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クリテリウム・デュ・ドーフィネ2015

ツールの調整レースとなるクリテリウム・デュ・ドーフィネはフルームの逆転優勝で幕を閉じた。彼は2013年にツールで優勝したときにもこのレースで優勝している

 

Photo: Graham Watson

フルームが劇的な逆転総合優勝!

1カ月後に開幕するツール・ド・フランスの調整レースとなるクリテリウム・デュ・ドーフィネ(UCIワールドツアー)が、フランス南西部で開催され、今年も最終日に総合首位が逆転するというドラマティックな結末を迎えた。

 

昨年は若いアンドリュー・タランスキー(キャノンデール・ガーミン)が、スペインの王者アルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)を出し抜いてサプライズな勝利を収めたのだが、今年は役者がちがっていた。

 

ツールで2度目の総合優勝を目指す英国のクリストファー・フルーム(チームスカイ)が逆転優勝をやってのけ、2度目の総合優勝を手中に収めたのだ。彼はドーフィネで初めて総合優勝した2013年に、ツールでも総合優勝している。

 

今年のドーフィネには、5月末にジロ・デ・イタリアで優勝したコンタドールは参加しなかったが、フルームの他にビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)、アレハンドロ・バルベルデ(モビスター)、ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)と言ったビッグネームたちが参加していた。

 

レースは総合首位が何度も入れ替わり、目が離せない展開になった。初日はフルームのチームメートで英国チャンピオンのピーター・ケンユック(チームスカイ)がたった2秒差で逃げ切って区間優勝し、最初のマイヨ・ジョーヌを獲得した。

 

ところがチームスカイは第3ステージの24.5kmのチームタイムトライアルで、区間優勝した米国のBMCレーシングチームよりも35秒遅い区間5位という結果に終わり、総合首位の座をローハン・デニス(BMC)に明け渡すことになってしまった。そしてこの時点で、フルームは総合で35秒のタイム差を背負ったのだ。

 

チームタイムトライアル終了後、デニスと同タイムで総合2位に付けていた米国のティージェイ・バンガーデレン(BMC)は、今年最初の頂上ゴール区間だった第5ステージで、遅れたデニスからマイヨ・ジョーヌを引き継いだ。しかもこの日は、ゴールのプラ・ルー山でアタックしたフルームをしっかりマークし、逆にゴールでは4秒差を付ける走りを見せた。

 

しかし、マイヨ・ジョーヌを獲得した26歳のバンガーデレンは冷静にレースを分析していた。「まだ残り3ステージあり、毎日区間優勝者は10秒のボーナスタイムを得られる。それは重要な勝因になる。差をつけることも可能だ」と、彼は語っていたのだが、その予想は的中することになった。


ニーバリの奇襲

土砂降りのスタートになった第6ステージは、いくつもの丘越えがありはするものの、後半に標高1254メートルでカテゴリー1の峠を越えたあとは、カテゴリー3の頂上にゴールするという、決して厳しい山岳ステージではなかった。

 

ところがこの日、雨にもかかわらずイタリアチャンピオンのニーバリが奇襲に出た。レースは序盤から激しく動く展開になり、ニーバリは67.5km地点のクロワ・オート峠(カテゴリー2)を越えた後に集団からアタックし、あとから合流したルイ・コスタ(ランプレ・メリダ)らとともに先行したのだ。

 

ゴールまで残り1.4kmで独走を開始したニーバリは、ゴール手前でコスタに抜かれて区間優勝こそ逃したが、主要選手たちに2分以上のタイム差を付け、総合首位の座を獲得した。

 

しかしニーバリは「マイヨ・ジョーヌよりも区間優勝を狙っていた」と、記者会見で語っていたように、ドーフィネの総合優勝には関心がなかった。「数年前にドーフィネではイタリア人がまだ勝っていないことを知った。それができればすばらしいが、僕は地に足をつけて、日々走る方がいいよ」と、彼は言っていた。

 

