トピックス

パイオニア・ペダリングモニターシステム 徹底解剖&使いこなしのヒント 第1回

パイオニアペダリングモニターは、単なるパワーメーターではない。もちろんパワーメーターとしての機能もあるが、2015年現在、実走行中にペダリングのベクトルをリアルタイムに表示することができる唯一のシステムだからだ。この連載では、ペダリングモニターシステムを愛用するライターアサノが、ペダリングモニターシステムの魅力や使いこなし方を紹介する。第1回は自転車に装着するペダリングモニターシステムとサイクルコンピューターの紹介から。
text:浅野真則 photo:吉田悠太

「ペダリング効率を高めれば強くなれる」と感じ、導入

僕がパイオニアペダリングモニターを使い始めたのは、1年ほど前のことだ。それ以前に雑誌のインプレッション取材で1週間ほど借りて使い、従来のパワーメーターにはない「ペダリングを可視化できる」という特徴にひかれ、自費で購入するに至ったのだった。

自転車ライターとして、さまざまなアイテムをインプレ取材と称して使わせていただく機会があるが、気に入ったものはのちのち自分でも購入してしまうことが多い。だから、自分が使っているアイテムは間違いなく使ってみて気に入ったものばかりで、ペダリングモニターもそういうアイテムのひとつだ。


ここで改めてパイオニアペダリングモニターシステムとは何かを簡単におさらいしよう。

ペダリングモニターシステムは、左右のクランクに取り付けられたペダリングモニターセンサー、GPS内蔵のサイクルコンピューター、そして解析ソフトであるシクロスフィアの3つからなる。ペダリングモニターセンサー、サイクルコンピューターをバイクに装着すれば、スピードやケイデンスはもちろん、走行中のパワー、パワーの左右バランスに加え、ペダリング時にペダルにかかる力の大きさと向き(ベクトル)もリアルタイムに表示できる。この「ペダリングの可視化」こそがペダリングモニターシステム最大の特徴であり、魅力でもある。

また、ANT+規格のスピードセンサーや心拍センサーにも対応しており、これらを組み合わせることでより正確なスピードや走行距離、心拍数も測ることが可能だ。なお、スピード自体はGPSを使ってセンサーなしでも計測することができるので、センサーの電池が切れてもスピードや走行距離などのログは残せるので安心だ。

なお、センサーの電池は、左右ともコインタイプのリチウム電池CR2032。コンビニや家電量販店などですぐ入手できる電池を使っていて、出先でも簡単に交換できる点が非常にユーザーフレンドリーだ。ANT+スピードセンサーの多くもこのタイプの電池を使っているので、小銭入れなどに予備の電池を携行しておくと、走行中に電池が切れても安心だ。

ちなみに、サイクルコンピューターは充電池式。パソコンのUSBポートに接続すれば自動的に充電してくれるので、こまめにログを取るようにすれば、1日中走るなどよほど長時間走り続けない限りまず電池切れの心配はないだろう。

 

ペダリングを丸裸にし、パワーの質さえ分かる高機能なシステム

パイオニアペダリングモニターシステム最大の特徴は、先に述べたとおり、自分のペダリングをベクトルという形でリアルタイムで可視化できる点にある。それも研究施設のような大がかりな装置を使ってではなく、自分のバイクで実走しながらできるという点がポイントだ。

自分のペダリングのベクトルが分かると、同じ踏み込みでも効率のよい踏み込み方とそうでない踏み込み方があることが分かる。クランクに対して常に直角方向、すなわち、クランクを回すという円運動では常に接線方向に力を加えるのが最も効率が高いのだ。効率が分かると言うことは、自分のペダリングがどれぐらい有効に作用し、どのぐらいのロスがあるのかが分かるということでもある。すなわち、自分のパワーがどのぐらい効率よく自転車の推進力になっているかが分かるのだ。

ここで従来のパワーメーターとペダリングモニターを比較してみよう。

たとえば両者で同じ300Wというパワーが表示されていたとする。他社製品はただ出力が分かるだけのものがほとんどだ。しかし、ペダリングモニターはその300Wが効率のよいペダリングによって生み出されたのか、多くのロスを生じた結果生まれたのかまで分析できる。つまりパワーの“質”が分かるのだ。

ペダリングモニターの企画のひとりで、パイオニア株式会社の根井靖雄さんは、その特徴を次のように表現する。

「ペダリングモニターはただのパワーメーターではありません。他社のパワーメーターが体重しか量れない体重計だとしたら、ペダリングモニターは体重だけでなく、筋肉量や骨量、体脂肪量まで分かる高度な体組成計というイメージです」

 

ペダリングモニターセンサーは、片側ずつパワーメーターとしても使用可能

ペダリングモニターセンサーは、左右のセンサーをセットで使うことで初めて両脚のペダリングの解析が可能になるが、サイクルコンピューターを最新のファームウェアにアップデートすることで、片方のセンサーだけでもパワーメーターとして使用できるようになった。すなわち、左右のセンサーを持っていれば、従来通り1台のペダリングモニターとしても、シンプルなパワーメーターとして2台のバイクに分けて使うこともできる。これはパイオニアペダリングモニターシステムの強みのひとつだ。

とはいえ、リアルタイムにペダリング時のペダルにかかる力の向きと大きさが分かるのがペダリングモニターシステムのオンリーワンのメリット。この機能を活用してこそ、システムとして本領を発揮するといっても過言ではないので、ペダリングモニターは左右セットで使うことがおすすめだ。
 

