安井行生のロードバイク徹底評論 第6回 YONEX CARBONEX vol.8

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安井カーボネックス8

大手スポーツ用品メーカー、ヨネックスがロードフレームを作り始めた。このロードバイク界に異業種参入型ブランドがまた一つ誕生したのである。第一弾は650gの超軽量カーボンフレーム、カーボネックス。設計担当者へのインタビューを交えつつ、この純国産フレームの真実に迫る。

 

「軽さ」と「速さ」を両立させたらこうなった

安井カーボネックス8

軽量化を重視したとのことだが、ロードフレームは軽くて硬ければいいと考えているのか、それともしなりが必要だと考えて設計に織り込んでいるのか。
「ロードバイクで正しいのは“速く走れること”です。軽くて硬ければ速く走ることができるのかは、我々も正解かどうかわかっていませんが、軽いことを大前提とした中で最も速く走れるようなフレームを作った結果です」
 
走ると絶妙なしなやかさが印象的だが、『ここがこうしなるべきだ』というようなことを設計に織り込んだわけではない?
「そうですね。硬いフレームも柔らかいフレームも作りました。その中で色々と試してもらい、ここがベストだろうというものを製品としました」
 
試作したフレームの数は3ケタを超えたという。ヨネックスは本気なのだ。

 

これは偶然なのか?

我々はよく「この絶妙なしなりが…」「気持ちのいい剛性感が…」などと言うのだが、実はフレームの剛性“感”について、作り手側は何も考えていないことも多い。海外メーカーのエンジニアに「しなりはどう考えているのか?」と質問すると、よくぞ聞いてくれた!と喜んでくれるのはごく一部。たいていは困った顔をされてしまう。
よく、しなりが推進力に結び付いているようなフレームに出会うことがあるが、それは偶然の産物にすぎないことが多いというわけだ。剛性を確保しつつ、軽さを追求していった結果として、ガチガチではなくちょうどいい塩梅の剛性レベルになり、それが前述のような走りにつながる・・・という具合に。このヨネックスも、そのパターンなのだろう。
 
では、このカーボネックスの性能は完全なる偶然なのか。そうとも思えないのだ。話を聞いていくうちに、生産地が一つの理由ではないかと思うに至った。
 
カーボネックスの特徴の一つに、純粋なメイド・イン・ジャパンであることが挙げられる。カーボンフレームは人件費の安い台湾や中国で作ることがほぼ当たり前となっている中で、なぜヨネックスは国内生産にこだわったのか。
「ヨネックスは長岡で始まった企業ですので、長岡で作ることが我々のポリシーなんです。ラケットなども廉価版は海外生産ですが、ハイエンド商品は新潟工場で作っています」
要するにこのカーボネックスは、現在唯一の純国産量産カーボンフレームなのだ。それが如実に表れているのが、フレームの内壁である。カーボネックスのフレーム内部は、一本のシワもない非常に綺麗な状態だったのだ。
 
 
 
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