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TOJ参戦中のNIPPO・ヴィーニファンティーニに密着!【堺】

UCIプロコンチネンタルチームに昇格して初めて参加したツアー・オブ・ジャパンを、NIPPO・ヴィーニファンティーニはどう闘ったか。
 
Photo: Hideaki Takagi / cyclesports.jp

もうひとつのジロ!

1985年に日本鋪道株式会社の実業団登録クラブ『日本鋪道レーシングチーム』として創始したNIPPO・ヴィーニファンティーニは、今シーズンUCIコンチネンタルチーム(ディビジョン3)から、UCIプロコンチネンタルチーム(ディビジョン2)に昇格した。
 
トップディビジョンであるUCIワールドチームにつぐステータスを持つUCIプロコンチネンタルチームになるということは、多くの意味がある。その1つは、チームがより大きなレースからも招待を受けられるようになるということだ。
 
NIPPO・ヴィーニファンティーニは今季、UCIワールドツアーのレースにも招待され、現在は3大ツアーの1つであるジロ・デ・イタリアに参戦中だ。そして時を同じくして、チームは日本最大のステージレースであるツアー・オブ・ジャパン(アジアツアー2.1)に乗り込んできた。
 
現在はイタリア登録ではあるが、日本とイタリアがタッグを組んだNIPPO・ヴィーニファンティーニにとって、ツアー・オブ・ジャパンはグランツールのジロと同じくらい重要なレースと言っても過言ではない。
 
それはチームを率いる大門宏監督が「ジロのメンバーを優先して選んだつもりはなく、むしろ人数合わせはジロでやった印象が強い。ジロに選ばれた7、8、9番目の選手より、TOJのメンバーの方が個性が強く、一人一人が勝利を目指せるメンバーだ」と語ったコメントからもうかがえる。
■TOJを闘うNIPPO・ヴィーニファンティーニの6人のメンバー。左から山本元喜、アントニオ・ニーバリ(イタリア)、ニコラス・マリーニ(イタリア)、マッティア・ポッツォ(イタリア)、黒枝士揮、ディディエール・チャパッロ(コロンビア)
ツアー・オブ・ジャパンでチームのキャプテンをつとめるのは、26歳のマッティア・ポッツォだ。2013年にヴィーニファンティーニ・セッレイタリアの一員としてこのレースに参戦していて、その経験を活かして今回はチームをまとめていく。
 
そして今回、総合成績でエースをつとめるのは、シーズン途中からチームに加入したコロンビアのディディエール・チャパッロだ。彼は現在27歳で、2013年には母国のトップチーム、コロンビア・コルデポルテスに所属していたのだが、感染症の影響で走れず、昨年はアマチュアチームに戻って活動していた。
 
NIPPO・ヴィーニファンティーニから巣立ち、UCIワールドチームのトレックファクトリーレーシングで活躍しているフリアン・アレドンドの紹介で、今年2月下旬にチームのテストを受けたチャパッロは、すべての検査に合格し、3月下旬にはチームの一員になった。
 
しかし、コロンビア人が常にぶつかるビザの問題があり、彼は3月下旬にイタリアで開催されたセッティマーナ・コッピ&バルタリ(ヨーロッパツアー2.1)に出場することができなかった。
 
その後、4月下旬のジロ・デル・アッペンニーノ(ヨーロッパツアー1.1)でチームデビューを果たしたのだが、同じ問題でツアー・オブ・ターキー(ヨーロッパツアー2.HC)にも出られず、ジロの出場選考からは外れてしまった。
 
大門監督が「今回のメンバーで富士が走れる唯一の選手」と評価するクライマーのチャパッロが、どんな走りを魅せてくれるのか楽しみだ。彼自身も、ここで結果を出すことが今後の自分自身の活動に大きく影響することは理解しているだろう。
 
スプリンターステージで区間優勝を狙うのは、23歳の黒枝士揮と21歳のニコラス・マリーニ(イタリア)だ。黒枝はベルギーで北のクラシックを経験した後、厳しいツアー・オブ・ターキーを完走し、日本へと戻ってきた。そこで得た経験が、TOJで奮起するきっかけになることを期待されている。
 
