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ピナレロの旗艦モデルが第8世代へ! ドグマF8登場!

ピナレロ旗艦モデルといえば「ドグマ」だ。数々のビッグレースで勝利をおさめ、ロードバイク界においてその名は確固たる地位を築いた。その第8世代がイタリアで発表されるとあって、本誌・岩崎が現地へと飛んだ。進化のポイントと、試乗レポートをお届けする。6月20日発売のサイクルスポーツ8月号では、より詳しい記事をお届けします。

 

text&photo●岩崎竜太

8代目ドグマ

ピナレロのフラッグシップモデルのドグマが大きなモデルチェンジを果たした。8代目となるこのモデルは同社社長ファウストを意味する『F』、と彼のラッキーナンバー『8』と『8代目ドグマ』であることから『ドグマF8』と名付けられた。発表の時期は、ジロ・デ・イタリアがピナレロ本社近くにゴールする17ステージ(5月28日)に、世界同時発表とされ、そのプレスローンチには、日本、ヨーロッパ、アメリカなどの限られたメディアだけが招待されるほど、厳しい情報統制がなされていた。

 

昨年のツール・ド・フランス覇者クリス・フルームがテストライド時に「このバイクはすごい!」と評し、チームスカイが今年のドーフィネから実戦投入しているF8。ピナレロ社肝いりのニューモデルはどこが変わったのか? 発表会で手に入れた情報をお届けする。

 

大きな変更点はまず、トップモデルはじめピナレロのバイクのアイコンとなっていたオンダフォークの形状が一新されたこと。このオンダF8は、従来のオンダ2に比べ、空気抵抗を54%軽減し、路面からの振動をフォーク全体で吸収するよう設計されている。「形状は違うけど、コーナリングなどのハンドリングフィールはドグマ65.1と同じく、コントロールしやすい」と、エンジニアは話す。

 

東レが新たに開発したT1100 1Kを使用

次に、素材だ。ドグマF8には、東レが新たに開発したトレカT1100G(ピナレロではT1100 1Kと呼ぶ)というカーボンが採用されている。その理由は剛性を高めるため。「剛性をアップすることで、エネルギー(パワー)のロスを削減することができる」とのことだ。新素材は、従来の素材より重量比強度が高いため、同じ強度であれば軽量に仕上げることができる。応力が集中するダウンチューブを中心にフレーム全体、そしてフォークに使用され、ドグマ65.1と比較して120g軽く仕上がっている(54サイズ)。

 

そして、流れるようなフレーム形状からもわかるように、エアロダイナミクスがさらに追求されている。英国の自動車メーカーのジャガーの協力のもと、空気抵抗をよりゼロに近づけるための研究がなされている。「ただのエアロバイクではない!」とエンジニアが断言する理由は、ヘッドチューブはもちろん、シートチューブ、さらにはリヤブレーキを通過した後の空気抵抗や、ボトルを通過するときのそれにまで目をこらし、チューブの形状を徹底的に検証ているから。風洞実験室において、マネキン、ライダーを使い研究を行なった結果、47%もの空気抵抗低減を実現している。

 

 

●空力性能向上のために形状が見直されたシートチューブ。シマノ電動コンポーネントのバッテリーはシートポストに収納される(カンパニョーロのEPSはシートチューブ内に収納)

 

 

 

 

 

 

 

●工場内にはチームスカイ用のフレームがペイントを待っている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●ペイントルームでは、ベテランの職人が塗装を施す

 

●本社内にある振動実験室。実際のペダリングに近い状況をつくり、フレームの耐久性が試験される

 

 

 

 

 

 

 

 

●前後方向に厚みを増したヘッドチューブ。エアロダイナミクスが追求されている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●シートポストの固定方法はバンドタイプからシートチューブ後方のネジで押さえる方法に変更。これによりシートチューブが短くなり、ポストの出しろが長くなることで、しなりやすくなっている

 

●ボトルを入れたときにムダな空気抵抗が発生しないよう、ダウンチューブには段差がつけられている

 

 

 

 

 

 

 

 

●中心部分が張り出した形状は、ライディング中ライダーに当たる風を低減するという役割も備えている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●形状が一新されたフォーク。後面はフラット形状になっており、空力性能が向上している

 

走りはいかなるものなのか?

