トピックス

ロンド・バン・ブラーンデレン 2015

大本命の優勝候補たちが欠場した北のクラシックはノルウェーのクリストフが初優勝した
 
Photo: Graham Watson

北欧で2人目のロンド制覇

ベルギー北部で開催された第99回ロンド・バン・ブラーンデレン(UCIワールドツアー)は、冷たい雨と強い風が名物のフランダース地方らしくない穏やかな天気の下で行なわれた。
 
このレースで3回優勝している大本命の2人、地元ベルギーのトム・ボーネン(エティックス・クイックステップ)とスイスのファビアン・カンチェッラーラ(トレック)がともにケガで欠場したため、今年は多くの若手選手に初優勝できるチャンスがあった。
 
それをモノにできたのは、ノルウェー出身のアレクサンダー・クリストフ(カチューシャ)だった。彼はオランダのニキ・テルプストラ(エティックス・クイックステップ)を一騎打ちのゴールスプリントで下し、フランダースの王者になった。
 
ノルウェー出身の選手がロンドで勝ったのはもちろんクリストフが初めてだったが、北欧全体でも1997年にデンマークのロルフ・セーレンセンが勝って以来、2人目の偉業だ。ノルウエーはトール・フースホフトが、長らく北のクラシック制覇を目指して闘っていたが、その夢はかなわず、去年引退の時を迎えた。
 
しかし27歳のクリストフは、いともたやすくその勝利を手中に収めてしまった。それは彼にとって、昨年のミラノ~サンレモ(UCIワールドツアー)につづいて2つ目のモニュメント制覇だった。

トラブル続出のレース

西フランダース州の州都ブルージュの、有名なマルクト広場には例年通り264kmの長旅へとスタートする選手たちを見送る観客がひしめいていた。環境保護団体との衝突が続いている農家の抗議行動があり、スタートは10分遅れになった。
 
序盤から7人の選手が逃げ出したが、その1人だったジェス・サージェント(トレック)が、ゴールまで108km地点でシマノのニュートラルサービスカーに接触されて落車するアクシデントが発生。サージェントは鎖骨骨折でレースを棄権した。
 
その事故の余韻がまだ続いていたところに、今度はシマノのニュートラルサービスカーが、FDJのチームカーに後方から衝突する事故が起こった。そしてチームカーの前にいたセバスティアン・シャバネル(FDJ)が玉突きで転倒してしまったのだ。レース後、シマノはこの2つの事故について謝罪を表明した。
 
アクシデントは続くもので、ゴールまで残り60kmではコース上にあった広告バルーンアーチの空気が抜け、あやうく選手たちの進路をふさいでしまうところだったが、幸い大事には至らなかった。
序盤からの逃げが吸収されたあと、残り46.3kmでドイツチャンピオンのアンドレ・グライペル(ロット・ソウダル)がアタックしたが、そのまま抜け出せはしなかった。
 
42kmをすぎた後、今度は2012年のリンブルフ世界選アンダー23で優勝したカザフスタンのアレクセイ・ルツェンコ(アスタナ)がアタック。ルーク・ロウ(チームスカイ)が引く集団は石畳セクションに入って分解し、ルツェンコが捕まったときに先頭は30人ほどに減っていた。
 
そこに地元出身の優勝候補、セプ・バンマルク(ロトNL・ユンボ)の姿はなかった。彼は残り37kmのターイエンベルフの石畳で遅れを取ってしまったのだ。しかし、レースはもう加速していた。そして彼にはチームメートも付いていなかった。バンマルクは1人で前を追ったが、彼のロンドはここでもう終わっていた。
 
ゴールまで残り28kmの舗装路で、最初にアタックしたのは独走が得意なテルプストラだった。その決定的な瞬間をクリストフは見逃さなかった。2人はすぐ後方に10数秒差を付けることに成功した。
 
最後のオウド・クワルモントの石畳では、2人のタイム差は22秒に開いていた。テルプストラはなんとかここでクリストフを蹴落とそうと加速したが、より気象条件の厳しい石畳のレースで1週間鍛えていたノルウエーのバイキングは、そこでけっして遅れを取ることはなかった。
 
追走グループでは、多くの選手や関係者が優勝候補の筆頭に名前を上げていた英国のゲラント・トーマス(チームスカイ)が先頭に立ち、チェコチャンピオンのズデネク・シュティバル(エティックス・クイックステップ)とともに抜け出したかに見えた。しかし、2人は舗装路で追いつかれてしまった。
残り13.5km、この日最後の石畳の坂だったパーテルベルフで、地元ベルギーのアタッカー、グレッグ・バンアーベルマート(BMC)が追走グループが飛び出した。しかし、トーマスやシュティバルには、その攻撃に応える脚はもう残っていなかった。
 
スロバキアチャンピオンのペーテル・サガン(ティンコフ・サクソ)だけがバンアーベルマートを追い、石畳セクションが終わったところで合流した。しかし、先行するテルプストラとクリストフとのタイム差はまだ20秒あった。
 
先頭では、ゴールが近づいてテルプストラが協力をやめたが、クリストフは構わずゴールを目指し続けた。最後は警戒をつづけるクリストフの後方から残り50メートルでテルプストラがスパートしたが、クリストフは落ち着いて仕上げをし、雄叫びを上げながらフィニッシュラインを通過した。
 
■北欧で2人目のロンド制覇者となったクリストフのコメント「子供のころ、いつもロンドで勝つことを夢見ていた。その夢が遂に実現したよ。テルプストラが仕事を辞めた時は、ちょっとナーバスになった。後ろのグループに捕まってしまうのを恐れたんだ。だからボクはハイスピードを維持し続けた。いいスピードを維持しても100%でなければ、いいスプリントができるのはわかっていたのさ」

第99回ロンド・バン・ブラーンデレン結果

1 アレクサンダー・クリストフ(カチューシャ/ノルウェー)6時間26分32秒
2 ニキ・テルプストラ(エティックス・クイックステップ/オランダ)
3 グレッグ・バンアーベルマート(BMC/ベルギー)+7秒
4 ペーテル・サガン(ティンコフ・サクソ/スロバキア)+16秒
5 ティーシュ・ブノート(ロット・ソウダル/ベルギー)+36秒
6 ラルス・ボーム(アスタナ/オランダ)+36秒
7 ジョン・デゲンコルプ(ジャイアント・アルペシン/ドイツ)+49秒
8 ユルフン・ルーランツ(ロット・ソウダル/ベルギー)+49秒
9 ズデネク・シュティバル(エティックス・クイックステップ/チェコ)+49秒
10 マルティン・エルミーゲル(IAM/スイス)+49秒
 

問い合わせ先