安井行生のロードバイク徹底評論第7回 LOOK 795LIGHT vol.1

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安井ルック・795ライト1

675は予兆にすぎなかったのか。「これがルックの新型フラッグシップ?」 コンセプトモデルのスケッチがそのまま現実世界に飛び出てきたようなその姿に誰もが驚いた。695のオーナーである安井は、そんな795に何を感じ、何を見たのか。泣く子も黙る2016モデルの目玉、ルック・795の美点欠点を好き勝手に書き散らかす徹底評論第7回。

 

5年ぶりの衝撃

安井ルック・795ライト1

近年のハイエンドロードバイクは評価も選択も難しい存在になってしまった。目的不明なトータルインテグレーション。一般ライダーの速度域では効果の有無が判断不可能なエアロ化。フルサス乗れば?と言いたくなるほどの快適性。それに伴ってどんどん高騰するフレーム価格。かと思えばバランスこそが大切だという人もいる。ディスクブレーキ化の波も含め、本当に必要なものとそうでないものが混在しており、それに対して作っている側も買う側もメディアも冷静な判断を下せていない。そんな印象だ。そのカオスをさらにかき混ぜているのが、今回取り上げる795である。

795は、ルックが5年ぶりに刷新したハイエンドモデルである。695がそうだったように、写真がリークされた途端に世のロード乗りの話題を独占した。無用なモデルチェンジを行なわず、モデルスパンが長いことで知られるルックの旗艦の交代は、その内容がどうであれ、破壊力がある。なお、795の前身695は万能モデルとして2016シーズンも継続ラインナップされる。来年で6年目となる息の長いモデルである。そういえば595がデビューしたときも585は残されていたし、585が発売されたときも481は残っていた。他社のようにトップモデルを完全に入れ替えてしまうのではなく、従来のトップモデルを熟成させながら新しいものを継ぎ足していく、というのがルックの考え方のようだ。

695同様にインテグレーテッドシートポスト、ルックが言うところのEポストを採用する795だが、日本の代理店はシートチューブを短めにカットしたXSサイズの795の試乗車を用意してくれた。ならば乗って何かを言わねばならない。タイミングがいいことに、795を借りた翌週に日本の代理店担当者がフランスでのディストリビューターミーティングに参加するという。これはチャンスと795に関する質問をいくつか託し、ルック本社の開発担当者から回答を得ることができた。その質疑応答を交えながら、新しいルックのフラッグシップを解剖していくことにしよう。

 

ついにエアロロードに

安井ルック・795ライト1
まずは、そのコンセプトをはっきりとさせておく。
「795はエアロロードのフラッグシップモデルであり、あくまでレーシングフレームです。チェーンステーの剛性を695比で18%高めてパワー伝達効率を向上させていますが、トップチューブとシートステー、シートチューブの柔軟性を高めたことで快適性も向上しており、一般レベルのサイクリストでも795の高性能の恩恵は受諾できるはずです」
後述するスタイリングを含め、ラグジュアリー性の高いフレームだととらえられることも多いようだが、作り手の意識はあくまで「空力性能を重視したレーシングフレーム」というものだったのだ。
 
そう、ルックの旗艦がついにエアロロードになったのである。ここで、空気抵抗の主な発生源は体でありフレームの空気抵抗を減らしたところでそれほど意味がないのでは、というお馴染みの質問をぶつけてみる。
「スピードを追及するレーシングフレームにおいて、空気抵抗削減は重要なテーマです。とはいえ、他社のようにフレーム単体での空気抵抗削減値を発表しても意味がありません。我々はライダーが乗った状態で、しかも床が動きライダーがペダリングしている状態で計測できる風洞実験室を使用しながら、空気抵抗削減をツメました。だから他社の様な誇大数値ではありません。そのような正確な計測を行なうため、ルック社はモータースポーツ界で働いていた空力エンジニアを雇用しました。結果、身長180cm・体重70kgのライダーが時速40km・300wで走っているとき、795エアロライトは695に対して8.7%(約26w)、795ライトは695に対して5.7%(約17w)のパワーセーブに成功しました。高速走行時にこれだけの抵抗削減は大きな意味を持ちます」

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