21歳のマリーニはネオプロだが、4月にベルギーで開催されたシュヘルデプレイス(ヨーロッパツアー1.HC)で、UCIワールドチームの強豪勢と最後のゴールスプリントを競って7位に入った実力者だ。大門監督からは「爆発力のある選手」と評価され、初日のプロローグでも期待されていた。
 
アタッカーであるキャプテンのポッツォとともに逃げが期待されているのが山本元喜だ。ヨーロッパのトップレースで集団から抜け出して逃げを決めるのは容易なことではないが、彼は4月のツアー・オブ・ターキーで、ついに逃げを成功させた。
 
1年以上挑戦をつづけて得られた成功は、山本に大きな自信を与えたはずだ。TOJでは「ただ逃げるのではなく、勝つために逃げたい」と言う彼の挑戦は、まずは5月19日に開催されるいなべでの新ステージになる。
 
そしてもう一人、TOJのメンバーには3大ツアーのすべてで総合優勝しているビンチェンツォ・ニーバリを兄に持つ22歳のアントニオ・ニーバリが入っている。上りに強い選手ではあるが、今季初めてUCIコンチネンタルチームに加入した選手で、大門監督は「2年くらい走らせてみなければわからない」と、慎重だ。
 
とにかく、すべての選手に結果を出すことが求められているのがNIPPO・ヴィーニファンティーニのTOJでの布陣だ。「このレースが成長のきっかけになってほしい。自分には何ができるのか、どこが弱いのかを見極めてほしい。そして結果を残し、とにかく自信をつけてほしい」と、大門監督は開幕前夜に熱く語っていた。

前哨戦のクリテリウムでマリーニが優勝!

晴天に恵まれた大阪府堺市でのツアー・オブ・ジャパン初日。日本でもTV中継されているジロ・デ・イタリアに出場中ということもあって、例年よりも多くのレースファンがUCIプロコンチネンタルチームのNIPPO・ヴィーニファンティーニに注目していた。
 
そんな雰囲気の中、午前中に開催された前哨戦の堺国際クリテリウム(2.7km×10周)で、期待されていたネオプロのマリーニが前年度優勝者のニッコロ・ボニファツィオ(ランプレ・メリダ)をゴールスプリントで下し、みごと優勝を決めたのだ。
 
堺国際クリテリウムはUCI公認レースではないが、マリーニにとってはプロになって初めての勝利であり、チームにとっても今季初めての勝利だった。
 
スタート前、大門監督は「誰も逃してはダメだ。スピードを落とすな。チャパッロとニバリは8周目までチームをアシストし、最後の2周はポッツォ、黒枝、マリーニで位置取りして勝負をする」という話を選手たちにしていて、まったく予定通りのレースをすることができたわけだ。
 
「ペースを作らないと落車の原因になる。だからランプレが主導権を握り、我々がそれを助ける形で周回を重ね、最後は強いヤツで勝負をした。勝ててよかった。UCIレースではないが、手を抜いたレースではなかった」と、監督は語っている。
マリーニ自身は表彰式でのインタビューで「とてもスピードが速いレースだった。僕たちとランプレが働いてスプリントになり、ボニファツィオを打ち負かして勝つことができた。僕はよみがえることができたし、チームのスポンサーであるNIPPOのためにもここで勝ててうれしいよ」と語り、スポンサーへの感謝を付け加えることを忘れなかった。
 
チームのもう1人のスプリンターである黒枝は、日本人として最高位の6位に入ることができた。しかし、彼は最終コーナーでブレーキをかけてしまったことを悔やんでいた。
 
「実は4月のトレーニング合宿で、マリーニと走っている時に同じ右コーナーで落車してしまい、それがトラウマになっていて…」と、残念そうに語っていた黒枝。その克服が、ひとつの課題になりそうだ。
 
 
■第5回堺国際クリテリウム結果(2.7km×10周)
1 ニコラス・マリーニ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ/イタリア)34分56秒
2 ニッコロ・ボニファツィオ(ランプレ・メリダ/イタリア)
3 ブレントン・ジョーンズ(ドラパック/オーストラリア)
4 アンドレア・パリーニ(スカイダイブドバイ/イタリア)
5 ルカ・ピーベルニック(ランプレ・メリダ/スロベニア)
6 黒枝士揮(NIPPO・ヴィーニファンティーニ/日本)
7 野中竜馬(キナンサイクリングチーム/日本)
8 福田真平(愛三工業レーシングチーム/日本)
9 ベンハミン・プラデス(マトリックスパワータグ/スペイン)+3秒
10 小橋勇利(日本ナショナルチーム)+3秒

