかいて筋肉がツッてしまい、最後の2周まで仕掛けるのを待たなければならなかった」と、パワーズはレースを振り返っている。

日本のファンへのメッセージを求められたパワーズは、日本語で「アリガトウ」と言い、「みんながこのレースを楽しんでくれていたらいいなあと思う。そしてここにいる選手全員を祝福するよ」と、付け加えていた。

この日、お台場で一番のヒーローになった小坂は「日本人としてはやはり外国人選手に勝つところを見せたかったが、応援のおかげで2位になれたと思うので、本当に感謝している」と、語っていた。
 
米国チャンピオンvs日本勢! 砂浜のデッドヒートを大勢の観客が見守った                                      
米国チャンピオンvs日本勢! 砂浜のデッドヒートを大勢の観客が見守った                                      

男子エリート結果

1 ジェレミー・パワーズ(アスパイアレーシング/米国)59分02秒
2 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム/日本)
3 竹之内悠(東洋/日本)
4 ベン・ベルデン(Wカップ/ベルギー)
5 ギャリー・ミルバーン(トレック・チャンピオンシステム/オーストラリア)
6 ティム・アレン(フィードバックスポーツ/米国)
7 丸山厚(ボーマレーシング/日本)
8 門田基志(チームジャイアント/日本)
9 前田公平(弱虫ペダルシクロクロスチーム/日本)
10 ザック・マクドナルド(ストリームラインインシュランスサービスズ/米国)
 
お台場でヒーローになった2位の小坂。来シーズンはさらに上を目指してほしい
お台場でヒーローになった2位の小坂。来シーズンはさらに上を目指してほしい
男子エリート表彰台。左から2位の小坂、優勝したパワーズ、3位の竹之内
男子エリート表彰台。左から2位の小坂、優勝したパワーズ、3位の竹之内

2日間で2万1000人が来場!

5年目となったシクロクロス東京は、C1からC4カテゴリーやマスターのレースなどが行われた1日目には6000人が来場した。2日目は朝から強い風と雨が降る中、午前中にはキッズたちが元気にシクロクロスを楽しんだ。そして90分のエンデューロはこの日最も厳しい天候の下で開催されたが、ゴールする頃には太陽が顔を出していた。

エリートレースも開催された2日目は、人気漫画『弱虫ペダル』とコラボしたイベントもあり、のべ1万5000人が来場。2日間で2万1000人が、お台場の浜辺でシクロクロスを満喫した。
 
2日目は朝から雨が降っていたが、キッズたちは元気に走っていた      
2日目は朝から雨が降っていたが、キッズたちは元気に走っていた      
エンデューロは悪天候でさらにキツくなった                         
エンデューロは悪天候でさらにキツくなった                         
表彰台に上がったエンデューロの勇者たちをたたえるために、空には太陽が戻ってきた
表彰台に上がったエンデューロの勇者たちをたたえるために、空には太陽が戻ってきた
女子のCL1は日本チャンピオンの坂口聖香(パナソニックレディース)が圧勝した
女子のCL1は日本チャンピオンの坂口聖香(パナソニックレディース)が圧勝した
スポンサーレースに参加していた主催者(チャンピオンシステム)の棈木亮二社長。お疲れさまでした!
スポンサーレースに参加していた主催者(チャンピオンシステム)の棈木亮二社長。お疲れさまでした!
第5回大会のコースマップ(http://www.cyclocrosstokyo.com)
第5回大会のコースマップ(http://www.cyclocrosstokyo.com)

砂の王者ビッグ・ベン、最後のレース!

 
シクロクロス東京が現役最後のレースになったベルギーのベン・ベルデン(Wカップ)。砂地獄のコクセイドで優勝したことがある砂の王者ベルデンは、シクロクロス東京の初代チャンピオンでもあり、お台場の砂浜は彼にふさわしい引退の地だった。そして日本のシクロクロスファンは『ビッグ・ベン』の最後の走りを堪能できて本当に幸運だった。

1975年生まれのベルデンは、すでに40歳。昨年野辺山で「来年の東京にも行くよ」とは聞いていたが、まさかそれが引退レースになるとは、直前までわからなかった。しかし、彼自身はちゃんと準備をしていて、友達にデザインしてもらった特別なジャージを用意して来ていた。

Facebook上に、シクロクロス東京はベルデン最後のレースだと書かれていたため、スタート前に確認すると、彼は首を縦にふった。1つ年下のスワン・ネイスも今シーズンで引退するのだから、ベルギーは2人のレジェンドを一度に失うことになる。

「たぶんね」と言うベルデンに「まだ引退しないで、もっと走ってよ」と懇願すると「じゃあ、もう1年走ろうかなあ」と言ってくれたのだが、すでに引退後の就職先も決めていて、その意志は固かった。

後半、小坂に抜かれてベルデンは引退レースを4位で終え、表彰台に上がることはできなかった。しかし、フィニッシュラインでは大勢の観客から差し出された手にタッチして、現役最後のゴールを楽しんでいた。
 
 

ベン・ベルデンにミニ・インタビュー

口ひげを生やしていたベルデンに「もう社長さんみたいだね」と、言ったら、ちょっと照れくさそうに笑って「ありがとう」と言っていた
口ひげを生やしていたベルデンに「もう社長さんみたいだね」と、言ったら、ちょっと照れくさそうに笑って「ありがとう」と言っていた
Q:現役最後のレースはどうだった?
「調子はとても良かった。このレースのためにトレーニングをたくさんしてきたから、素晴らしい仕事ができた。今日は楽しんで走れた。雨が止んでくれてよかったよ。それでレースをもっと楽しむことができた」

Q:今日は4位で、もう少しで表彰台だったね?
「序盤はほとんど前で一緒に走っていたが、林の中で引き離されてしまった。私は林が得意ではなく、そこでタイムを落としてしまったからだ。砂は得意でこのコースは好きだけど、林は苦手だから若い連中に付いて行けなかった。でも、とにかく楽しい1日を過ごせたよ」

Q:長い選手生活を終えた気持ちは?
「とても浮き沈みのある選手生活だったが、今はとても幸せだ。20年間プロ選手と過ごすことができて、それはとても長かったけれど、良いものだった」

Q:何故、故郷のベルギーではなく、日本のレースを引退に選んだの?
「もうベルギーのレースは走りたくないんだ(笑)彼らはあまりにも速すぎるから、私には走れないのさ。今日のレースと比べたら、ベルギーのほとんどのレースがずっと高速だ」

Q:引退後はどうするの?
「今のスポンサーであるベルギーの補給食メーカー『Wカップ』で働く。カリフォルニアにある米国支社の代表になるんだ。この後、ベルギーに帰って準備をして、4月に渡米する予定だ。今後もずっと自転車の世界にいるよ」

Q:また来日してくれる?
「そうできるといいね。リョージ(チャンピオンシステムの棈木亮二社長)は日本でWカップの仕事もしているから、また日本に来る機会があると思うよ」

Q:息子が2人いるけど、自転車をやっているの?
「ディーンは8歳で、ルイス・リーは6歳だ。彼らはBMXをやっていて、専用のパークで飛んだり跳ねたりしているけれど、レースはやっていない。まだ小さすぎるからね。最初の予定では金曜日まで日本に滞在するつもりだったが、火曜日のフライトに変更した。息子たちが恋しいのさ」

http://www.cyclocrosstokyo.com/