安井行生のロードバイク徹底評論 第6回 YONEX CARBONEX vol.11

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安井カーボネックス11

大手スポーツ用品メーカー、ヨネックスがロードフレームを作り始めた。このロードバイク界に異業種参入型ブランドがまた一つ誕生したのである。第一弾は650gの超軽量カーボンフレーム、カーボネックス。設計担当者へのインタビューを交えつつ、この純国産フレームの真実に迫る。

 

今後の課題

安井カーボネックス11

最後にルックスについても触れておこう。ルックス(ここではフレーム表面のグラフィックのことだが)については主に主観が影響する部分であり、「カッコいい」とは言えても「カッコ悪い」とはなかなか言えないものだ。しかし、ユーザーから「もうちょっと見た目がよければ……」という声が上がっていることは、ヨネックスの方々も把握されているようだ。
 
ヨネックスのモノづくりの真摯な姿勢には頭が下がる。しかし、その真面目さが裏目に出てしまうこともある。ハイエンドスポーツバイクは単なるスポーツグッズではなく嗜好品の一種だから、もっと感情に訴えかけてもいい。走りは文句なしに素晴らしいだけに、ルックスとフレームサイズが惜しい。今後の課題である。

 

この火を消すな

約40年に渡って蓄積されてきたカーボンの設計・製造技術。開発から製造まで自分たちでやるという真面目な開発姿勢。分析力と表現力に長けた経験豊かなテスターたち。彼らの声を工学的に翻訳し設計に反映する技術者。小回りの利く国内工場で設計図を正確にカタチに変え実性能に落とし込む職人。ヨネックスの強みは、これらモノづくりに必要な要素がすべて揃っていることである。これらが上手くかみ合って、カーボネックスは羽のように軽やかに走るのだろう。
 
失礼ながら、おそらくそんなに数は出ていないと推測する。街や峠を走っていても見かけることはほとんどない。開発期間や投入された技術やプロモーション費用や国内生産であることを考慮すると、現状では大赤字かもしれない。しかし、売れてほしいと思う。いや、売れてくれなきゃ困る。売れてくれなきゃ次作の開発も期待できないではないか。次のモデルに早く乗りたいー そう思わせるフレームに出会うことは稀なのだ。
 
これだけロードバイクが氾濫しているというのに、(オーダー系を除けば)純国産カーボンフレームが一本もないという、ちょっと寂しい日本の自転車シーン。カーボネックスは、そんな日本で久々に燃え上がるフレームづくりの炎である。豊富な技術と国内生産という頼もしい戦力を味方に技術者たちは今、新潟は長岡の地で静かに燃えている。今はまだ火種の段階かもしれないが、それを絶やさないでほしいと思う。これは、ライターとしてでも評者としてでもなく、日本に住むいち自転車乗りとしての願いである。
 
 
 
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