マイヨ・ジョーヌを着たニーバリは、翌日のステージではゴールへと向かう最後の上り坂が始まる前には、もうメイングループから脱落していた。そしてここで仕掛けたのはフルームだった。彼は7kmつづいた最後のベテックス山の残り3.6kmでメイングループからアタックした。

 

バンガーデレンはその最初のアタックには付いて行けたが、フルームが残り1.6kmでもう一度アタックしたときには為す術がなかった。自分のリズムで走り続ければ、追いつくことができるかもしれないとバンガーデレンは考えてたが、勝利へと向かうフルームのスピードは決して落ちることはなかったのだ。

 

最終日の山岳ステージを残して、バンガーデレンはふたたびマイヨ・ジョーヌにソデを通すことができたが、総合2位のフルームとのタイム差はたった18秒しかなかった。


勝利へのアタック!

最後の闘いの場となった標高1553メートルでカテゴリー1のモダーヌ・バルフレジュス山で、フルームは落ち着いて自分のレースをやってのけた。彼がゴールまで残り2.5kmでアタックしたとき、マイヨ・ジョーヌのバンガーデレンは必死で食らい付こうとしたのだが、フルームの背中は遠のく一方だった。

 

フルームは最後の2ステージを制して今年のドーフィネの総合優勝を手中に収めてしまった。ボーナスタイム制度がなければ、バンガーデレンが総合優勝していただろうと計算する意地悪な輩もいるが、フルームの強さは認めざるをえないだろう。

 

昨年は落車のケガで途中リタイアという結果に終わったツール・ド・フランスのタイトルをふたたび手中に収めるために、フルームは帰ってきたのだ。


■逆転で総合優勝したフルームのコメント「信じられないよ。今日はうまくいくと期待していなかった。昨日のあとで脚は疲れていた。チームメートたちは苦しんだが、マイヨ・ジョーヌが見えるところにまで到達するために、全員すべての力を出し切った」

 

「イアン・スタナードが100km集団の先頭を1人で引いた。そして他のチームメートたちは、僕がアタックできる最後の瞬間まですばらしい働きをしてくれた。最後はすべての秒をカウントした。ゴールまでの道のりで僕は興奮していた。これはまさに自転車レースだ」

 

「チームトライアルでちょっと後退し、それを取り戻さなければならなかった。こういう風に仕上げられたのは驚異的だった。残りの人生でずっと記憶に残る1日になるだろう。ドーフィネは僕にとって特別なレースだ。このレースはチーム作りの手助けになる」

 

「ツール・ド・フランスが最大の目標だ。チームの準備はできている。僕もほぼ準備はできている。もう3週間もない。楽しみにしているよ」


クリテリウム・デュ・ドーフィネ2015 個人総合最終成績

1 クリストファー・フルーム(チームスカイ/英国)30時間59分02秒

2 ティージェイ・バンガーデレン(BMC/米国)+10秒

3 ルイ・コスタ(ランプレ・メリダ/ポルトガル)+16秒

4 ベニャト・インチャウスティ(モビスター/スペイン)+1分21秒

5 サイモン・イエーツ(オリカ・グリーンエッジ/英国)+1分33秒

6 ロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル/フランス)+2分05秒

7 ダニエル・マーティン(キャノンデール・ガーミン/アイルランド)+2分52秒

8 ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)+3分06秒

9 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+3分12秒

10 アンドリュー・タランスキー(キャノンデール・ガーミン/米国)+4分17秒

[各ステージの優勝者]

■第1ステージ:ピーター・ケンユック(チームスカイ/英国)

■第2ステージ:ナセル・ブアニ(コフィディス/フランス)

■第3ステージ:BMCレーシングチーム(米国)

■第4ステージ:ナセル・ブアニ(コフィディス/フランス)

■第5ステージ:ロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル/フランス)

■第6ステージ:ルイ・コスタ(ランプレ・メリダ/ポルトガル)

■第7ステージ:クリストファー・フルーム(チームスカイ/英国)

■第8ステージ:クリストファー・フルーム(チームスカイ/英国)