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史上初! ツール優勝者が同じ年に金メダル獲得 ロンドン五輪男子個人TT

英国初のツール・ド・フランス優勝者ウィギンスは、凱旋レースとなったオリンピックで金メダルを獲得した
Photo: Graham Watson

国民の期待を背負って走ったツール優勝者


マイヨ・ジョーヌを着たブラッドリー・ウィギンスが、開会式で始まりの鐘を鳴らして幕を明けたロンドン・オリンピックは、開催国の英国が大会5日目までに金メダルを1つも取れずにその日を迎えた。2度の個人タイムトライアルで圧倒的な力を見せつけ、ツール・ド・フランスを制覇したウィギンスには、8月1日に行なわれたオリンピックの男子個人タイムトライアルでも必然的にメダルの期待がかかっていた。午前中に行なわれたボート競技で、英国は待望の金メダル第1号を獲得。それがウィギンスのプレッシャーをいくらか取りのぞいたのは確かだろう。あるいはすでに過去のオリンピックのトラック競技で、金を含めた6枚のメダルを獲得しているウィギンスには、プレッシャーなどなかったのかもしれない。そしてこのレースでは、ウィギンスが闘う相手は時計だけだった。 昨年コペンハーゲン世界選手権の個人タイムトライアルで優勝した、現世界チャンピオンのドイツのトニー・マルティンは、ツール・ド・フランスの第1ステージで落車し、左手の舟状骨を骨折してしまった。彼は手首にギプスを付けてレースを続行し、第9ステージまで走ったあと、五輪の準備をするためにツールをリタイアしていたが、けっして万全な状態ではなかった。レース界のメトロノームと呼ばれるスイスのファビアン・カンチェッラーラは、4日前に行われたロードレースで落車し、右肩を負傷。この日は参加するかどうかも危ぶまれていたほどだった。ディフェンディング・チャンピオンとして、ゼッケン1を付けてスタートしたスパルタクスは、いつものような力強い走りを見せることなく、7位という平凡な成績で終わってしまった。その一方で、マルティンは快走を見せた。彼は7.3km地点の第1計測地点で、ウィギンスよりも5秒上回るトップタイムを叩きだしたのだ。しかし18.4km地点ではあっさり逆転され、11秒差を付けられてしまった。地元の大歓声に後押しされたウィギンスは、その後もトップタイムを更新し、マルティンに42秒差を付けてゴールに飛び込んだ。 地元の期待に応えて金メダルを獲得したウィギンスは「我々はやり遂げた。オリンピックのもうひとつの大会の、別の種目でタイトルを獲得するのは、これ以上いいことなんてないほどのことだ」と、喜びを語った。彼はこれでメダル獲得数が7になり、英国でもっともオリンピックのメダルを獲得したアスリートになったが、自転車競技史上初めて、同じ年にツール・ド・フランスとオリンピックで優勝した選手にもなった。もちろん、往年のチャンピオンたちはこの記録に異議を唱えるだろう。オリンピックにプロ選手が参加できるようになったのは、1996年のアトランタ大会からなのだから。

ロンドン・オリンピック 男子個人タイムトライアル結果

1 ブラッドリー・ウィギンス(英国)50分39秒 2 トニー・マルティン(ドイツ)51分21秒 3 クリストファー・フルーム(英国)51分47秒 4 タイラー・フィニー(米国)52分38秒 5 マルコ・ピノッティ(イタリア)52分49秒 6 マイケル・ロジャース(オーストラリア)52分51秒 7 ファビアン・カンチェッラーラ(スイス)52分53秒 8 ベルト・グラブシュ(ドイツ)53分18秒 9 ホナタン・カストロビエホ(スペイン)53分29秒 10 ヤネシュ・ブライコビッチ(スロベニア)54分09秒 23 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)55分37秒 24 別府史之(日本)55分40秒

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