左右アシンメトリーの設計もさらに突き詰められ、新たな進化を遂げたドグマ、果たしてその乗り心地はいかがなものか? ドグマF8のレースバイクとして優れていることは言うにおよばないが(その詳細はサイクルスポーツ8月号にて紹介)、レース以外には向いていないのか? 筆者のようなロングライド、ツーリングライドを中心にするファンライダーの視点で、旧ハイエンドモデルのドグマ65.1との比較インプレッションを行なった。

 

イタリアで約80km、国内で20kmの試乗を行なって感じたのは、65.1と比較して全体的にシャキッとした硬さがあり、運動性能が向上しているという点だ。結論から言ってしまえば、F8の方が好きだ。アクションに対する反応がすばやく、バイクを操る楽しさがある。

 

軽量になりながら、剛性、剛性感がアップした理由は素材によるものだけでなく、フォーク形状も大きく関係している。平地を巡航している際、オンダF8は以前のものに比べ強い存在感がある。路面の振動をダイレクトに手の平に伝えてくるのだ。振動吸収性という点ではオンダ2に分があるとも言えるが、F8は振動減衰性が優れており路面の状況が把握しやすいので、次の挙動の判断がしやすい。それは荒れた路面であっても同様。フォークだけでなくフレームも含めた全体で振動を処理している感覚がある。手に伝わってくる振動が不快なレベルでないこともポイントだ。

 

フォークの横方向の剛性についても明確に違いがある。コーナリングで体を傾けはじめるとき、65.1の場合はフォークのたわみによる時差というか、あそびがあるのだが、F8は体が傾くのと同時にバイクも曲がり始める感覚。上りコーナーのダンシング時も同様のクイック感があり、操る楽しさを感じさせてくれる。

 

感覚には違いはあるが、推進力は変わらない。ペダルを踏み込んだときの加速感はやはり気持ちがいい。平地ダンシング時に65.1はフレーム全体がグイッとねばりのあるしなりの反発力が加速につながっているのに対し、F8は入力を素早く反発力に変える感じだ。

 

ここまでで、F8が65.1に比べ硬いというイメージを持った人は少なくないだろうが、ロングライドでの振動による体への負担が大きくなったわけではないということも書いておきたい。実際に走った距離は100kmに満たないが、振動によるダメージは大きくない。尻が痛くなることはなかったし、その予兆もなかった。全体的な剛性は上がっているが、体へのダメージ軽減もしっかりと考えられているようだ。シートポストとシートチューブの接合部分を見ると、ポストの固定方式がクランプ式から、チューブ後方に設けられたネジでの固定に変更されており、ポストがよりしなりやすい構造になっている。

 

F8は「挙動はすばやく、ライダーにはやさしく」そんなバイク。これまで、ハイエンドバイクといえば脚力のある上級者向けのレースという印象だったが、その考えは正しくないようだ。性能を十分に引き出せているとは思わないが、F8も65.1もロングライドやツーリングだって十分にその高性能の恩恵に預かることができる。「ロングライドだから快適なバイクがいい」大筋はそれでいいと思うのだけど、もっと掘り下げるなら自分の好きな走り方を追求するべきなのだと思った。F8は私にとってロングライドを楽しくしてくれるバイクだ。

 

●spec

フレームセット価格/64万8000円(税抜)

付属品/専用フルカーボンシートポスト 実測重量/6.74kg(完成車、ペダルレス)

フレーム/カーボン フォーク/カーボン サイズ/420、440、465、470、500、515、530、540、550、560、575、595、620 カラー/950ネイキッドレッド、951ネイキッドシルバー、958チームスカイ、955レッド、952カーボンレッド、956ホワイトカーボンレッド、957BoB、953ブラックイエローフルオ、958チタンレッドフルオ

 

問い合わせ先

■ピナレロ・ジャパン
http://www.riogrande.co.jp/pinarello_opera/