表示項目が充実していて見やすいサイクルコンピューター

SGX-CA500
SGX-CA500
ペダリングモニターシステムの中で、僕が気に入っているアイテムのひとつがサイクルコンピューターだ。サイクルコンピュータは2種類あって、カラー液晶のSGX-CA900とモノクロ液晶ながら小型軽量のSGX-CA500があり、僕はモノクロ液晶の方を使っている。いずれのタイプも大型のタッチパネル式ディスプレイを搭載し、見やすく、直感的に操作できるのが特徴だ。

タイマーのスタートやストップ、ラップタイマーの操作はサイクルコンピューター側面(CA900は本体正面)のボタンで操作するが、画面の切り替えなどはタッチパネルをスワイプしたり長押ししたりすることで行う。

これからの季節にうれしいのは、フルフィンガーグローブをはめたままでも確実に操作できること。本体横のスタート・ラップの両ボタンはしっかり突起があるのでフルフィンガーグローブ着用時もボタンの位置が分かりやすいし、画面の操作もフルフィンガーグローブをはめたままスムーズに行えるので、走行中にも操作がしやすい。トレーニングで走行中に操作することが多い僕にとって、ストレスなく使えることは本当にありがたい。

さらに僕が気に入っている点がある。それは表示項目の多さと組み合わせの自由度の高さだ。モノクロ画面のSGX-CA500の場合、1ページあたり最大9つの項目が表示可能で、最大6ページまで増やせる。

表示項目も実にバリエーション豊富だ。例えばパワーなら、現在のパワーや平均パワーなど多彩な項目があり、左右のクランクの合算でも片方ずつでも表示できる。さらにトレーニングが身体に与えるストレスを数値化するTSSや、運動強度を示すIFなど、最新のパワートレーニングで重視されている指標もサイクルコンピューターのアップデートで表示可能になった。こうした細かなアップデートを重ね、機能をどんどん充実させているのもペダリングモニターシステムの特徴と言えるだろう。

もちろんペダリング効率やペダリングロス、さらには自分のペダリングのベクトル表示もリアルタイムで可能だ。ペダリングモニターシステムは、単なるペダリングの可視化を実現した高価なおもちゃではなく、パワートレーニングを本格的に導入している選手が本気でトレーニングに活用できる本格的トレーニング機器なのだ。

 

ディスプレイの表示方法も十人十色

問題はこれらの高度な機能をどう使うかだ。

表示できる項目の多いと、あれもこれも表示したくなるが、あまり細かくしすぎると視認性がやや落ちてしまうという問題がある。そこで僕は、6つある画面のうち、1つはペダリングをリアルタイムで解析するための画面、次のページに走行中にメインで使う画面、さらに次のページにインターバルなどのメニューで使う最小限の要素が表示される画面を作っている。

 

1ページ目は、左右のペダリング時のベクトルをメインに、ケイデンスや左右バランス、左右の合算のパワーなどを表示し、主にペダリング効率改善のためのスキルアップトレーニング時に使っている。

 

2ページ目は、練習場所への移動時など、日常的に表示する画面。現在の時間が分かるように時計を表示できるようにし、後はワークアウト全体の走行時間、リアルタイムのパワーとスピード、ケイデンス、走行距離を表示している。

 

3ページ目は、インターバルやメニュー走など、練習中に表示する画面。
表示項目をラップタイムとラップの距離、リアルタイムのパワー、スピード、ケイデンスだけに厳選し、必要な情報の視認性を高めている。

 

4ページ目以降はテーマを持ってページを作っていて、ライド中のパワーやスピード、ケイデンスの最高値や平均値が一目で分かるページ(写真)、仕事量やTSS、IFといったパワートレーニングに関する項目をひとまとめにしたページなどを作っている。

もちろん、これはトレーニング目線で自分が使いやすいと思って作った一例にすぎない。自分にとってこれがベストだと思えるレイアウトがあれば、それが自分にとってのベストなのだ。大切なのは、自分にとってどんな情報が必要なのかを取捨選択し、それを見やすく並べることだと思う。
 


ここまで、ペダリングモニターシステムのうち、主に自転車に搭載するサイクルコンピューターとペダリングモニターセンサーについてお話ししてきた。

次回はシステムのもうひとつの大きな柱であるシクロスフィアについて紹介する。第2回はこちら

 
浅野真則●あさの・まさのり プロフィール
「サイクルスポーツ」をはじめとする自転車専門誌やWEBサイトなどで活動する自転車ライター。実業団登録選手としてJエリートツアーに参戦中で、2014年は実業団レースで優勝1回、入賞1回を記録。5年ほど前から日々パワーメーターを活用しながら精力的にトレーニングライドを行っている。ペダリングモニターシステム使用歴は1年ほどで、もっと使いこなすために日々勉強中だ。

 

パイオニア・ペダリングセミナーのお知らせ

パイオニアは12月5日に同社でペダリングセミナー「スピードアップのためのペダリング技術と筋肉の使い方」を開く。セミナーの詳細は下記の通り。

■日時
第1回 11:00〜13:00
第2回 14:00〜16:00

■募集人数:各20人
■場所:パイオニア株式会社 1Fプレゼンルーム(川崎市幸区新小倉1-1)
■講師:自転車プロコーチ 須田晋太郎氏(株式会社ウォークライド)
■参加料:5,400円(税込)
■応募方法:下記サイトから申し込む(セミナー詳細も下記サイト参照)
http://walkride.jp/archives/17294/

 

問い合わせ先