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若手に注目 2016ハンドメイドバイシクル展



今年も東京・竹橋の科学技術館でハンドメイドバイシクル展が開催された。出展社数は44と昨年から2社増えた。

業界では知らぬものなき名工から、若手ビルダーまでが一堂に会する年に1回のイベント。その中から初出展のビルダーにフォーカスしてお伝えする。

 
text&photo:ナカジ

マッキサイクルズ


サイクルデザイン専門学校の2年制コース一期生である植田真貴氏のブランド。卒業後1年間の修行を経て独立し滋賀に工房を構える。今回出展作品の目玉はディスクブレーキロード。「規格の変化にも柔軟に対応できるのがオーダーフレームの強み」と語る。
ディスクブレーキ台座はチェーンステーではなく、独自にデザインしたリヤエンドと一体となっている。これによってチェーンステーのしなりを妨げず、リヤエンドのねじれによってディスクブレーキキャリパーとローターが接触するのを防ぐのが狙いだ。


 

東京サイクルデザイン専門学校


ビルダーや自転車メカニックなど、自転車界で活躍する人材を育成している東京サイクルデザイン専門学校が初出展。3台のバイクを展示した。うち2台は2年生の作品。3年生の作品がサイクルモードなどショーで見ることはできたが、2年生の作品が見られるのはめずらしい。仕上がりもなかなかのもので、来場者に積極的に自分の作品を説明する学生の姿も見られた。


 

shin・服部製作所


国内の自転車問屋勤務を経て、ビルダーを志すべく渡米ユナイテッドバイシクルインスティチュートという2週間でバイク製作を教えてくれるスクールに行き、その後、サムライサイクルに師事し1年間の修行を経て帰国し独立。その後1年はフレーム製作の傍ら、自転車屋でメカニックとしても働いていたが、2年目はフレームのオーダーが増えたので、ビルダーに専念している。スチールフレームの修理も手掛ける。

バイクの種類はロードバイクからカーゴバイクまでなんでも対応。趣味性の高いものというよりも、ライフスタイルに寄り添うようなあまり飾らない、でもその人にフィットするバイク作りを心掛けている。


 

バカンスサイクル


自転車製作フリースペース「ビョブ」を立ち上げた菊地辰太氏が、自身のブランドとして独立。スタイリッシュなバイクを展示していた。ビョブで培った経験を活かして、ユーザーとの対話を大切にしている。

「ロードバイクはかくあるべし。という定石はあるし、大切。それらが持っている美しさはそれで魅力的。でもバカンスサイクルではもう少し自由なバイクを作りたいと思っています。私自身あまりジャンルにこだわらずに自転車と関わってきました。シングルスピードバイクでトレーラーを引いたりしていたこともあります。バカンスサイクルのスタイルは多くのオーナーの要望を実現していくなかで出来上がっていくのかなと思っています。大げさな表現になってしまいますが、次の世代のバイクを作っていけたらなと思っています」


 

ライフバイク


東京サイクルデザイン専門学校の2年制コースを卒業してライフバイクを開業。渋谷という立地は母校からも近く、現役学生が講義外で作業するのにも使われることがあるという。

一般のユーザーでもフレーム製造体験をすることができる。製造するフレームのジオメトリは、他社のフィッティングサービスで計測した自分のサイズに合ったバイクを作るもよし、今乗っているバイクで変えてみたい部分のジオメトリを変えるもよしだ。
展示車両も実際にユーザーが製作したもの。細かい仕様にこだわるというよりも、自分で乗るバイクを自分で作るという経験を楽しんでほしいと考えている。もちろん、走行の安全性能にかかわるパートの工程はサポートしてもらえる。フレームのブランドロゴも自分のオリジナルを入れることができる。完成までには6時間×8コマがスタンダードだ。


 

モドルキカクの美しいサイクルスタンド


ステンレス加工会社の技術を応用して作られるサイクルスタンド。ホイールのみで支持するタイプや、ハンドルもしくはトップチューブで支持するタイプなど4タイプを展開。


 

トークショーではケルビム・今野真一氏が登場


トークショー会場では50人限定のイベントが開かれた。今野製作所を率いる今野氏の回は立ち見が出るほど。フレームデザインにおいて重要なことについての持論が語られた。参加者からの質疑応答を頻繁に交えて進行され、トップビルダーと交流できる貴重な機会となった。


 

今野製作所ではシートチューブのないエアロトラックレーサーと、前三角をレイノルズ953ステンレス、リヤをクロモリとしたハイブリッドフレーム「スーパーレッジェーラ」が展示されていた。後者はとても細身のパイプを使用し、バックのしなやかさで走らせるキャラクター。シートクランプは、シートステーが直接取り付けられるタイプを採用している。これは競輪選手から評判がいいタイプなのだという。

そのほかのビルダーたちのレポートは2月20日発売のサイクルスポーツ4月号に掲載予定!