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安井行生のロードバイク徹底評論第5回 PINARELLO DOGMA F8 vol.1

ピナレロのフラッグシップが劇的な変化を遂げた。2015シーズンの主役たるドグマF8である。「20年に一度の革新的な素材」と呼ばれる東レ・T1100Gと、ジャガーと共同で行なったエアロロード化は、ピナレロの走りをどう変えたのか。新旧ドグマの比較を通して、進化の幅とその方向性を探る。東レ・T1100Gの正体に迫る技術解説も必読。vol.1
 
text:安井行生 photo:小見哲彦、吉田悠太

金属に固執していたとは思えない躍進

 
2007年にフラッグシップモデルをカーボン化して以来、ピナレロのハイエンドは試行錯誤を繰り返してきた。絶妙なしなやかさを残していた金属時代のプリンス~ドグマから一転、一気に剛性を上げたプリンスカーボン。完全左右非対称設計という新たな領域に踏み込んだドグマ60.1。バランスを高め万能ロードバイクとして高みに達したドグマ2。
 
カーボン化の波に乗り遅れたように見えたピナレロだが、各世代のフラッグシップで方向性を探りながらも、あっという間にライバルに追い付き、遅れを取り戻すどころかドグマをロード界の皇帝として君臨させるまでになる。

そして前作ドグマ65.1では、バランスを保ちながら反応性を磨き上げ、ロードフレームとして理想的な性能を得るに至った。ピナレロは、ドグマ65.1を「万能ロードバイクの理想像」として見事に結実させていたのである。それは、数年前まで金属フレームに固執していたブランドとは思えない躍進であった。
 

ピナレロ、またしても出遅れる

 
そんなドグマでも、手にしていないものがあった。空力性能である。
 
フレームの空力性能向上にどれほどの意味があるのか- という議論はここでは置いておこう。自転車の全走行抵抗におけるフレームの空気抵抗の占める割合はわずかだが、どのブランドのエンジニアに聞いても「作り手としてそこを無視するわけにはいかない」という。その気持ちはよく分かる。速くなる可能性が少しでもあるのなら、その無駄を潰すべく挑戦するのが技術者である。
 
かくしてエアロの波はロード界を襲い、いまやどこを向いてもエアロロードが我が物顔で跋扈(ばっこ)する。そんななか、ピナレロはまたしても出遅れる。2012年のドグマ2でフレーム各部のリブを低くし、フォーククラウンにフィンを付けて空力性能が向上したと主張したが、おそらくその向上幅は微々たるもの。エアロロードと呼べるレベルではまったくなかった。
 
しかし新作のドグマF8は、ジャガーの手を借りてついに完全エアロロード化。フレーム各所をカムテール形状にするなど、空力を強く意識したフォルムとなった。