安井行生のロードバイク徹底評論 第3回 RIDLEY FENIX vol.2

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安井フェニックス2

フレーム価格10万円台ながら、ロット・ベリソルのメンバーを乗せて過酷なパリ~ルーベを走るフェニックス。プロトンの中で最も安価なフレームとして有名なリドレーのミドルグレードモデルである。この不死鳥は40~50万円クラスを蹴散らすハイエンドキラーなのか、それとも値段相応の凡車なのか。歴代のリドレーミドルグレードを試乗してきた安井がシゴき倒す。

 

伝統的な設計手法

安井フェニックス2

リドレーは自社のロードラインナップを、空力性能を重視した「AERO」、軽量クラスである「STIFNESS TO WEIGHT」、オールラウンド系の「ENDURANCE(STRENGTH)」という3つのカテゴリーに分けている。「AERO」に属するノアシリーズのフレームには翼断面を多用する。ヘリウムなどの「STIFNESS TO WEIGHT」カテゴリーは丸断面を多用して軽さと自然なしなりで勝負する。最もリドレーらしいのが、「ENDURANCE(STRENGTH)」に採用しているエッジチュービングである。これは、角ばった多角形断面チューブが複雑に入り組んだフレーム形状設計のことで、ルックス面でのインパクトも大きく、リドレーのアイコンとなっている。
 
エッジチュービングの歴史は長い。開発が始まったのは2000年のことで、高い剛性、安定性、優れたハンドリングを追求した結果、リドレー開発陣がたどり着いた答えがこの形状だったという。エッジチュービングが形になったのは2001年のダモクレス。その後、テーパードヘッド化など変化しながら、現在のフェニックスへと受け継がれている。エッジチュービングとは、ピナレロのオンダフォークやBMCのiSCのように、十年以上も続くリドレーの伝統的設計手法なのである。

 

エッジチュービング、ここに極まる

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フェニックスのコンセプトは、広報資料によると「レクリエーショナルライドから競技まで対応するオールラウンドフレーム」らしい。届いた試乗車を眺めてみる。カタログ等では「ダモクレスの前三角とエクスカリバーのバックを組み合わせた」とされているフェニックスだが、もちろん金型を共有しているわけではない。知り合いが所有する同サイズのダモクレスとじっくり比較したが、基本形状は似ているもののヘッドチューブやダウンチューブ下側は大きく異なり、フェニックスの方が全体的に太い。ダモクレス(30t)より弾性率の低いカーボン(24t)を使っているため、外径を増して剛性を確保しようとしたのだろう。
 
チューブ形状はまさに圧巻。トップチューブもダウンチューブも異形六角形断面。シートチューブ下側は四角形断面、チェーンステーは縦に長い長方形断面。丁寧なことにフォークのブレードまで五角形断面で、ブレーキ部分はかなりのボリュームだ。ヘッド下側は1.5インチ径の上下異径タイプ。PF30規格のBB部もすさまじいボリュームである。シートステーも複雑な形状(上側:三角断面、下側:円断面)をしているが、中心部分で横に偏平されており、形状によって快適性を担保しようとしている意図が見て取れる。チューブのエッジはダモクレスほどシャープではないが、円断面がほとんどない。エッジチュービング、ここに極まれり、という感じ。フレーム重量はSサイズで1190g、フォーク重量は390gと今となっては重量級だが、これが実際の走りにどう影響するか。

●spec
モデル名:リドレー・フェニックス
フレーム:24tハイモジュラスカーボン
フォーク:4ZA・フェニックスカーボンフォーク Fenix Carbon fork
ホイール:FFWD・F5R
コンポーネント:シマノ・デュラエース
ステム:デダ・ゼロ100SC(ライター私物)
ハンドル:ディズナ・J-フィットモア(ライター私物)
シートピラー:ジップ・サービスクールスシートポスト
サドル:セライタリア・SLR
フレームセット価格/16万8000円(税抜)、シマノ・105完成車価格/25万円(税抜)