不発に終わった第1ステージ

午後に行なわれたツアー・オブ・ジャパン本戦では、大門監督が好成績を期待していたマリーニは不発に終わった。第1ステージは2.65kmという短い個人タイムトライアルだったが、彼は9秒遅れの33位で終わっている。
 
しかし、大門監督は「チームでこのステージを狙えるのはマリーニだけだった。ただ不発だっとというだけのこと。本人もスタートしてすぐに脚が動かなかったと言っていた。2位や3位だったら残念だったが、かすりもしなかったので引きずるものは何もない」と、語っている。
 
「このステージは区間優勝を決めるだけのもので、総合には関係ない。マリーニはクリテリウムでいいスプリントができていたので、美濃や東京には期待したい。堺から美濃まではステージで、勝ったか負けたかというだけ。総合は気にしない。総合を意識するのは飯田からだ」
 
マリーニが第1ステージでいい結果を出せなかったのは、午前中のステージで集中力を使いきってしまい、午後は集中できなかったのかもしれないと大門監督は分析している。
 
「TTはUCIレースだったが、ロードレース(クリテリウム)で勝てたことの方がよかったと思う。逆にそれで集中力がなくなってしまったのかもしれない。スプリンターにはよくあること。本当は午後のレースの方が大事だったが、ボクも抑えて行けとは一切言わなかった。本当に勝つつもりで臨めという話をしていた」
 
スプリンターのマリーニに対する大門監督の期待は大きい。監督は以下のような話もしてくれた。
 
「スプリンターというものは、勝たないと気持ちが良くならないもの。上りの選手にはそういうことはないが、スプリンターは勝つということが大事。勝てばもっと大きなレースでも勝てるようになる」
 
「これまでいろいろなスプリンターと付き合ってきたが、勝てないスプリンターはカテゴリーを落としたレースで勝てばいい。そうしたら元気になって、上のレースでも勝てるようになる。スプリンターならそれができる。たとえばスプリンターはTOJに来て勝てれば、ツール・ド・フランスでも勝てるようになるものだ」
 
「マリーニは生粋のスプリンターなので、課題はたくさんある。去年まではまだアマチュアの選手で、彼に試練を与えるようなレースには連れて行ってもらっていない。アマチュアなら平坦のレースで、マリーニを勝たせるアシストだけという布陣ができるが、プロのレースではそういうわけにはいかない。距離も伸びるし、マリーニのためだけに走るわけにもいかない」
 
「マリーニは全然上れないから、ツアー・オブ・ターキーでは毎日グルペットでえらい苦労していた。彼はこれからこの世界でやっていくために、上りもそこそこ克服しなければならない。彼にとっては厳しい1年目だ。そういう意味で、今日は午前中爆発して、ボニファッツィオのような選手に勝ったということは、すごくいいことだったと思う」
 
非公式ながら、まずは初日に1勝を上げたNIPPO・ヴィーニファンティーニ。チームの雰囲気もとてもいい。次はTOJ本戦での1勝目が期待される。
 
 
■ツアー・オブ・ジャパン 第1ステージ(堺)結果
1 ブレントン・ジョーンズ(ドラパック/オーストラリア)3分19秒
2 ニール・バンデルプルーグ(アヴァンティ/オーストラリア)
3 トム・デービソン(アヴァンティ/ニュージーランド)+1秒

25 マッティア・ポッツォ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ/イタリア)+8秒
33 ニコラス・マリーニ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ/イタリア)+9秒
62 山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ/日本)+15秒
80 ディディエール・チャパッロ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ/コロンビア)+18秒
91 アントニオ・ニーバリ(イタリア)+21秒
93 黒枝士揮(NIPPO・ヴィーニファンティーニ/日本)+21秒
(http://www.toj.co.jp/2015/)
 
 
今年は第1ステージのスタート前にチームプレゼンテーションが行われた。バックステージでチームメートたちと順番を待つ山本選手。いい笑顔!






「休める時には休みなさい」という大門監督のアドバイスを受けて、レースの合間にチームメートたちと木陰でのんびりする黒枝選手。まだまだ勉強することはたくさんある





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